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第1話 初めての罵倒
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貴族御用達の有名なカフェで、友人とお茶(アフタヌーンティー)を楽しんでいた矢先に、こちらへ近付き扇で私を指し金切り声を上げて騒ぎ出した。
「そこの黒髪黒目の不吉な貴女、宰相様…マルク・クロード公爵様に近付くのをお止めなさい!
貴族でもなければ平民でもない下民以下の貴女に相応しくなくてよ!」
そうまくし立てられ、周りにいる貴族子息や令嬢がこちらを見てヒソヒソしているのが聞こえてくる。
友人は一瞬眉をひそめたが、相手に聞こえないよう声を潜め相手の情報を簡単に教えてくれた。
「クスパー伯爵令嬢だわ。この方はクロード公爵様に好意があり何度も縁談を持ちかけては断られていますの。それなのに、凝りもせずまたクロード公爵様を追いかけているなんて信じられませんわ」
友人が話してくれたあと、周りでお茶をしていたご令嬢方がクスパー伯爵令嬢に聞こえるようにして話し出した。
「婚約破棄されたと噂がありましたが、真実のようですわね」
「わたくしは聖女様とクロード公爵様が幸せになることを願っていますのに……クスパー様はハーバル子爵の次男であるシモベール様と縁談話が決まった日から、クロード公爵様を追いかけてるとお父様が仰っていましたわ」
「まあ! あの方って、女性関係が噂されているシモベール・ハーバル子爵様!?
その方と結婚するなら、わたくしは修道院へ参りますわ」
そんな話が私と友人の耳に入って来たが、クスパー伯爵令嬢にも聞こえていたようで、再び金切り声を出し、私の見た目を罵ってきた。
「あぁぁぁっっ! 嫌だわぁ!!
真っ黒な髪に真っ黒な目……闇の中にいるみたいで気持ち悪いわ!
貴女のような下民以下の害虫は田舎の殿方がお似合いなのよ?
ご自分の容姿をご覧なさいよ! 華やかさもない地味な女、それが貴女なのよ!!
害虫女は下民以下に相応しい殿方にとつぎなさいっ!!」
(うっわぁぁ、マジでないわぁ。目で殺されそうだわ)
友人は扇で口元を隠し、私に金切り声を張り上げている令嬢の素性を耳打ちし、この方が私の婚約者に付きまとっているストーカーなのね。
「この方はイライザ・クスパー伯爵令嬢、クロード公爵に付きまとってると貴族界で噂の方ですわ」
「この方が……」
(このような公の場で糾弾とは、女性として恥ずかしくないのかしら?)
こちらを見ながらヒソヒソするご令嬢方や婚約者と来ている子息方、私はまるで見世物だわ。
……それにしても困ったわね、こういう貴族にはどう対処してよいのか分からない。そんな私にフォローしてくれたのは向かいに座ってる友人、フレイア・シンバニム侯爵令嬢だった。
「イライザ様、ごきげんよう。
わたくしとナナエ様は日頃の疲れを癒すため、こちらでお茶と談笑を楽しんでいましたのよ。
イライザ様に一つ忠告ですわ。
貴族ならお分かりかと存じますが……わたくしより下の階級の貴族が上の階級の方に話しかけるのはいかがなものかと思いますわ」
「……そ、それは…。
っ…も、申し訳ありませんでした」
そう告げたあと、眉間にしわを寄せ私をひと睨みをし、2人の取り巻きの令嬢を引き連れてカフェを出て行った。
自分が婚約者に選ばれないから私に嫉妬の炎を燃やして爆発させるなんてどうなのかしら。
異世界って怖いわね。ってか、貴族には階級があるのは分かっていたけど、学園内では階級は関係ないらしいけど、こういう公の場や卒業後などでは特に気をつけなければいけない。貴族は自分の言葉一つで運命が変わってしまうから。
「フレイア様、フォローしていたたきありがとうございます。
本来なら私……わたくしがお伝えしなくてはならないのに、不勉強で誠に申し訳ございませんでした」
扇の奥で小さく「クスッ」と微笑んだのが分かった。
「いいんですのよ。
ナナエ様はこの世でただ一人の聖女、それもこの世界を救ってくださった尊い御方なのです。
クロード公爵様とナナエ様が婚約した時は、自分のことのように嬉しかったですわ」
「フレイア様、ありがとうございます。
これからも良き友人として宜しくお願いいたします」
「こちらこそですわ」
2人でカフェのデザートとお茶をまったりと談笑して過ごした。
「そこの黒髪黒目の不吉な貴女、宰相様…マルク・クロード公爵様に近付くのをお止めなさい!
