幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~

桜もふ

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23 ベルナール・コールラン辺境伯

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    ギルドの前で馬車が止まり降りてきたのは。

「コールラン様、お着きになりました」

    従者が馬車の扉を丁寧に開いた。

「あぁ、ありがとう。

    ここで待っててくれ」

「畏まりました」

    コールラン辺境伯は従者にうなずいたあと、ギルマスを見た。

「コールラン閣下、本日はようこそおいでくださいました」

    練習したカーテシーをみんなの前で披露した。

    スカートを少し摘み上げ、片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足のひざを軽く曲げコールラン辺境伯に挨拶をした。

「ごきげんよう。

    わたくしはルルナと申します。

    テオルの養女になる前は『ルルナ・エメルロ』でした。

    ご挨拶が遅くなり申し訳ありません」

    コールラン辺境伯は目を大きく開き、何度もうなずき言葉を発した。

「敬礼なんてしなくていいんだよ。

    ルルナ……大きくなったな。

    さあ、姿勢をゆっくり崩しなさい」

「はい、ご配慮ありがとうございます」

    ゆっくりと足を戻し、スカートを下ろしたあと、ニッコリと微笑んだ。

    コールラン辺境伯は片膝を着き両手を広げ待っている。

「ルルナ、おいで!」

    お父様に似ているコールラン閣下、私はお父様を思い出してしまい、涙腺が崩壊したかのように号泣し、走ってコールラン閣下の胸の中に飛び込んだ。

「お父様と同じ匂いがする……うゔゔぅぅぅ…わあ゙あ゙あ゙ぁぉぁ、どうして死んでしまったの?

    なんでわたくし1人だけ置いて逝ったのよぉ!

    ゔあ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁっっ!!

    お父様はわたくしとお母様、兄様とずっと一緒だと……あの時の……。

    あ、申し訳ありません!

    お父様に似ていて……間違えてまいました」

「いいんだ、いいんだよ。

    ルルナはまだ5歳の幼子だ、間違えてもいいんだよ。

    後ろを見てごらん。もう1人のパパもルルナを心配しているよ?」

    今にも泣き出しそうなパパの胸の中に今すぐ飛び込みたい。そんな欲求が胸の中をグルグルと回っていた。

    そんな私を見かねたコールラン辺境伯が背中をポンと優しく押してくれた。

    私は大きくうなずき、両手を広げてパパの胸の中に飛び込んだ。

(私はもう1人じゃない、ここに大好きなパパがいるから)

「パパ、大好き!」

「ルルナァァァ!!」

    あらら、泣いちゃった。ヨシヨシと頬を撫でてあげた。

「はははっ、似たもの同士だな。

    ルルナとテオルは感情が似ている。

    我らエメルロ侯爵一族の話がある、ルルナとテオルに伝えなければならない」

「お父様のお部屋でよろしいでしょうか?」

    コールラン閣下の笑った顔、懐かしいな……。って、思ってる場合じゃない!

「ルルナ、お父様ではなく今はパパだよ?

    それとだなぁ、私のことを名前で呼んでもらえないだろうか?」

「はい、失礼いたしました。コールラン閣下」

「うぅぅん、それも堅いぞ?

    そうだな……ベルナールだからベル叔父さんというのはどうだ?

    呼んでくれないかい?」

    私は大きくうなずき、満面の笑顔で呼んだ。

「ベル叔父ちゃま……(かんでしまった!)」

「おおぉぉぉぉ、いい!!

    その呼び方すごくいい!!」

「ベル叔父様、先程は言葉をかんでしまいましたの。

    ですので、ベルおじ様とお呼びしても?」

「そうかぁ、そうなんだ…仕方ない、ベルおじ様で許そう!」

「ありがとうございます!」

「閣下、こちらです」

    ベルおじ様とパパ、私とでギルマスの部屋へ移動し、ベルおじ様が魔法で「サイレント」秘密の会話を周りに聞かれないようにした。

「これで周りに会話が漏れることはない。

    ここでは砕けた会話でいい。

    まずは、テオル……奥さんのリビアは生きているよ。

    スリチア国で元気にしている、だが木片が身体中に刺さり発見が遅れ……もう子は…すまない」

    ワナワナと両手を震わせ顔を覆ったパパは泣いてるのかと思ったのだが、大丈夫なのかな?

「謝らないで下さい、俺は……ふふっ、クックック……アイツが死ぬわけねぇよなぁ!

    俺はすっげぇ嬉しいぜぇぇぇっっ!!

    よっっしゃあぁぁぁぁぁ!!」

    マジで大丈夫なの?

    どこかで拾い食いでもした?

『おい、テオルは大丈夫なのか?』

    マロンと寝ていたスオウが私の隣に座っていた。

    ベルおじ様は驚いていたが、スっと姿勢を正して神獣であるスオウに最上級の礼を4~5秒以上頭を深く下げた。

『ベル、頭を上げてくれ。

    ワレには砕けた会話でよい』

「神獣様、お目にかかれて光栄です」

『テオルの話はもう一つあるんだろ?』

「はい、もう一つは……俺たちコールラン領をローバル国に任せ、ルルナと神獣様とで隣国へ渡る。

    スリチア国へ移住する。

    我ら一族……エメルロの血筋の者はみなスリチア国で生まれ育ってきた。私の兄ラックポールはローバル王にある物を盗られ、それを取り返すまでずっと奮闘していたんだろう。あの事故も怪しいものだ。

    それでだ、テオルにはルルナの父親として来てもらいたいが強要はしない、これはテオル自身で決めてもらいたいからだ。

    こちらの領民でスリチア国へ移住を希望する者がいれば歓迎し職だけではなく衣・食・住を約束しよう」

    眉をひそめ今まで見たことない真剣な面持ちでコールラン閣下を見ていた。

「俺は……リビアに会いたい。だが、1日だけ返事を待って欲しい。

    信頼している者と話し合いがしたい」

「あぁ、分かった。

    3軒先の宿屋にいる」

    私とパパ、スオウとマロンは、コールラン閣下をギルドの外まで見送った。
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