幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~

桜もふ

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18 三人組の誘拐犯

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    ギルドの鍛錬所の椅子に座り、ある3人組の鍛錬を見てるんだけど。つまんない!

    あの鉤爪は強そうに見えて扱う人があれじゃあ、強く見えない。両手の鉤爪なら、ナックルのように攻めると良いのになぁ。あとは肺動脈や動脈を狙うのが良いと思うんだけど、でも魔物やモンスターに動脈とかあればだけど。

    あの人は槍に斧が付いてるポールアックスは……力と素早さ、持久力があれば扱えそう。魔物なら急所を突いたり斧で切れば倒せそうだよね。

    もう1人は……いないじゃん、サボり魔?  あの魔法使いさんなら「私は汗臭くなるのは嫌だから」って、言いそう。

    一人で妄想していると、隣にその魔法使いのお姉さんが座って来たんですけどぉ。

    この人の手……綺麗、なんでこんなにキレイなんだろ?  サボリ魔だからかな。って考えてる場合じゃない、サボリ魔さんはコップをこちらに渡し「はい、要らなければ捨ててちょうだい」と、ぶっきらぼうに話しかけられ、そのサボリ魔さんはもう片方の果実水をコクコクと飲んでいた。

    目の前で飲んでるし危険はないだろうと油断してた私が悪いんだけど、気づいたときには手遅れだった。

(これヤバイ、油断した…睡眠薬で眠気が……意識が……パパ、ごめんなさい……)

「……パ…パ……」

    眠ってしまった私を大きな布で包み、採取用の大きな籠に入れ。ギルドを出た。



    眠りから覚めたると森の中に例の三人組がいた。

    この人達、私のことをさらってきたの?

    信じらんない!

    こんな場所まで私を無理矢理連れて来るなんて誘拐じゃん!!

  数日前までは、この3人組から声をかけられたとしても、パパと他の冒険者さんたちが横から颯爽さっそうと現れ、勇者のように守ってくれてたから被害はなかった。が、今の状況は最悪を通り越して子供を誘拐した大罪人だ、こんな事がギルドのみんなに知られたら、この3人は終わりだ。 

    そういえば、この人達の名前知らないんだよねぇ。こっちから聞かなきゃ答えないつもりなのかな。精神年齢が低い子供みたい。

「(まったく!)えっと……槍と斧?  の……」

    私の為ではないだろうが、ロットを持っている胸無しさんが、こちらをひと睨みしたあと自己紹介をしてくれた。

「ポールアックス(槍に斧が付いた武器)を装備しているのがレジス、この無表情の鉄の鉤爪かぎづめがクロード、そして最後に美女の私が魔法使いのよ!

    私の事は【】と呼びなさい!

    分かったわね?」

    私の顔は引きつり、何も言えないまま苦笑いをし(コクコク)と大きく縦に頭を振り、うなずいた。



    あれから何時間歩いたんだろう。



    黒に近い紫色した、洞窟のようにゴツゴツした岩で出来たダンジョンの大きな入口を間近で見たのは初めてだったこともあり、少し口が開いた状態で見上げていた。

(キッモ!!)

「ここがダンジョンだ」

(コレがダンジョンなの?  なんだか禍々しくて少し怖いかも……)

「クスクスクス、怖気づいたのかしら?

    あなたがどんなスキルを発動させるのか楽しみねぇ」

    リタはニンマリとした顔で私を見下ろしていた。

    この感じ、知ってる……同じだ。

    そう、ブリアンと同じ笑み。

(この誘拐犯めっ!  何を企んでるのよ!)

    あの笑みを見た後だから不信感しかない。

    絶対に信用なんてしない!
   
「おいっ!

    ここにはギルマスも、あの鬱陶しい連中もいねぇんだよ!

    おら、行くぞ!!」

「でも、でも……。

    やっぱり怖いからヤダ!!」

    体の大きな三人に睨まれ、腕を掴まれていたら抵抗出来ず、引きずられるように連れていかれる。

    体格の差を考えて腕を掴んでよ、掴まれた腕が痛い。

(パパ怖いよ。助けて!)

