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1 始まりと出会い

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「ひっ!
    ……こ、こないで。やだ、いやぁーー!!」

    私の悲鳴とともに大地が揺れ。
    大きな、とても巨大な緑色のドラゴンに体を掴まれ父様達の名を叫んだ瞬間。

    魔法で口を塞がれ声を出すことが出来なかった。

「ぱぁぱーー、みんな、たす……んんーー!!」

    助けて!  って言葉が出せなかった。
    やだよ。みんなと離れたくない。視界が涙で歪む。

    ドラゴンと黒いローブを着た者は私を連れ去ろうと移動を開始する寸前、みんなの声が聞こえた。

「アンジューー!!」
「「「いやあーー!!」」」
「絶対、絶対に助ける!
    アンジューー!!」
「「クソっ!!」」

    ウィリアム王子様が私を助けようと必死に行動し2人の指先が触れたが、ドラゴンが上昇をした為、助けることが出来なかった。本当にあと少しだったのに。

    母様、アリス姉様、シャル姉様の悲鳴が私の耳に山びこのように木霊している。

    父様は私を追いかけながら叫んでいる。止まることもなく、エド兄様とキース兄様も父様に続き追いかけてくれている。


    みんなが遠ざかってしまう。やだよ!
    1人はもう嫌よ!!


「……私が……くから……」


    誰かの声?


    あれは!

    ルル!  ルルが私を追いかけてくれている。
    あの木の上からジャンプしたら届く!

    ルル頑張って。
    そう。そのまま登って……今よ!

    ジャーーンプ!!

    木の上からジャンプしたルルを、私の小さな両手で必死に抱きしめた。
    絶対に離さない!


「私はアンジュと離れない!」
「私もよ!」


【ルル……リン。ルル、リンきてくれて、ありがとう】
「アンジュを1人にはしないわ」
「アンジュ、大丈夫よ。ケルとベルとはテレパシーで話せるの。でも私だけしか話せないの、ごめんね」
【ううん、はなせるだけ、うれしい。
    みんなの、とこに、かえろうね】

    みんなが遠ざかり、見えなくなった。


    絶対にみんなのところに帰ってみせる!
    ルルとリンと一緒にガザニアに帰る!
    大好きなウィリアム王子様のところへ必ず帰るんだから!!


 




    **転生する前に遡さかのぼり**


 私は花村琴葉花村琴葉はなむらことは
 今日で18歳になる女子高生だ。

   物心がつく幼少の頃に、右胸付近にピンク色した八ートと花びらのような痣が出来てからだったかな。

   小さくて可愛いフワフワした丸い光が肩や頭に乗っていたのは。

   この子達は天使様なのかもしれない。
   私はこの光の子達も右胸付近にある八ートとそのまわりを花びらが散ったような感じの痣も大好きだ。
    
 今ね、毎年恒例のお誕生日旅行中でパパとママと一緒に観光しながら談笑していた時だった。

 前方から歩道へダンプカーが正面衝突して来た……運転手は飲酒の居眠り運転だった。

    私と両親が宙を舞った時に記憶の中を楽しかった思い出が駆け巡るかのように横切る。
 思い出の写真を見る感じで走馬灯がゆっくりと流れ、気付けば綺麗なお花がいっぱいある場所に立っていた。

 ……ここは何処なんだろう?

 ダンプカーとぶつかったような気が……。
 パパとママは?
 なんで私一人なの?

