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シルバ・アリウム、剣聖と成る
三十話
しおりを挟む呆気に取られる彼らを無視して、この妙案の説明をする。
「剣術大会を盛り上げるために私も全力を以て剣を振るいますが、
やはり会場の皆様は達人同士の競い合いを所望します、ですので騎士団でも
名を馳せているシュバルツ様が参加すれば、会場は大いに盛り上がる事でしょう」
「いや……ですが、私は領主として運営側に……」
「まぁ待ってください、そこに対抗馬としてヒースも参加させます、
アサシンとして活動していたからと言って、参加資格が無い訳では無いでしょう?
彼ならば並み居る強者ぐらいは屠ってみせますので、適役だと思いません?」
「……確かに腕前だけは保証出来るかもしれませんが、彼と私の剣術大会参加と、
この話し合いの関係性はいったいどこに?」
「分かりませんか?この問答の正しさは剣にて決着を付けてください、
剣術大会という大舞台で、二人は勝ち進んでお互いの信念をぶつけるのです」
個人の信念がぶつかれば、その答えが見つかるはずもなし。
故に人は争い、傷付け、奪い合う。
そうなる前に、二人には丁度良い機会があるのだから、それに便乗して少しでもわだかまりを解いてもらおう。
「異論ありますか?ヒース」
「我が主が決めた事、異論など微塵も御座いません」
「ではシュバルツ様は?二人の個人的な感情を抜きにしても、腕の立つ騎士と
熟練のアサシン参加は大会運営者として見ても適任だと思いますが」
「……………」
「さらに言えば、大会の運営が無事終了し、私の存在が多くの観客と有力な権力者に
知れ渡れば、これらを執り行った貴方の立場はより一層盤石となるでしょう、
……もちろん、その際には惜しみない助力を約束します」
「……はぁ、本当に逞しくなられた、婚約を結んだ当初の貴方とは
似ても似つかないほどに、……不本意ではありますが私も参加致しましょう」
折れる様に頭を抱え、渋々了承するシュバルツは溜息を吐く。
そして、決意を固めて顔を上げると死神と忌み嫌う彼に対し、こう言い放った。
「―――ヒース、お前とは忌まわしい縁がある、今回でその縁を断ち切ってやる」
「それは私も望むところだ、負けた方が間違いを認める、それでいいな?」
「構わない、精々大会まで腕を磨いていろ」
交わらない視線が、新たな目的の為に向けられる。
相容れぬ騎士と死神、見た目もその在り方も似つかない二人がプライドを賭け、剣の道を究める果し合いに臨もうとしていた―――。
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