31 / 63
24 地下牢の三人組
しおりを挟むギルドに顔を覗かせると、食堂から食欲をそそる匂いが漂り『きゅるるっ』と小さくお腹が鳴った。
両手でお腹を押さえたが、レンには小さく鳴ったお腹の音が聞こえたようで、手ヒラヒラさせて私の名を呼んだ。
「ルルナ、こっちに来て座ってろ」
そう言って、朝食を持って来てくれた。
「昨夜は、ルルナが寝たあとにみんなを集めてギルマスが移住の話をしてたよ。
みんなギルマスとコールラン閣下について行くことが決まったんだ。
隣国でもよろしくな!」
頭を撫でながら話してくれたレン。
みんなと一緒! 離れなくていいんだ。ここに残ると言われたら寂しいなって思ってたけど、良かった。
「正直言って、みんなと離れるのは寂しかったの。それに一緒に移住してくれると聞いて安心した。
みんなのこと大好きだから、一緒なのが凄く嬉しい!!」
「あぁ。ルルナ、ありがとう」
ここではみんなと移住の話などでワチャワチャしながら食堂で過ごした。お昼からは地下牢にいる3人組に文句を言いに行くことになっている。
隣国へ移住するなら早いほうがいいだろうと判断されたからだ。
メンバーは、パパ・ライラ・レン・ドルバル・レイブン・ドリアンの6人の護衛付きだ。
こんな隅っこの方に階段がある扉があったとは、今まで知らなかった。
スオウの上にマロンが乗り、私の隣を歩いている。私達はその階段を降りて地下牢へ行く。
あれ? ライラとドルバルの距離が近い? ってか、ライラがドルバルの腕を抱き寄せてる!
これって……恋人同士ってやつ!?
それにしても……。
「真っ暗だぁ……こ、怖い…かも?」
「大丈夫だ。ほら、これで怖くないだろ?」
大きくて暖かいレンの手が、私の小さな手を握ってくれた。
「うん、ありがとう!」
「なっ!!」
手をワナワナさせてるパパ、ガックリと肩を落としてドリアンに慰められていた。それも笑いながら。
「まあまあ、良いじゃない。
レンはああ見えて紳士なんだから心配ないわよ……ぶふふふ。
あら失礼……ぷぷ……」
奥の地下牢は呪われているってローランが言ってたけど、普通の牢屋にしか見えない。
鉄格子の前で3人組を見ると。
うわっ、リタがものすごい形相で睨んでる! けど、私は文句を言ってやるんだ。そのために頼りになる護衛がいるのだから。
「レジス、クロード、リタ!
あなた方に言いたいことがあります!
子供を……私を魔物の餌にするなんて人間のクズがすることよ!!
私はあなた方のようなクズな大人には絶対にならないんだから!!
それだけ言いたかっ……」
言葉を遮ってきたのはリタだった。
「うるさいっっ!!
クソガキがぁ!」
魔石を隠し持っていたのか、リタに発動されて風魔法で頬と腕を切られたあと吹き飛んだ私は、マンティコアのスオウに助けられ、頬と腕から出血していた。
「いたた……風魔法で切れちゃった。
血が、血がぁぁ……痛い……う、ぅわぁぁん!」
血を見て驚いたのと痛みで泣いてしまったが、今は出血を止めるのが先だ。泣くのをやめ、流れる血をギュッと手で押さえ、治癒で治した。
「ヒール」
「クリーン」
傷は綺麗に治し、血もキレイになくなった。
それでも、パパや護衛のみんな、ライラが激怒。もっと激高しているのがスオウだ。
「てめぇ、俺の娘に何しやがる!!」
「可愛いルルナに……オマエ、殺してもいいか?」
「おい! ルルナの可愛い顔と小さな腕に……てめぇをぶっ殺してやる!!」
「……殺す、殺していいよこんなクズ。
早く殺そう!!」
『ワレの主にした罪は重いぞ!
万死に値する!
尾で毒を注入し、最後に噛み殺してやる!!』
痛いけど、いやいや待って。パパ、レン、ドルバル、レイブン、スオウ落ち着いて。
「みんな、殺すのは駄目! 絶対に!!」
「殺さないから大丈夫よ。今度からは私が治してあげるからね」
「ルルナは治癒も出来るのね。
でも、傷が治って良かったわ。
他に痛いところはない?」
「うん、大丈夫。
ドリアン、ライラありがとう!」
そう言って、ドリアンとライラに抱きついた。
「パパ、もう言いたいこと言ったから牢屋を出ようよ?
ここ暗いし臭い!!」
ヒョイっと抱っこされ、私達は地下牢から出た。
それからコールラン閣下の宿屋に行き。移住することを伝え、私とパパ以外のみんなも一緒に行くことも伝えた。
「そうか、決断してもらい感謝する。
3ヶ月後に移住する、その頃には新しいギルドができ、みんなが住む場所も出来ているから、職場はそれぞれが得意とする場所を手配可能だ」
「ありがとうございます。
こんなに良い待遇嬉しいです。
みんなも喜びます」
「ベルおじ様、ありがとうございます。
ベルおじ様大好き!」
コールラン閣下はルルナに走り寄り、ギュッと抱きしめたのだった。
「きゃはははは!」
ルルナの可愛い鈴のような笑い声が宿中に響き渡っていた。
68
お気に入りに追加
787
あなたにおすすめの小説