貴族でもなければ平民でもない下民以下の貴女に相応しくなくてよ!」
そうまくし立てられ、周りにいる貴族子息や令嬢がこちらを見てヒソヒソしているのが聞こえてくる。
友人は一瞬眉をひそめたが、相手に聞こえないよう声を潜め相手の情報を簡単に教えてくれた。
「クスパー伯爵令嬢だわ。この方はクロード公爵様に好意があり何度も縁談を持ちかけては断られていますの。それなのに、凝りもせずまたクロード公爵様を追いかけているなんて信じられませんわ」
友人が話してくれたあと、周りでお茶をしていたご令嬢方がクスパー伯爵令嬢に聞こえるようにして話し出した。
「婚約破棄されたと噂がありましたが、真実のようですわね」
「わたくしは聖女様とクロード公爵様が幸せになることを願っていますのに……クスパー様はハーバル子爵の次男であるシモベール様と縁談話が決まった日から、クロード公爵様を追いかけてるとお父様が仰っていましたわ」
「まあ! あの方って、女性関係が噂されているシモベール・ハーバル子爵様!?
その方と結婚するなら、わたくしは修道院へ参りますわ」
そんな話が私と友人の耳に入って来たが、クスパー伯爵令嬢にも聞こえていたようで、再び金切り声を出し、私の見た目を罵ってきた。
「あぁぁぁっっ! 嫌だわぁ!!
真っ黒な髪に真っ黒な目……闇の中にいるみたいで気持ち悪いわ!
貴女のような下民以下の害虫は田舎の殿方がお似合いなのよ?
ご自分の容姿をご覧なさいよ! 華やかさもない地味な女、それが貴女なのよ!!
害虫女は下民以下に相応しい殿方にとつぎなさいっ!!」
(うっわぁぁ、マジでないわぁ。目で殺されそうだわ)
友人は扇で口元を隠し、私に金切り声を張り上げている令嬢の素性を耳打ちし、この方が私の婚約者に付きまとっているストーカーなのね。
「この方はイライザ・クスパー伯爵令嬢、クロード公爵に付きまとってると貴族界で噂の方ですわ」
「この方が……」
(このような公の場で糾弾とは、女性として恥ずかしくないのかしら?)
こちらを見ながらヒソヒソするご令嬢方や婚約者と来ている子息方、私はまるで見世物だわ。
……それにしても困ったわね、こういう貴族にはどう対処してよいのか分からない。そんな私にフォローしてくれたのは向かいに座ってる友人、フレイア・シンバニム侯爵令嬢だった。
「イライザ様、ごきげんよう。
わたくしとナナエ様は日頃の疲れを癒すため、こちらでお茶と談笑を楽しんでいましたのよ。
イライザ様に一つ忠告ですわ。
貴族ならお分かりかと存じますが……わたくしより下の階級の貴族が上の階級の方に話しかけるのはいかがなものかと思いますわ」
「……そ、それは…。
っ…も、申し訳ありませんでした」
そう告げたあと、眉間にしわを寄せ私をひと睨みをし、2人の取り巻きの令嬢を引き連れてカフェを出て行った。
自分が婚約者に選ばれないから私に嫉妬の炎を燃やして爆発させるなんてどうなのかしら。
異世界って怖いわね。ってか、貴族には階級があるのは分かっていたけど、学園内では階級は関係ないらしいけど、こういう公の場や卒業後などでは特に気をつけなければいけない。貴族は自分の言葉一つで運命が変わってしまうから。
「フレイア様、フォローしていたたきありがとうございます。
本来なら私……わたくしがお伝えしなくてはならないのに、不勉強で誠に申し訳ございませんでした」
扇の奥で小さく「クスッ」と微笑んだのが分かった。
「いいんですのよ。
ナナエ様はこの世でただ一人の聖女、それもこの世界を救ってくださった尊い御方なのです。
クロード公爵様とナナエ様が婚約した時は、自分のことのように嬉しかったですわ」
「フレイア様、ありがとうございます。
これからも良き友人として宜しくお願いいたします」
「こちらこそですわ」
2人でカフェのデザートとお茶をまったりと談笑して過ごした。
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