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1 いつの間にか転移しているっぽいです

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 私は、エルの膝の上に乗せられ。

 アップルパイを、フォークで一口大に切りエルの口へ入れた。

 恋人同士が喫茶店などでする、あの『あーーん』を今しているところなの。

 エルに一口食べてもらう度に私の頬は赤く染まってしまい。

 こういうのは初めてだから、まだ慣れないの。

 なのにエルってば『あーーん』してくれないと食事をしないなんて我儘を言うのよ。

 それでも大切で愛しい旦那様だから、我儘も可愛いって思っちゃうのは私だけではないよね?

 きっと恋愛を経験した方達も初めの頃は、私のように初々しかったんだろうなって思う。

 私とエルの仲が人間の王族や貴族の耳に入ったのか、隣国から『第1王女』がお見合いに来ているの。

 それも派手な真ピンクのフリフリレースや、リボンがいっぱいのドレスで堂々と私達がイチャイチャしている時にですよ?

 エルの眉間が、私はエルの眉間を撫でようと手を伸ばした。

「あっ、眉間にシワが出来ちゃうわよ?」

「うむ、撫でられるのは良いものなんだな」

 もう一度眉間にナデナデと撫でていると、隣国の第1王女が扇子でテーブルを『パシーーンッ!』 と勢いよく叩き、私を睨みつけてきた。

「貧乏な平民が!

 お前の役目は終わったわ!

 お前は治癒があるのだから、戦地の前線で役に立って来なさい!!」

 怒鳴られた私は『ビクッ!』と驚き、その行動が怖くて、エルの服を握り硬直してしまった。

 私の不安行動に気付いたエルは。

「大丈夫だ、ココには髪の毛一本も触れさせない! 」

 エルに耳元で囁かれささやかれ、首を付けて私のオデコにキスをしてくれた。

 エルが凄いイケメンだと知ると、第1王女の欲が出たのか。

 私を蹴落として自分が正妃になろうとした。

 が、エルだけでなく、ここにいる全員が第1王女に激怒し、隣国へと送り返していた!!


 その後、エルと人間の状況を見学に行くことになり、一緒に見ている。

 見上げれば青い空、赤や黒の小さな物が舞い上がっている。

 火の粉だ!

 人間同士やモンスターとの争いが絶えない!

 綺麗だった建物は瓦礫と化していた。

 ドラゴンは大きな体で、襲って来る人間を尻尾で攻撃をしている光景に一瞬クラリと目眩がしたが、エルが体を支えてくれていた。

 亡くなった人は、そこら中に積み重ねられている。

 これが人間のすることなの?

 こんな残虐で惨い光景に私は隣にいるデュラハンのエル(隣国の王)と補佐のロイ(魔族)、双子エルフのルルアとルミア(私の護衛兼メイド)と共に空中から見ている。

 エルは言った!

「これが醜い心を持った人間の姿だ!

 野心や欲望の為だけに自分の家族までも犠牲にして上に立とうとする心が穢れた者達だ!!」

 心の綺麗な優しき人間だけを隣国への移住を認めた途端、心の醜い者達は片手に剣や武器を持ち襲って来ようとしたが『見えない壁』があるのか、その壁へと向かって自分達が持っている武器で何度も攻撃を繰り返す。

 サーシャ家族や宿にいた心優しい方々、人種差別はしない綺麗な心の持ち主のみんなは無事に隣国へと避難出来た。

 私が隣国へ嫁ぐ前に、何処で知られたのかは謎だが、癒しの力を使い何度も傷を回復しても無駄にする。

 それだけなら良かった、私を閉じ込めて鎖に繋ぎ、便利な能力だけを使い奴隷にする計画を魔族に知られ、隣国の王である『デュラハン』の耳に入り怒りを買ったのだ。

 この世界では、人間は人以外を軽蔑する心と人間以外の者も助けたいと思う優しき心を持っており、二手に分かれるのだと教えてくれた。

 その一部の人間は心が優しく、1つの場所に集まっている。

 それがサーシャの宿屋だったとか。
 私はその縁に引き寄せられたのかもしれない。

 断言が出来るのは、醜い人間より人ではない者達(隣国のみんな)の方が優しいと言うことだ。

 エルは怖くないんだよ?

 カッコイイし私の方が惚れてるって言っても、自分の方が惚れてると言って少し頑固なところもある。

 だけど似た者同士ってことにしているの。

 エルとキスをする時は首が付くんだよ? 

 不思議だと思いません?

 デュラハンって、鎧に片腕で首を持ってると想像してたんだけど……違ったのよ。

 エルと初めて会ったのは、お見合い場所であるサーシャの宿屋で、服は普通に貴族風な感じだったし、首が机の上にあって可笑しくて「クスクス」と笑ってしまった。

 話してても楽しくて、お見合いの時間なんてあっという間に終わってしまっていたの。

 また会いたいって気持ちが強くて、これが恋の始まりだったのね。

 






 ** 時は地球の頃まで戻り **


 私は『海野心音(うみのここね)』私の両親は10年前に強盗に殺された。

 私が6歳の時に、友達の家族とキャンプへ行っている間に……両親の死は無残だった。

 全国ニュースにもなり、私の人生が大きく変わっていく。

 両親は殺されるのを予知していたかのように、父の会社の有名な顧問弁護士に遺言と遺産・保険の証書を私が16歳になるまで預けていた。

 私は、1ヶ月前に16歳になったので、親の保険金と遺産を受け取った。

 父には身内がいなく、親の資産と会社経営でかなりのお金持ちだったが、母の身内は浪費家で有名だったのもあり、資産や保険金に株などの大金になる物は全て『心音』名義にするよう顧問弁護士に手続きをしてもらっていたらしい、親類には内密に事が進んだ。

 顧問弁護士さんは、わざわざ私の学校まで来訪してくれ手続きを終わらすことが出来た。

 ……親類の人達は浪費が激しく、両親が私の為にと数百億単位の貯金通帳を私から奪った。

 いいえ、盗ったという表現の方が正しい。

 私はバカでは無いから、数百億単位の通帳は隠してあるの。

 馬鹿な親類共は数百万入ってる通帳を奪って浮かれている。

 親類は、私に対しての扱いが酷く、今では家政婦や奴隷のように働かせてばかり。

 6歳の時から親戚中をたらい回し?

 というより、厄介払い。

 まともなご飯なんて無く、いつも残り物の残飯処理と八つ当たりで、背中や見えない場所にハンガーやホウキ、布団叩きで殴られる毎日だ。

 タバコを背中に押し付けられたり、声を出せば即蹴られたり殴られたりの毎日で、死んだ方がマシだった。

 そんな日々から解放されたい、自殺したいと毎日思っていた!

 今だって両親の元へ行きたいって思うことあるよ。

 親類の人達は金食い虫で、私の両親が残した遺産と保険金を私から盗ろうとしているの。

 なので私は通帳と印鑑だけは肌身離さず、常に持っている状態だ。

 どんな状況かというと、首から下げれる様になっている物に通帳と印鑑を入れて過ごしている。

 お風呂には防水用の袋に入れて入っている!

 こうでもしないと、親類の人達に散財されると分かっていたから。

 凄く困った親類だよ。

 私はもう、この虐待に耐えられず学校帰りに両親のお墓に来ていた。

「パパ、ママ、私もうあの人達と居たくない。

 もう、ここに居たくないよ。

 誰か助けて!!」

 両親のお墓の石段に涙が一雫落ちた瞬間『リィーーン』と音がしたような気がしたが、何も無かった。

 はあぁぁっ!

 長い溜息を吐き。

「早く帰って夕飯作らないと、ご飯抜きになっちゃう!」

 泣きそうな顔で、パパとママのお墓を再び見ると涙が勝手にポロポロ落ちていく。

 
 
 帰宅すると嵐が来るんじゃないかと思うくらいの猫撫で声で話しかけられ、旅行へ行こうと言われた。

 優しく話しかけられた時は凄く嬉しくて、あの地獄の様な毎日から解放されると思い込んでいた。

 だが、よく考えると何かがおかしい、違和感がするっていうか、今日の夕方前までは奴隷扱いだったのがなぜか態度が変わっているからだ!

 私が持ってる遺産が目当てだと勘で分かった。

 お出掛け用のバッグの内側に切り込みを入れて通帳と印鑑、家族の写真を防水用の袋に入れて分からない様に縫いつけた。

 首からさげていた通帳を、ダミーとしてお金が入ってない通帳と印鑑が入ってない印鑑ケースを入れている。

 準備は……大丈夫、だよね。






 ここからの景色は綺麗だわ、崖の上は怖いけど海の眺めが凄く良いの。

 太陽に反射された光をバックに私は叔母さんの手で背中を押され。

 ドンッッ!!

 と、音とともに叔父さんには、首から下げていた通帳を引きちぎられ、崖から落ちる瞬間に見た叔父さん達の殺気めいた顔が脳裏に焼き付いていた。

 海に落ちても苦しくはなかった、パパとママに会えると考えていたら嬉しい気持ちでいっぱいだった。

 私と大切な財産は海の底へと沈んで行った。

 目を開けると海の底ではなく、知らない場所? 

 知らない世界?

 建物と建物の間に私は立っていた。

「ここは何処なの?」

 不思議に思っていると、急に左手から肘にかけて激痛が走り 立っていられず、蹲ってうずくまってしまった。

「くうぅぅっっ!!」

 左腕を抱き込んでいると、左腕が淡いピンクに光っていた!

「な、何が起こっているの?」

 私の身体も何かに包まれた様に暖かくなり、見るとキラキラと淡いピンクの光が輝いていたが、数分後には光が消えていた。

 でも、左腕だけは淡いピンク色のままだった。
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