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迷いと、後悔
十一話
しおりを挟むほどなくして、ヒースとの用を終えたシュバルツはシルバの元へ向かった。
香りのよい紅茶を淹れ、シルバは落ち着いて姿勢を正す。
向かい合う白騎士は神妙な顔で腕を組んでいた。
「シュバルツさん……御多忙な身であり、大会での怪我も癒えきってないのに
ジニア村まで来て頂いてありがとうございます、今日はヒースに会いに?」
「そう…ですね、奴の様子を見に来たのもありますが、
それ以上に、一国の王女であり我が主である御身に危険が及んでいたのです、
騎士団として、この地を治める領主として現場を確認するのは自然でしょう」
「……シバ公爵は、その後……」
「彼は今、王女暗殺に関する全ての計画を自供し、その取り調べを受けています、
―――その後、娘であるネネにも容疑がかけられている状態です」
「そ、それはっ……」
「分かっています、彼女を……私の婚約者を守るためにも、
今日はシルバ王女に二つ、お願いをしに参りました」
かつて、自身との婚約を断ち切って家名を優先したシュバルツ。
その彼が二度、同じ選択をせずに今度は正しく行動して私に頭を下げた。
それだけで充分だった、ヒースが言った私にしか出来ない事があるのならば、これがきっとそうなのだろう。
「村の混乱が収まり次第、帝都へ戻ってネネの弁護を頼みたいのです、
彼女は……我が妻となる彼女は、決して貴方を裏切るような事はしません」
「……理解しております、出来るだけ早く帝都へ戻りましょう」
「―――ご決断、感謝致します」
「いえ、いずれは戻らねばいけない場所です、ネネの保身も私が直接擁護します」
「ありがとう……ございます」
深く下げた頭を、シュバルツはそのままにして感謝する。
過去に行ったシルバに対しての婚約破棄も、改めて詫びるようにして続ける。
「シルバ王女様、もう一つ、ヒースに関してですがよろしいでしょうか?」
「ヒースに、ですか?」
「はい、アイツの呪詛について改めて説明させて下さい」
そこでゆっくり、視線を上げてシュバルツは微笑む。
淹れたばかりの紅茶を手に取り、彼は小さく頂きますと言って口に含む。
シルバも少しだけ甘くした紅茶を飲んで、一瞬の静寂を噛み締める。
「―――単刀直入に言うと、ヒースは、既に死んでいてもおかしくありません」
「……ぇ」
「知っての通り、黒鎧布の呪詛は使用者の寿命を削り取る呪い、
故に禁術指定されていながらアリウム騎士団が秘匿していた物、
まぁ、実態は有力騎士が黒き刃に持たせて活動させていましたが……」
「それなら何故、彼は…ヒースはっ……!!」
「最初は呪いに対する抵抗が強いだけだと思っていました、
ヒースの才能が故に、呪詛に侵されながらも黒鎧布を使用できていたと」
「……確かに、ヒースには高い魔力適正があります、
その影響もあり、呪詛による進行を遅らせていた、と」
「ですが、村で使用した黒鎧布はその許容量を超えて使用され、
とうに身体は呪いによって死んでいると踏んでいましたが……」
音も立てず、カップを置いて彼は向き直る。
真剣に、そしてここから本題に入ると瞳が伝えていた。
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