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シルバ・アリウム、剣聖と成る
二十七話
しおりを挟む「……シュバルツ殿?どうかなさいましたか?」
「―――え、あぁ……いえ、報告書で理解はしていたつもりでしたが、
いざ本当に王女様のお姿を見て感極まってしまいました、失礼致しました」
「あなたほどの方でもそう思う事があるのですね、意外です……
これで私の存在が本物であると確信出来ましたか?」
「恐れ入ります……この短期間で随分と逞しくなられましたね、
―――正直、以前の様な少女であったのであれば、この会合は早々に見切りを
付けようかと考えておりましたが、それは杞憂のようでした」
合理的で賢い彼は既にシルバを見定めており、その彼をもって頷かせるほどの成長を遂げた王女は、堂々たる威光を放っていた。
「……して、事前の予定では護衛の者が一人付くとの話でしたが、
本日は一人でお越し頂いたのですか?」
「いえ、ずっといますよ?呼びましょうか?
―――ヒース、姿を現してください」
僅かな魔力の気配すら感じさせず、私の影から不気味に出でるとその死神は顕現する。
「―――ヒース・ライト、ここに」
「今日はまた随分と物騒な装備をしていますね、少し過剰では?」
「用心するに越したことは無いかと……それに、護衛の居場所をみすみす晒す軽率な主君
ですから、妥当な装備ではありませんか?」
「むむむ……確かにそうですけど、ちょっと厳しいなぁヒースは」
冗談交じりに会話を弾ませ、張り詰めていた空気が若干和む。
しかし、シュバルツだけは目を見開いて動揺しながらその光景を眺めていた。
「……これは、本当に……驚きました、まさかあの黒き刃で名を馳せた死神が
シルバ王女に仕えているとは……間違いでは無かったのですね」
「シュバルツ様の知る黒き刃とは、いったいどんな姿なのですか?」
「なに、とてもシンプルですよ、アリウム騎士団の限られた騎士が行使できる
暗殺部隊、汚れ仕事を全うし与えられた仕事をただこなすだけの機械、
それが私の抱く嘘偽りのない彼らの印象です」
「………」
沈黙するヒースは何も言わず、ただ拳を固く握って主に跪く。
「なるほど、その印象で言えばこの現状に驚くのも無理はないですね」
「―――御無礼を承知で申し上げると、王女様の傍に黒き刃がいると知った時点で
何かしらの考えがあってシルバ様に近付いたと確信しております、
それこそ、貴方様の力を利用して騎士団から独立するため……など」
「……ふむ、シュバルツ様は中々に思慮深い方なのですね、
その冷静な判断力をこれからも国のために使ってください」
間違い、ではない。
第三者から見れば、何の打算も無く王女である人間に近付くなど考えられない、それが素性の知れぬ組織の暗部ともなれば尚更である。
シュバルツは嫌味でも悪意でもなく、可能性の一つとして純粋な懸念を話した。
―――ただ、それだけの事、故にこの話はこれ以上も以下も無い。
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