上 下
24 / 102
シルバ・アリウム、剣聖と成る

二十三話

しおりを挟む

 「―――しかし、ミオは私の身分を知ってもあまり変わりませんね、
  他の職員や村の人は畏まってしまうのに」

 「いやいや、とても驚きましたし最初は気を遣いましたよ、
  ですけど……シルヴィア・ライトとしての貴方も今の貴方も同じです、
  自然と振る舞い方も戻ります」

 「その心遣いに救われていますよ、これからもよろしくお願いしますね」


 フタバ伯爵が武装制圧で村を訪れ、私は正体を明かして場を収めた。
 
 死亡したと思っていた王女がまさか生きているとは思わず、始めは困惑していた村の職員や住民達も王女に敬意を表した。

 だが、役人としての生き方も満更でもなかったシルバは、王女としての距離感を取られてしまい悩んでいたが、ミオは変わらずシルバと接してくれた。

 故に彼女は感謝する、王女としても同僚としてでもなく、一人の友人として。


 「ミオ、私は近々この領地の後任となるシュバルツ侯爵の城に行こうかと思います、
  この事をどう思いますか?貴方の素直な意見を聞きたいです」

 「どう、ですか……、国の指針にわたくし如きが何か言えるはずもありませんが、
  個人的には不安です、シルバ王女がここに来てから未だこの村を離れた事は
  ありません、ので……離れたら最後、もう二度と戻らないのではと不安になります」

 「あら、意外と可愛らしい事を言ってくれますね、少し嬉しいです」

 「もぉー……、素直な意見って言ったんですからからかわないでください、
  ―――それに、不安な理由はもう一つあります」

 「もう一つ?」

 「はい、それは至極単純です、役所の仕事が回らなくなります、
  いいですか?確かにシルバ王女がこの村に来てくださって様々な方面で村は
  発展しています、しかしッッ!!住人の要望書から隣国、隣村、取引先の商人から来る
  仕事の依頼は増えてばかりッ!!人手が足りないのですッッ!!」


 それについては自分自身でも申し訳ないと思っている。
 
 村の事業が順調に運んだのは良かったが、それらを執り行う人材が不足気味となっており個人の作業量が過剰となっている。

 幸いミオが優秀であるため村自体の運営は事足りているが、交易取引や隣国との商業取引が私とヒースさんに依存している現状はよろしくない。
 
 当面の課題でもある人材確保をミオも危惧しており、それについて言及する。


 「流石ミオ、やはりこの問題に気付いておりましたか……、
  実は予定しているシュバルツ侯爵への会合、それはこの問題の解決も兼ねています」

 「……と、いうと?」

 「会合は秘密裏に、私とヒースさんだけで赴く予定です、その会談で取り付ける
  内容の一つに、城及び街の商業関連の人材確保を約束させます」

 「―――これは、とても重要な話なのでは?」

 「もちろんですっ!だから今、ミオに話していますっ」

 「……信頼され過ぎるのも考え物ですね、重要な機密なんて知りたくなかったですよぉ」

 「まぁまぁ、そんな事言わずにこれからも励んでくださいね」


 悪戯な笑みをミオに向けると、彼女は困った顔で笑顔を向けてくれる。
 
 とても心地の良い気分に浸り、この関係性をありがたく思いながら歩を進めていると、感じ慣れた魔力の気配が近付く。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

処理中です...