【完結】番である私の旦那様

桜もふ

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頭がお花畑のルリナ様は、王宮で暮らすそうです

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 ルリナ様は一度出かけていたが、夕食の前に帰って来た。

 私を見て「フンっ」鼻を鳴らし、私が座ってるソファーの前まで来たかと思えば、怖い顔で睨みながらオッサンの様に『ドスンッ!』と座った。
 うわあーー、公爵令嬢なのに『コレ』で大丈夫なのかしら?

「私のオールとジンに色目を使うのは止めてよね!
 それに、この子はいずれ私のペットになるんだから!
  おいで!!」

 訳の分からない事を言って、フェンに変な名前を付けて触ろうと手を伸ばしたが、唸られてるし。

「ゔゔゔううぅぅぅっ!!」

 ルリナ様は怯んだのかな?   って思い見てたが怯まずフェンに寄って行こうとしている!
 フェンはルリナ様に白い歯を剥き出して唸り。

「まあ、可哀想なチビ。
 この女に洗脳されているのね!」
「姉上、伝説の従魔である『フェンリル様』を怒らせたら命ないかもね!
 それどころか、オパール皇太子殿下様とユージン様に嫌われるだろうね!」

 ホーリー様に言われた言葉に『ハッ!』として、こちらを向き無言になってしまった。

 何なのこの子、オールとユージンが好きなのかな?
 でも、ディロールの第二王子と親密そうな感じだったけど、この子の行動や考えが分からなくて、意味不明だわ。

「………………」

 ルリナ様は私を睨んでいたが、ホーリー様の一声で部屋へと走って行った。
 バタバタバタバタッッ!!
 令嬢としての行動は無いのかしら、何時もこんな感じの態度なんだろうな。

「ホーリー様、ありがとうございます」

 私は頭を下げた。
 ホーリー様の眉がハの字になり、申し訳なさそうにしている。

「姉様が、申し訳ありません」

 今度はホーリー様が頭を下げて来た。

「ホーリー様のせいではないのですから、頭を上げて下さい」

 私は笑顔で言った。
 ホーリー様は顔を赤くし、一度俯いたが。

「あ、ありがとうございます」

 と一言だけ言って笑顔に戻った。

「僕の事は『リー』と呼んで下さい。
 フェンリル様の事を『フェン』とお呼びしても良いでしょうか?」

 フェンは頷き「許す!」と一言だけ言った。

「リー様、フェン共々宜しくお願いしますわ。
 フェンの事はいつでも『ナデナデモフモフ』してあげて下さいな」
「ナデナデ、モフモフですか……良いですね!」

 二人でクスクス笑い合い。
 フェンはリー様に撫でられて気持ちが良いのか、リー様の膝の上で寝ていた。
 リー様は年相応な反応で、本当の弟のように可愛いわ。

 コンコンコン!

「お食事のご用意が整いました」

 メイドさんは、一言だけ言ってドアを開けたまま待ってくれている。
 リー様が困った顔で「行きましょうか」と一言、前を歩いて案内をしてくれた。
 皆が席に着き、バールナ公爵が飲み物を掲げて

「ユア様が家族になった記念を祝して!」

 皆がグラスを掲げた、一人を除いて。

 バールナ公爵家のコックが作った一番美味しい料理らしく、きっと同じだよね。
 うん、同じだった。
 このスープは何? 塩の味しかしない。
 主食のパン、お兄ちゃんが気絶したの思い出すよ。
 柑橘系のソースかけサラダ?

 肉料理? 皆さんは普通に食べてるよ。

「紅茶を入れて!
 熱いのを今直ぐにっ!!」

 夕食に紅茶? それも熱々って、胃は大丈夫なのかしら?

 ルリナ様の事より、今はコノ食事よ。

 食べるの怖いし、皆に見られてるし食べないと……勇気を出すのよ!

「……!」

 やばっ! 吐き出すとこだったよ!
 味は、油ギトギトの醤油ぶっかけステーキだよ?
 体調不良になりそう!
 食だけは我慢出来ないよ!
 公爵様に言おう! ってなった時に『バンッ!!』とルリナ様がテーブルを叩き椅子から立ち上がり。

「お父様、お母様、私はこんな穢れた黒い女と居たくない!
 ヴァン王子の所へ行くから!」

 勢いよく立ち上がったルリナ様は、椅子に足を取られ、後ろへと転んでしまった。
 うわぁーーっ、スカートの中が丸見えですよ。

「プププッ……んんっ、失礼」

 思わず笑っちゃった、その笑いが気に食わなかったのか、ルリナ様は体をフルフルと小刻みに揺すり動かしながら立ち、茹でタコのように顔を真っ赤にしてティーカップを私に向けられていた。

『パシャッ!!』

 ポタポタと水滴が綺麗な絨毯へと落ちて行く。
 熱い、頬の辺りが痛い。
 私、熱い紅茶をかけられたの?

「……!」

 フェンは、ルリナ様の腰部分の服を咥え、外へ放り出した。

「きゃあぁぁっっ、痛い。
 チビ! 何するの……よ……」

 フェンは元の大きさになり、ルリナ様を上から睨んでいた。

 このままじゃ駄目、止めないと!

「フェン、駄目!
 落ち着いて! お願い、小さいフェンに戻って?」

 フェンは私の前に立ち、ルリナ様に忠告をした。

「我の主に……、次何かしてみろ、我は許さない!
 ソフィーリアの者、全員がオマエの敵になる!!」
「私はヒロインなのよ!
 オールとジンが守ってくれるんだからっ!!」

 メイドに荷物を持たせ、私達に言い残すように言って、出て行った。

「ヴァン王子に承諾してもらってるから!
 オールとジンが来たら知らせてよね!」

 皆さん顔が『ポカーン』だよ、私もだけど。

「ユア様、うちの馬鹿娘が……申し訳ありません!
 治癒師は王宮にしかいないのです。
 冷やさなくては!」

 水で何度も何度も冷やしたが、火傷をしたオデコから頬にかけて真っ赤になっていた。
 オールとユージンが見たら……怖いから考えたくないわ。

 まだかなり痛いけど、それよりコノ料理よ!
 顔が痛いうえに、ご飯が不味いって最悪だから。
 この『料理』をなんとかしないと!

「公爵様にお願いしたい事が御座います。
 わたくしは料理を作るのが生き甲斐でソフィーリアでも料理していました。
 料理を作らないと……ストレスで倒れてしまうのです。
 その上、今は顔も痛いし……。
 お願い致します、作らせて下さい!」
「だが、怪我をしたユア様にその様な事は」

 あともう一押し!

「明日の朝からでお願いしたいのです。
 料理を作らないと本当に倒れてしまいますわ」

 大袈裟に発言した後、ウルウルとした瞳で言ってみた。

「倒れられては困ります、分かりました。
 明日の朝食からお願い致します」

 やったー!!

 フェンも飛び跳ねて喜んでいる。
 これで美味しいご飯が食べれる!

 明日が楽しみだけど、この顔をオールとユージンが見た時が怖いな。
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