聖獣と従魔が強いので負ける気がしませんが、私には愛する人と大好きな人達がいるので邪魔しないでください!!

桜もふ

文字の大きさ
上 下
16 / 38

16 リボンとツインテール

しおりを挟む
 眠いけど、眩しい。
 遠くの方から誰かの声がする。
 でも、まだ眠いから……あと5分だけ。
 体を揺らさないでよ。

「んんっ、ねむい、でちゅ……すぅすぅ……(んんっ、ねむいです…!すぅすぅ)」
「アンジュ、起きて?
 起きないとウィリアム王子が来ちゃいますわよ?」
「……ねぇね?」

    眠い目を擦りながら起き上がると、アリスお姉ちゃんがいることに安心したのか、私は勢い良く抱きついた。
    アリスお姉ちゃんは驚いていたが、私を安心させるかのようにソッと抱きしめ。

「昨夜のことはお父様から聞いてますわ。
   もうアンジュのことを1人にはしませんわ」
「ねぇね、あぁーとー」
「お着替えをしたら朝食にしましょう」
「ぁい」

 私が王宮へ訪問している間は、王宮付きの侍女であるルネがお世話をしてくれる。

「今日の髪型はどういたしますか?」
「んんーーとね、こんな、のが、いいでちゅ」

 私は髪を二つに分け、上へと持ち上げた。
 アリスお姉ちゃんとルネはツインテールだと分かり、髪ゴムからリボンまで楽しそうに選んでくれ。
 鏡の前に映っているのは私だよね。
 髪型一つでこんなに変わるものなんだ。

「凄く可愛いですわ」
「アンジュをこんなに可愛く出来るなんて、さすがルネですわ」
「アイリス様、お褒め頂きありがとうございます。
 これからも精進致します」

 ドレッサーを見ていた私達の後ろではケルベロスのケル、ベル、ルルが騒いでいる。
 サンはウィリアム王子様と廊下で待機。
 リンはアリスお姉ちゃんの肩の上に乗って何度も頷いていた。
 なぜサンだけ廊下に追い出されたかは……女の子の私が着替えていたからだ。
 リンに「男の子は外」と言われ廊下へと移動させられていた。
 ケルとベルも男(オス)なのにズルい! と文句を言っていたがケルベロスは人間の女性に興味が無い。
 女性だけではなく人間に興味がないのだ。
 動物好きな人間には何もしないが、極悪非道な人間に対しては本能で分かるのか態度の差が激しい。

「アンジュ、アンジュ! 可愛い」
「アンジュの髪が二つになった」
「アンジュ、リボン良いな」
「ねぇね、ルル、に、りぼん、あげゆ」
「ルルも女の子だものね。こんな感じかしら……右耳のところにピンクのリボンを付けてみたわ」
「かあいい、ルル、かあいい」

 ルルはアリスお姉ちゃんの足に猫のように擦り寄り、元気いっぱいに尻尾をブンブン振っている。
 そんなルルを見たケルとベルも尻尾を振り、アリスお姉ちゃんとルネの周りを駆け回り。

「アリス、好き好き。ありがとう」
「ルル可愛い」
「ルル良かったね」
「皆様をお待たせしていますし、行きましょう」

 部屋を出るとウィリアム王子様とサンだけではなく、ダリオン王子様まで廊下で待っていた。
 ダリオン王子様はアリスお姉ちゃんをチラチラと見ながら目で追っている。
 これって、あれだよね?
 好きな人を目で追ってしまうっていう。
 片想いなのかな、両想いに……王族は恋愛結婚出来ないんだよね?
 アリスお姉ちゃんは将来、ウィリアム王子様と婚約して結婚するのかな……。
    ……なんか胸の奥がモヤモヤして、チクチクする。
    ウィリアム王子様と結婚してほしくないな。
 ……なんで私がこんな心配しなくちゃいけないのよ。
 そんなことよりも、今はステータスのことが気がかりなんだよね。

 皆様にステータスを見せるのは良い……けど、見せた時の反応が怖い。

【この王国では対処出来ないって言われたら?】

「アンジュ、あの人達は大丈夫」
「信じて大丈夫だぜ。俺とリンもあいつらのこと認めてるしな」
「……あぁーとー……(ありがとう)」
「アンジュ? 心配事?」
「……ちゅて、え、たちゅ、みた、ぱぁぱが……(ステータスみたぱぱが……)」

 私が言いたいことを察したのか、アリスお姉ちゃんは自信たっぷりと言い切った。
 それに続くようにして、ウィリアム王子様とダリオン王子様も同意してくれた。

「お父様は昔っから大袈裟おおげさなのよ。
 この世には無いスキルだろうと、わたくし達はアンジュの事を大切に思う気持ちは変わりませんわ」
「そうだよ。僕は何があろうとアンジュを突き放したりしないよ……むしろ守りたいんだ」
「うんうん、アンジュは妹同然なんだ。僕も守るよ」

「……あぁーとー……」
「さあ皆様、朝食に行きましょう」
「父上から聞いたのですが、朝食の席にクリス様とルイ様、シャル叔母様がご一緒すると申してましたよ」
「ほんとに? アンジュ、サルビア家のお爺様とお祖母様、お父様の妹であるシャル叔母様に会えますわよ」
「はぅ、どきどき、しまちゅ」
「大丈夫ですわよ。凄くお優しい方たちですわ」

    私の胸はドキドキしたまま、アリスお姉ちゃんと手を繋いで朝食へと向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

邪魔しないので、ほっておいてください。

りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。 お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。 義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。 実の娘よりもかわいがっているぐらいです。 幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。 でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。 階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。 悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。 それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

処理中です...