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シルバ・アリウム、剣聖と成る
五十一話
しおりを挟む「……へぇ、奇襲の為にここまで温存していた俺の紫電を受け流すとは……
やっぱり、お忍びでここまで来た甲斐があったもんだぜ」
「あぁ、なるほど……バーベナ国から招待していた本来の騎士を押しのけ、
ここまで身分を隠していた理由にも納得つきました」
「お?流石に気付いたか?」
「ええ、武骨な大剣だけでは分かりませんでしたが、その紫電には覚えがあります、
バーベナ国で紫電を操る大剣使い、と言えば誰だって一度ぐらいは耳にします」
「それは光栄だぜ、剣聖と謳われた王と手合わせ出来なかった事は残念だが、
お姫様は剣聖に恥じぬ腕前ときた、俺に心残りなんかねぇよ」
終始楽しそうに笑い、ようやくと言った風に仮面に手を掛ける。
ゆっくりと晒される素顔は、端正な顔立ちながらも気品も感じる佇まい。
赤みがかった色合いの髪が滾る闘志を映しているようで、なんとも人柄を表しているように思えた。
「―――改めて、挨拶が遅れたなシルバ王女、
俺はバーベナ国第二王子、レッド・バーベナだ」
ここにきて、別方向に事態が急変して頭が痛くなる。
私は同盟関係であるバーベナ国の大事な王子の腕を、躊躇なく叩き切ろうとしたのだ。
頭では割り切っていても、剣を持つ手が一瞬震えて動揺してしまう。
「これは、なんという……めぐり合わせでしょうか……」
「ほんとにな、決勝まで正体隠して最後に明かそうと思っていたが、
……まさか、アリウム国の王女様まで飛び入り参加と来たもんだ、
このまま正体すら明かさずに、大会を優勝しようか迷ったほどだぜ?」
「っふふ……随分と気が早い御方ですね、まだ勝負の最中だというのに、
もう優勝の事を考えているのは少し、気が緩んではいませんか?」
「それを言うなら、お姫様だって俺の正体を知って若干の乱れがあったろ?
立場を気にして手を抜かれたら不本意だ、精々集中してくれよ?」
剣の腕もさることながら、大国の王子だけあり魔法に関しても紫電を操り一級以上の腕を持っている。
更に、私の動揺を読み取るほどの観察力を兼ね備え、読み合いも慣れている。
一貫して、王子とは思えぬ実戦に特化した戦闘スタイル、それが王子の二つ名。
―――紫電の英雄。
その名前に、偽りなど無かった。
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