 フワフワと私の周りを小さくて可愛い妖精さんが肩や頭に乗って来た。

   ……もしかして、ううん……考えなくても分かるよ。
   いつも私の周りにいた可愛い丸い光は天使様ではなくて妖精さんだったんだ。

 姿は見えないが私の隣りに誰かがいるような気配がしている。
 恐怖は無い、だって凄く暖かくて心が落ち着くんだもの。

 妖精と一緒にいる私を見た神様と女神様は私に話しかけて来た。

「花村琴葉さん、初めまして。
 わたしは女神のアイリーン、貴女はまだ死ぬ運命ではなかった。
 でも交通事故で亡くなってしまいました。
 貴女のその純粋で清らかな心、穢れを嫌う妖精や精霊が集まって来てる。
 貴女には妖精や精霊の愛し子として転生してもらいたいのです」
「えっ?
 亡くなったって、パパとママは?」
「キミの父親と母親はキミの話を聞いたあと安心するかの様に無事天国へ行ったよ。
    俺は神のリアムだ。
 妖精や精霊が自然と集まって来てるだろ?
 キミは無欲で穢れの無い純粋で清らかな心を持っている証拠なんだ。
 オレ達の世界へ転生してほしい」
「わたし達が作った世界には妖精や精霊がいました。
 ですが、愛し子がいなくなり妖精や精霊だけではなく聖獣までもがいなくなり、全世界の半分が黒い霧に覆われてしまいました。
    今では黒い霧の影響によって魔獣やモンスターが凶暴化し世界を滅ぼされそうになっているのです。
 頼れるのは妖精や精霊に愛された貴女だけなのです」
「誰かが黒い霧を生み出し、魔獣やモンスターに何かをしているのでは?
 と、オレ達は考えている。
 神であるオレ達が直接手を貸す事は出来ないんだ。
 オレ達の世界に住む者達を救って欲しい」

 神様と女神様に頭を下げられ。
 無欲で穢れの無い純粋で清らかな心?
 良く分からないけど、私で救えるなら助けてあげたい。

「転生先はどんな場所なんですか?」

 女神様と神様は微笑みながら話してくれた。

「地球の様に科学が発達して無い場所だな。
 魔法が発達していて騎士達が魔獣やモンスターを倒してる」
「そんな場所に行ったら一瞬で死んじゃうと思うのですが……」
「キミには特別なスキルを授けようと思う」
「貴女には、妖精や精霊の愛し子を生まれた時から持っているので、私からの加護と読み書きと言葉、従魔、∞の魔力を授けます」
「オレからも加護とこの世界には無いレアスキルと、この小さな可愛い肩掛けバッグはアイテムボックスになっている。
    何をしても汚れないし壊れないようになっている」

 白くて可愛い肩掛けバッグだ。
 レアキルってなんだろ?
 異世界の読み書きや言葉を授けてくれるのは嬉しいな。

 私は動物が大好きだから、もふもふやナデナデがしたいな、そんなスキルなら良いな。
 でも贅沢は言いたく無い、もう一度生き返れるなら何でも良いよ。

 温かい家庭に生まれたい。
 それだけで十分だよ。

 だって私の周りには可愛い妖精や精霊がいるんだもの。
 私の隣りに誰かがいるような気がしていたのは精霊さんがいたからなんだ。

   出来れば聖獣とも仲良くなれたら嬉しいな。
 

「神様、女神様、私は温かい家庭に生まれ変われるなら何でも良いんです。
 気を使っていただいてありがとうございます。
 ……可愛い精霊さん、妖精さん、私と一緒に異世界を助けに行こう」
「ステ-タスが見たい時は『ステ-タス』と言えば良い」
「分かりました。
    ……私の右胸付近にピンク色した八ートと花びらが散ったような痣があるのですが、何か関係とかあるのでしょうか?」
「妖精と精霊の愛し子にはピンク色した痣が身体に表れると言われています。
 痣の形は異なっているようです」
「そうだったんですね。
    分かりました」
「いいえ、転生の決断をありがとう。
 異世界の名は『ムーンダスト』です。
 私達との対話は教会へ行くと可能ですよ。
    たまにではありますが、夢の中でも対話が出来ます。
 貴女にたくさんの笑顔と幸せが訪れますように」
「ありがとう!
 ムーンダストを宜しく頼む。
 キミに幸多からん事を願っている」

 断る理由もない私は転生することに決めました!
 
 新しい場所では困難や失敗などあるかと思うけれど、生まれ変わる新しい人生を楽しみます。
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