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シルバ・アリウム、剣聖と成る
四十七話
しおりを挟む剣士たちがしのぎを削って試合が行われ、多少のイレギュラーはあったが大会は滞りなく進んでゆき、次の優勝者も次第に絞れられていった。
Aブロックからは、大会に突然参加して場を沸かせたシルバ王女が勝ち進み、その実力を大衆に知らしめて堂々の準決勝進出。
そのシルバの対戦相手となるは、正体不明の仮面の男。
隣国バーベナ国の出身であり、大剣を使う剣士。
彼は名だたる剣士達を剣技だけで打ちのめし、決勝まで勝ち残った実力者でもある。
対するBブロックからは、因縁の二人が圧倒的な武勇を誇り進出。
言わずもがな、その二人はヒースとシュバルツ。
彼らは約束通り、危なげなく戦いに勝利して準決勝となる舞台へ足を踏み入れた。
『みなさまぁぁぁッッッ!!!今大会はかつてないほど盛り上がりッ!!
そして類を見ないほどの強者が集まった大会となっておりますッッ!?」
この激戦となった準決勝を飾るは、異例の二人ですッ!!』
剣術大会も佳境となる中、勝ちを積み上げてきた彼らが、満を持して闘技場の中央へ姿を現し会場を盛り上げる。
一方は気高く、気品と優雅を兼ね備えた白騎士。
もう一方は、黒い外装と銀色に身を包んだ黒騎士。
彼らは何も言わず、酷く落ち着いて互いを見据える。
『さぁッッ!!現れたるは皆が知るアリウム騎士のあの御方ッッ!!
本大会の主催者でありながら大会に参加し、その強さを見せつけている
シュバルツ・レイッッ!!またの名を白騎士シュバルツッ!!』
騎士として、領主としての人気からか、割れるような歓声で出迎えられる。
『相対するはっ、会場を大いに盛り上げてくださったシルバ王女の側近、
帝都の死神と恐れられたヒース・ライトですッッ!!!
彼はここまでの試合、その全試合を一瞬で終わらせて勝ち続けましたッッ!!
果たして白騎士相手にも同様の戦法は通じるのであろうかッッ!?』
彼固有の移動術、影を媒介にした魔法を使って圧勝してきたヒース。
それらを見てきた人にとって、シュバルツがどうヒースを攻略するか期待していたが、当人達にとって禁術である影の魔法は問題では無かった。
そう、彼らにとって戦いなど二の次であり、真に決めるべきは互いの信念なのだから。
(あの日、私が弱いばかりに妹を助けられなかった、それは疑いようも無い事実、
……シュバルツ、お前は何故それを誰の責でも無いと言い切れる、
わたしは……俺は、二度とあの惨劇を起こさぬ様に強くあるだけ)
ゆっくりと、使い慣れた黒き短刀を腰に携え目の前の白騎士を見据える。
(―――ヒース、貴様の間違いをここで正し、今までの行いを後悔させてやる、
自責の念に囚われ、己の道を見失った事が正しいなどと、二度と言わせない)
毅然と、その信念を曲げぬ意思を見せ付ける様に剣を抜刀し、黒騎士を睨む。
『両者とも凄腕の使い手ッッ!!!初戦を飾ったシルバ王女の試合のように、
桁違いの立ち合いを見ることが出来るのでしょうかッッ!?
そんな期待を胸にして、準決勝を始めたいと思います!!!
準備は良いですか!?それでは――――』
最後まで理解し得なかった二人が、シルバによって強引に繋ぎ合わされ今に至る。
―――決意と、信念と、正しさと間違い。
少年時代を共に学び、高め合い、良き関係を築き上げたが、シルヴィアの死を機にそれは脆くも崩れ去った。
優しい兄は強さを求め、騎士団を頼るも暗殺者に堕ち、自らの手を汚しつつ着実に求めた力を手に入れた。
その行く末を、アリウム騎士団の若き天才として見届けていた秀才は、日々彼に対して苛立ちを覚え、彼もまた機械的な人間に成り果ててしまった。
合理と、利害と、地位と名誉を求めるだけの、正しいだけの騎士として。
「―――決着を付けようか、シュバルツ」
「無論、そのつもりだ、ヒース」
間違いだらけの優しい死神と、正しさを追い求めた厳格な機械。
かつてそうであった二人は、心新たに剣を握った。
『―――Bブロック準決勝ッッ……―――始めッ!!!!!』
宣言された合図とともに、黒騎士と白騎士が、動き出す―――
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