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シルバ・アリウム、剣聖と成る
五十話
しおりを挟む「さて……」
―――本気とは。
手加減を加えない、そういった意味で捉えている。
しかし、先の激闘を魅せられてはその認識は酷い勘違いだと思い知らされる。
なぜなら、私にとっての手加減とは、赤子を扱うかの如くを想定した強さ。
これが私の手加減であり、手心であり、義父にもそう教えられた。
だってそうでしょう、全力で剣を振るえば、私の場合―――
―――ヅガァァァァァァァァァンッッッッ!!!!!!!!!!!!
剣戟に沿って、斬撃が空気を纏って飛ぶのだから。
「―――は、……なんだ、いまの……」
流石、と言ったところだろうか。
腕くらい吹き飛ばす勢いで振り抜いたが、仮面の彼は瞬間的に回避して間合いを取った。
ここから追撃して攻めるぐらいは出来たが、慎重に立ち回る意識と彼の呆気に取られた瞳が印象的で、思わずこちらも様子見を兼ねた間合いを取ってしまった。
『……何が、起きたのでしょうか……私には魔法剣の剣戟が辛うじて見えましたが、
その後、何の魔力行使も無く直線状に真空波のような物が飛んだ気が……
えぇと……詳細は分かりませんがッ……これは、シルバ王女の剣技なのかッッ!?』
半分当たりで半分外れ、だろう。
本来であれば鉄の剣などを振るった際、純粋な物理現象だけで空気を纏った真空波が飛ばせるので見立ては当たっている。
しかし、いま握っているのは魔法剣。
空気と共に魔力を纏って斬撃は弾け飛び、今まで以上の威力で剣は穿たれた。
「―――ッハ!!上等だッ!!そうこなくちゃなッ!!お姫様ッ!!」
「参ります」
ここから、仮面の男が速度を上げて接近する。
私よりも三十センチほども高い身長を活かし、大剣と体格差を利用したリーチ外からの剣は中々にやっかいである。
けれど、それだけで止まるほどやわな訓練は受けておらず、数巡の剣戟を重ねては間合いを詰めて踏み込む。
「ッチ……やるなッ!!」
払って逃げられる、ここまで想定内。
すぐに畳みこんで追撃を―――
そこまで思考して、直感的に頭上を守る。
「ッハ……!!見せてやるよッ!!俺の紫電をッ!!」
―――刹那。
光は一瞬、だが衝撃は重厚。
頭上目掛けて飛んできたのは、魔力によって造られた紫の雷。
それは、確かな衝撃と身体に響かせる痺れを伴い、私を襲った。
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