上 下
32 / 38

32 グリフィンとフェンリルの和解

しおりを挟む
    声のぬしは先程のグリフィンだった。何かやっちゃったかな~と思い、フェンの影に隠れてみたのだけど。

「……ん?  ははははっ、悪いな。怖がらせてしまっただろうか?」
「俺はアンジュの従魔……いや、護衛だ!」
「そうか。さっきは脅かしてしまって申し訳ない。あなた方には頭が上がらないよ。
    レッドドラゴンを倒してくれてありがとうございました。俺達の里で体を休ませてください」
「あ、ありがとうございます」

    グリフィンの里は山間部の洞穴だ。一家族に一つの洞穴で暮らしているらしく、いろんな場所を案内してくれた。

    今夜はレッドドラゴンが退治されたお祝いをすると張り切って、グリフィンの大人から子供まで、みんなで果物やお肉(当然『生』)を持ち寄っている。

    お肉の生は……無理無理、絶対にお腹壊すから!

    アイテムボックスから焚き火・フライパン・調味料・ステーキのタレを出して調理をし、グリフィンに味見してもらうと……!!

「えっ、味見なのに……無くなっちゃった……」

    私がグリフィンをジトーーとした目で見ていると。

「あぁ~~あ、ノア様は里長なのに小さい子のご飯を全部食べるって、最悪ですね」
「あ、いや……これはだな。
    はははは、美味くてついな!」
「いいですよ、またわたしが、やきます。
    みなさんも、たべますか?  フェンのもあるからね」
「おぉ、アンジュありがとな」

    みんなの分を焼くのは大変だったけど、楽しかったな。里長のノアさんとライオさんの息子のルイくんの会話が面白かった。

    楽しくて時間を忘れちゃうくらいだったな。

「こんばんは。先程はレッドドラゴンから助けていただきありがとうございました。卵も妻も無事でした」
「みんながぶじで、よかった。かわいいこが、うまれるように、けっかいを、はっておこうか?」
「えっ、結界はフェンリル達が……」
「俺は構わねえと思うぞ?  そろそろ和解しないか?」
「いきていくには、なかまのきょうりょくが、ひつようって、わかってるんじゃないかな?
    そうですよね、ノアさん?」

    ノアさんはフェンの真剣な表情を察したのか。和解をし、協力しようと固く誓った。
    フェンはこのことを知らせる為にフェンリルの里へ戻り、ラセンさんを連れて来た。

    その間に大きな魔石を出してフェンリルの里の結界と同じようにした。



    あれ、この卵は誰のかな?
    水色と白の模様の卵を、みんながいるところまで運び、この卵の親はいないのかを聞いたが、レッドドラゴンに殺られていないから半年前から放置されているのだとか。

    ルルとリンが卵の中から小さな声が聞こえると言うので、私がこの子の親になることを決め。今日から毎日毎日一緒に温めた。

    温めるのにこんなに時間がかかるとは思ってもみなかったな。まぁ、そうだよね。ニワトリの卵ではないのだから当たり前だ。

    あれから、グリフィンの里とフェンリルの里を何度も行き来し。今日で2年になるかな。フェンリルの里で過ごした時が4歳になってたから、今は6歳なの。

    そうそう、卵の中の子が誕生しそうなのよ。きっと今日中に生まれるよ。凄く楽しみ。

「アンジュ、おはよう」
「あっ、リンとルル。おはよう!
    今日生まれそうだよ」
「結構時間かかったけど、この子の命が助かって良かった」


    卵をノアさんの前まで持って来たは良いが、私が移動すると卵がゴロゴロと転がり、私から離れない。
    こんな珍しく見たこともない光景に、ノアさんをはじめ、グリフィンのみんなは苦笑したり、ド派手に爆笑している。

    私は笑えない。
    だって、生まれたら置いて行くのに。懐かせるのは私のエゴでしかないから。頭の中で葛藤してるとノアさんが来て、問題解決した。

    グリフィンは生まれた時から強いんだって。それとね、この子は普通のグリフィンとは比べ物にならないくらい強いらしいの。


    あっ、卵が……!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

くたばれ番

あいうえお
恋愛
17歳の少女「あかり」は突然異世界に召喚された上に、竜帝陛下の番認定されてしまう。 「元の世界に返して……!」あかりの悲痛な叫びは周りには届かない。 これはあかりが元の世界に帰ろうと精一杯頑張るお話。 ──────────────────────── 主人公は精神的に少し幼いところがございますが成長を楽しんでいただきたいです 不定期更新

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

処理中です...