オトメマジカル ~女の子しか魔法を使えない世界で天才男の娘が魔法無双する話~

沼米 さくら

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少女四人?

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「なんで防げるの!? ぶっ殺す勢いで放ったのに!」
 出会いざま僕に攻撃魔法をぶっ放した金髪ロングの彼女は、下着姿で僕に指をさす。
「というかなんでしれっとあの束縛魔法破ってんの!?」
「だって魔法解除してくれなかったし……ね?」
「ねってなに!? あれそうやすやすと解除できるものでもないでしょ!?」
 そう言われても困る。意外と簡単に解除できたし。
 ぱちくりと目を瞬かせる僕。まくしたてようとする金髪ロングの彼女の肩がぽんと後ろから叩かれる。
「落ち着こ、クリスちゃん。この子、たぶんルームメイトだし――それに」
 鈴の鳴るような声で金髪の少女――クリスをたしなめるのは。
「この子、わたしたちを助けたあの子だよ」
 今朝助けた、白い髪の少女だった。

 無事に私服に着替えた少女たちと、まだ制服姿の僕。
 四人でテーブルを囲んで、僕らは対面していた。
「なにか言い残すことはある?」
「いちいち物騒だなぁ……」
 苦笑した僕。睨みつける金髪の少女。「はーい、そこまで」と見知らぬピンク髪ショートボブの子が左から引き離す。

「まずは自己紹介しましょう! 私はアリア。ピチピチの十三歳! 処女です!」
 ピンク髪の少女、アリアの自己紹介。……最後の情報必要だった?
 ドン引きする僕の右隣から、おずおずと手を上げる白い髪の女の子。

「えーっとぉ……わたしはマーキュリー、です。ね、年齢は十三歳でぇ……ええっと、しょじょってなんですか?」
「処女ってのはですねぇ……」
「教えなくていいからっ!」
 ねっとりとした声で知らなくてもいいようなことを教えようとするアリアをクリスといっしょに止めて。

 そのクリス――金髪ロングの少女は大きなため息をついて話し出す。
「私はクリス! 十二歳! これでいい!?」
「処女ですか?」
「しょっ……そんなことどうでもいいでしょヘンタイ! はい、次よ次!」
 そう言ってクリスは僕に話題を振る。僕は困ったように笑って、口を開いた。

「僕はソーヤ。十二歳で――好きなものは、魔法です」

 一瞬、きんと耳鳴りがした。――魔法を使われた気配?
 ふと辺りを見渡すと、左に座っていた少女――アリアのニヤケ顔が目に入る。
「ほう、ほうほう。魔法が好きなんですねぇ」
「うん。大好きだけど……それがなに?」
「いえ、私も大好きなので。それだけですよ。ふふっ」
 意味深な彼女の微笑み。考察する隙も与えられず。
「魔法が好きなのは当たり前じゃない。そうじゃないとこんなところに来ないわよ」
 クリスは呆れたような声で口にした。

 魔法学校とは、文字通り魔法を学ぶための学校である。
 魔法を学んだ先、つまり進路として挙げられるのは主に三つ。
 一つ。騎士団に入り、国を守るための魔導士として働く。
 二つ。魔法を研究して新たな魔法を生み出したり、魔法の原理を解明しようとする魔法学者として働く。
 三つ。誰かに嫁ぐ。お嫁さん。
 王侯貴族など三つ目に進む人も結構いるが、多くの学生は前者二つのどちらかを選ぶことになる。
 正直に言ってしまえば、学校はほとんどの人にとって行く意味はないし、魔法についての専門知識などなくても大半の女性は魔法を使いこなしている。
 要するに、クリスの言う通り、魔法学校に来るような若者は基本的に魔法に魅せられた魔法好きの魔法ジャンキーばっかりなのだ。

 閑話休題。
 そんな魔法ジャンキーたる僕に、マーキュリーはおずおずと手を上げた。
「あのー……ソーヤちゃん、着替えって持ってる?」
「まあ……収納魔法で持ってきてるけど」
 当たり前のようにトランク代わりに使っていた異空間に物をしまっておく魔法。その入り口の穴をぽんっと出して中身を軽く漁り。
「……」
 メイドたち――主に僕専属のメイドであるグレイスのおさがりの、無駄にキュートな子供下着に目をそらしつつ、着替えを取り出す。
 洗濯済みとはいえ、自分の女の子下着とか……気恥ずかしいよ……。
 物を取り出した後に穴を閉じて――周りを見たら、四人は酷く驚いた表情で僕を見ていた。
「……え、いまのって「亜空間収納魔法よね!?」クリスさん!?」
 アリアの言葉を遮って身を乗り出すクリス。そうだけどなにか? と僕はこくりと頷く。
「ちょっとだけ術式をいじって使いやすくしてるけど、大本は」
「すごいすごいっ! 見せてっ!」
 さっきの殺意が嘘のような態度で身を乗り出してくる彼女に、僕は「いいよ」と言いかけて。
 ……見られちゃいけないものが多くないか、と思い至る。
 ずっと入れっぱなしで長く使っていない男物の子供服。着ていないとはいえ見られたら男だとバレちゃうじゃないか。
 あと、女物の子供服――これはサイズ的な問題で趣味ではないが、体がいつまでも成長しないので私服に何着か紛れ込んでいる――とか、キュートな子供下着――断じて僕の趣味ではない。メイドの仕業だ――とか。あとえっちな本とか。見られたら恥ずかしいものが結構ある。
「ちょーっと待ってね……」
 手元に穴を出して片腕を突っ込み、バーッと術式を組み替える。見られたくないものの箱を奥に。見られてもいい図書類は手前に……っと。
 十秒ほどかけて術式の組み換え、要するに中身の整理を終えると、既にすぐそばにクリスがいた。
「わっ」
 おんなのこ……すごいいい匂いがする……。
 ピンクのもこもこなパジャマを着た金髪の少女は、僕の呆けた隙を狙ってえいっと押しのけた。
 そして、僕の亜空間に首を突っ込む。
「ちょ、うっかり落ちちゃったらすごーく痛いから気を付けて――」
「なに、これ……」
 穴の中から声がした。え、なんかあった?
 きゅぽん、と穴から首を出すクリス。そして、がさごそと穴の中に腕を入れて中を漁りだし――。

「なに、これ」

 中から取り出したるは。

「男の子の、パンツ?」

 マーキュリーが口にした。
 白ブリーフだった。普段履きの。
 しまった、普段使っている下着のことまで頭が回らなかった!
 僕は顔面を蒼白にし――。
「ぱんつ! パンツですっ!」
「ひゃんっ!?」
 後ろからスカートをめくられた。
 露出する尻。――今日穿いていた下着は。

「ブリーフですよっっ!!」

 アリアが興奮気味で、僕の下着事情を明かしたのだった。
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