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シルバ・アリウム、剣聖と成る

四十六話

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 「……招待枠、と言う事は事前の登録情報があるのでは?」

 「はい、前もって登録されていた人物を調べたところ……
  バーベナ国騎士団長、リオ・マホという人物なのです、
  ですが、彼の戦闘スタイルは長槍と水魔法を使った戦術らしく、
  例の仮面騎士とは別人と断言して良いぐらい特徴が異なります」

 「招かれざる賓客……と言ったところですね、
  とはいえ、現状勝ち進んでいる訳ですのでここで身元を調べ、
  強引に退場させても場が白けてしまうもの、実際に私が立ち合うまでは
  好きにさせておきましょう」

 「良いのですか?シバ公爵と繋がりがあるかもしれませんよ?」

 「―――仮にそうであったとしても、逆に利用し証人として彼を捕らえて、
  襲撃の真相を追及させましょう、まぁ……慎重で策略に長けたシバ公爵が、
  この大きな大会でそんな大胆な事をしないと思いますが」


 ヒースの懸念はもっともだが、この会場で姿を晒してからそこまで時間は経っていない。
 
 その事も踏まえ、事前の段階でバーベナ国と繋がり、招待枠の剣士に刺客を遣わせるのも考えにくいし、結論としてシバの謀略の線は除外してもよいだろう。

 しかし、どうにも仮面剣士の目的が掴めない。

 Aブロックで勝ち進めば、いずれは相対する剣士なので真意はそこで問えば良いが、若干の不安要素を抱えて大会に挑むのは辛いところ。


 「とりあえず……また何かあれば報告ください……
  わたし、は……ちょっと…だけ、仮眠を……しますね……」


 ここまで張り詰めていたものが、ヒースのいる安心感と、彼が淹れてくれたほんのり甘いミルクティーによって緩んでしまった。

 必然的に訪れた眠気に耐えきれず、時間の許す限り眠りにつきたい。


 「―――次の立ち合いまで時間はあります、何かあれば起こしますので、
  ごゆっくりお休みください、シルバ……」

 「……はい、ありが、とう……ござい、ます……」


 年相応の可憐な寝顔を見せて、その少女は黒騎士を頼る。

 人並み外れた力を持っていても、帝都を追われ、一度は命を狙われた身。
 いかに大人びた性格でも、安心して眠りを任せられる人物はシルバにとって稀少であり、限られた者だけである。


 「……シルバ…」


 そしてヒースもまた、その信頼を重く噛み締め、更なる忠誠と信頼を彼女に誓う。

 可愛らしい寝息を立てて、あどけない寝顔を見せる彼女に、彼はかつての妹の姿を重ねながらシルバに毛布を被せる。


 「俺が……守ってやる」


 それは、守れなかった約束。

 己に刻まれたその言葉を、再度刻むように呟いて、ヒースはかけがえのない彼女の髪を優しく撫でては、シュバルツとの決着に臨むのであった―――。

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