「パパ、助けて!!」

「クソガキ、静かにしろっ!

    お前ら今回は、初の8層に行くぞ」

    レジスに怒鳴られ、私の身体はビクつき硬直ぎみになり、目にいっぱいの涙が溜まりポロポロと溢れ流れた。

「おいっ、レジス! 正気か?

    あの8層には……」

「だからこのチビを攫って来たんだろうがよ。

    聞いたこともねぇ珍しいスキルだしよ。

    おい、クソガキッ!

    泣くんじゃねぇ、鬱陶しいな!

    お前のスキルはどんな攻撃するんだ?」

    歯を食いしばって、必死に泣きやむと、3人に詰め寄られた私は、ダンジョンの階層が8層に着き、自分のスキルを話した。だが、特殊想像生成のことだけは秘密にした。

「私のスキルは【草集め】と【想像】で、攻撃はしません。

    出来るのは食べれるハーブや薬草類を見極めたり出来る【草集め】と、きのこや果物を思い浮かべると教えてくれるのが【想像】なんです。

    だから戦いには活躍しない……スキル……です」

(ウッソだよぉぉぉだっ!  防御も攻撃も出来る私は最強なんだから!!)

    と、心の中で悪態をついていたが、ここは弱々しい幼女でいないと。目線をアイツらに向けると、私のスキルを聞いた3人は目をまん丸くして激怒した。

「てめぇ……クソガキ!

    俺達を騙しやがったな!」

「ガキのくせして、こんな階層まで連れて来やがって!」

    私は、攻撃が出来るなんて一言も言ってないじゃない。

    まぁ、私は強いから大丈夫だけど。この3人には絶対に言いたくない。

    それにしてもさぁ、私のことを攫ったくせに、この人たちは自分達に都合が良い勝手な解釈をして、都合が悪くなると怒り出す。

    最低じゃん!!

    ここで強い魔物やモンスターが現れても、私は思い浮かべるだけで何でも出来る。それに、防壁を私の周りに貼るから安全だし。と考えていると……。

    ヒュンッ……ガンッ!!  と何かに当てられる音がし、クロードが吹っ飛び、大木にダアァァーーンッ!!  と、大きな音を立てて倒れた。

「ガハッ!」


    クロードの体が大きな大木に激突し、気絶をし、口からはダラダラと吐血している。

    その隣を見ると……何アレ?

    み、みの、たう……。

「クロード……くそっ。

    リタ、ガキをミノタウロスの餌にして俺らは行くぞ!

    早く唱えろ!!」

「えぇ、分かったわ!

    お嬢さん【サヨウナラ】

『我らをサイチの街に戻せ!』」

    その言葉を最後に、3人は目の前から消えた。

    あれが魔法なんだ、長い詠唱しないと魔法が出ないのは不便だよね。

    あの3人……やっぱり、信用出来ない人達だったんだ。

    私を餌にして逃げるって、パパが教えてくれたお話と一緒じゃん!


    そんなことは、どうでも良いのよ。

    えっと、今は結界ドームを想像して……と、「出来たぁ!」結界が完成。

    これで相手の攻撃は貫通しないでしょう。

    けど、魔物やミノタウロスを間近で見るのは初めてだから、顔と声がマジで怖すぎなんですけど!

    まぁ、地球にはこんなキッモイのなんていないし。いたら大事件だよ。

(うっわ!  コイツ私を見てる)

    ってか、私を見てヨダレ垂らしてるし汚ったな!

    マジでキッショ!!

(そんなことはどうでもいいのよ!  ここからどうやって帰れば良いのよぉ!!)

    思い浮かべれば何とかなるだろうけど、私のことを知らない冒険者のみんなに怪しまれたくないしな。

    ここで待ってたら誰かが助けに来てくれるだろう、たぶん。

    5歳児の私を餌にしたアイツら……フツフツと怒りが込み上げてくるのを堪えた。

    あの3人組め、帰ったら覚えとけよ。

    許さないんだから!!
   
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