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。

過労薬師です。冷酷無慈悲と噂の騎士様に心配されるようになりました。
黒猫とと
恋愛
王都西区で薬師として働くソフィアは毎日大忙し。かかりつけ薬師として常備薬の準備や急患の対応をたった1人でこなしている。
明るく振舞っているが、完全なるブラック企業と化している。
そんな過労薬師の元には冷徹無慈悲と噂の騎士様が差し入れを持って訪ねてくる。
………何でこんな事になったっけ?

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】SS級の冒険者の私は身分を隠してのんびり過ごします
稲垣桜
恋愛
エリザベス・ファロンは黎明の羅針盤(アウローラコンパス)と呼ばれる伝説のパーティの一員だった。
メンバーはすべてS級以上の実力者で、もちろんエリザベスもSS級。災害級の事案に対応できる数少ないパーティだったが、結成してわずか2年足らずでその活動は休眠となり「解散したのでは?」と人は色々な噂をしたが、今では国内散り散りでそれぞれ自由に行動しているらしい。
エリザベスは名前をリサ・ファローと名乗り、姿も変え一般冒険者として田舎の町ガレーヌで暮らしている。
その町のギルマスのグレンはリサの正体を知る数少ない人物で、その彼からラリー・ブレイクと名乗る人物からの依頼を受けるように告げられる。
それは彼女の人生を大きく変えるものだとは知らずに。
※ゆる~い設定です。
※ご都合主義なところもあります。
※えっ?というところは軽くスルーしていただけると嬉しいです。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
美形王子様が私を離してくれません!?虐げられた伯爵令嬢が前世の知識を使ってみんなを幸せにしようとしたら、溺愛の沼に嵌りました
葵 遥菜
恋愛
道端で急に前世を思い出した私はアイリーン・グレン。
前世は両親を亡くして児童養護施設で育った。だから、今世はたとえ伯爵家の本邸から距離のある「離れ」に住んでいても、両親が揃っていて、綺麗なお姉様もいてとっても幸せ!
だけど……そのぬりかべ、もとい厚化粧はなんですか? せっかくの美貌が台無しです。前世美容部員の名にかけて、そのぬりかべ、破壊させていただきます!
「女の子たちが幸せに笑ってくれるのが私の一番の幸せなの!」
ーーすると、家族が円満になっちゃった!? 美形王子様が迫ってきた!?
私はただ、この世界のすべての女性を幸せにしたかっただけなのにーー!
※約六万字で完結するので、長編というより中編です。
※他サイトにも投稿しています。

【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~
白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。
国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。
幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。
いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。
これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる