18 / 102
シルバ・アリウム、剣聖と成る
十八話
しおりを挟む「な、なななッ……!?シル、バ王女だとぉッッッ!?」
「控えなさい下郎、もはや弁明の余地などありません、
貴方は正しき事を成そうとした人間を一方的に襲い、
あまつさせ証拠隠滅のために殺害しようとした……
どちらが悪でどちらが正義か、問うまでも無い」
「う、嘘だッ!?シルバ王女は確かに護送途中に死んだと聞いているッ!?
お、お前は王女の姿を模した偽物だぁッ!?早く殺せぇッ!!」
「―――ヒース」
「御意」
黒い死神は主の言葉を待ち侘び、迅速に行動する。
鎮圧は一瞬、いかに一級魔術師であろうと影から現れる死神の刃は止められず、魔術媒介である杖を叩き切る。
更に一撃、打撃を打ち込み三人の魔法使いを無力化させる。
「い、一体なんなんだッ!?貴様らはいったいッ……!?」
「……黒き刃、その姿を現しなさい」
刹那。
シルバの影から這い出る五つの人影。
それは彼女を守るように立ち並ぶとその姿を顕現させて主たるシルバに跪く。
『我ら黒き刃、ここに』
通常であれば禍々しい彼らは、シルバが指し示すその輝きによって血生臭さを脱ぎ払っていた。
アリウム騎士団の暗部、そのアサシン集団は過去の姿を脱ぎ去ってここに存在した。
「シルバ・アリウムは宣言しますッ!!
ここジニア村を拠点とし、このアリウム国を導くとッ……
ですので、どうかッ……どうか民の皆様ッ!!事情は必ずお話致します、
至らぬ点は多々ありますが、村の力を、皆様の力をお貸しくださいッ…」
「偽物風情がぁ……べらべらと―――」
誠実なその姿勢、そして溢れる気品と厳格なその雰囲気。
そんな彼女を尚偽物と呼び、都合の悪い話を遮った時、民は声を上げる。
『シルバ王女様ぁぁぁ!!!!ご無事でなによりですぞーーー!!!』
『俺達はシルバ王女様に、一生ついてくぞッ!!』
『……我々はシルバ王女に剣を向けていたのか、なんてことだ……』
響く声は村の人々と、武装した兵士たちの声。
彼女の宣言は聴いた者全ての心に伝わり、その存在を疑いようも無いものとした。
「―――フタバ伯爵、貴方の身柄を確保します」
「バカな事を言うな小娘ッ!?お前に何の権限があってそんな事をッ……
この我を……アリウム騎士団であるこの我をッ……!?」
「国に仕える身として、貴方の蛮行は許せません、
よってシルバ・アリウムの名のもとに拘束します」
「兵士共ッッ!?何をしとるッ……この小娘を、殺せッ!!殺せぇぇぇ!?」
もはやフタバの命に従う兵などおらず、兵は剣を下げて俯くだけ。
「えぇいッ!!役立たず共がぁぁッ!!」
乱心したフタバは馬を駆り出し抜刀する。
猛進する彼はシルバ目掛けて剣を振りかざす、それが無謀とも分からずに。
「―――っはッ!!」
「………ぇ?」
銀の王女は確かに無手だった。
武器を振るう事も叶わず、一方的に斬られるはずである。
そう、フタバは決めつけていた。
―――ドガシャッッ!!!!
しかし、一方的にやられたのはフタバ伯爵。
突進してきたその一瞬、体術を駆使して彼の雑な剣戟を捌くと馬上から吹き飛ばして甲冑ごと地に叩き落す。
「剣聖と呼ばれた父を持つ事の意味、その身に刻みましたか」
「あ、が……がが……」
痛みに、屈辱に、そして剣聖と呼ばれたその武人の力を垣間見て悶絶するフタバは、その恐ろしさに言葉を失う。
「これで、一件は落着ですね」
多少のイレギュラーはあったものの、ジニア村が抱える問題はこれで解決に向かうだろう、それにヒースさんが命令を破って表舞台に出たことも、結果的にはプラスに働くはず。
黒き刃の持つ効力、シルバ・アリウムの名が持つ権利、それらを駆使すれば今後の帝都へのアクションも取り易い。
―――最低限の準備は整った、ここからが私の第一歩。
失った王女としての権威、婚約破棄による立場の喪失、騎士団による謀殺未遂。
こんなものでは私は止まらない、止まれる訳が無い。
だって私は剣聖の娘、シルバ・アリウムなのだから。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる