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束の間の安息と追憶
六話
しおりを挟む無力を呪い、ただ祈っていると馬車は止まると、野盗たちが話し込んでいた。
「おい、別動隊が予定の場所から戻ってこない、
俺は様子を見てくるから、お前はここで待機していろ」
「あぁん……だったらついでに、攫ったガキで遊んでいいか?」
「勝手にしろ、その銀髪のガキにだけ何もしなければいい」
「わかってる、ほら、さっさといけよ」
「……持ち場は離れるなよ」
外の様子はわからず、声だけが聴こえる状況で身を小さくしていると、住人を殺していた狂気的な野盗の一人が荷馬車を開けた。
彼はキョロキョロと子供を眺めると、下卑た顔で言葉を発する。
「っへ……そう口うるさく言われたら手を出したくなるってもんだろッ!!」
「きゃ……!!」
「お前と、お前とお前、ほらッ!!こっち来いッ!!」
手に付けられた奴隷用の鎖を引っ張られ、少女含めた三名は男に連れられ家屋に移動させられる。
まだ六、七歳ほどの子供二名は泣き叫んで恐怖し、野盗に暴力を浴びせられた。
「うるせぇッ!!黙ってろッ!!」
ッゴ……ガッ……!!
鈍い打撃音がこちらにまで響いて、骨の折れる音がした。
女の子の一人が腕を大きく腫らし、悲痛な声で助けを求める。
「っひぐ……お母さんっ……!助けてっ……!!」
「オラぁッ!!泣き叫べッ!!!」
「っぐぅぅ……かはっ……」
首を、大人の力で締め上げられて女の子は足をばたつかせる。
死んでしまう、このままではあの子が殺されてしまう。
「や、やめて、くださいっ……!!」
「―――あ?」
「これ以上……こんな、酷い事は……」
「やめろ、だと?……あぁ……そうか、こいつ死んじゃうもんな」
「なら―――」
バチンッ!!
少女の言葉は遮られ、大きな衝撃と同時に顔を叩かれる。
その勢いのまま弾き飛ばされ、野盗の蛮行は止まらない。
「そこで見てろガキがぁ!!俺の趣味に口だしすんなッ!!」
視界が霞む、けれど、網膜にそれは焼き付く。
殴られ、蹴られ、切られ、弄ばれ、女の子であったものは形を変えて静かになった。
あまりの恐怖でもう一人の子はガタガタと身体を震わせ隠れていたが、玩具を変える様に野盗はその子を引きずり回し、ニタニタと愚行を続ける。
「―――や、めて」
許される、はずがない。
こんな行いが許されていいはずもなく、絶対に償わせなければいけない。
けど、このままではいずれ殺されるのはわたしであり、時間も無い。
「やめ…て」
足りない、力が足りない。
絶対的な力と、抗う為の覚悟が足りない。
「もう、やめて」
何を犠牲にしてもいい、だから―――!!!!!!
『なら、殺せばいい』
「―――え」
世界が、凍った。
先ほどまで目の前で行われていた下劣な行為は止まり、静かに降っていた雪はぴたりと停止して時間の概念が捻じ曲がる。
―――女神が、顕現したのだ。
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