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シルバ・アリウム、剣聖と成る
十六話
しおりを挟む「兵士一同に告ぐッッ!!お前たちはどんな大義があってここに来たッ!
真に国を想うのなら早々にここから立ち去れッ!!」
圧倒的な武を見せ付けられ、どよめきたつ兵士は狼狽する。
斬りかかろうにもヒースの腕に敵うはずも無く、彼らをその場に押し留まる。
と、その場を取り仕切る渦中の人物が現れ状況が変わる。
「なんじゃ、なんの騒ぎじゃこれは、逆賊は捕らえたのかえ?」
「……フタバ伯爵」
姿を現したのは逞しい立派な馬に乗ったアリウム騎士団が一人、フタバ伯爵。
その風貌は緩み切った大きなお腹をさらけ出し、騎士と呼ぶにはいささか不釣り合いな見た目となっていた。
「なんとっ……我が私兵にこのような無礼を働くとは、そこの者も捕えなければ
ならんの、逆賊であるシルヴィアとかいう娘と、そこな若造もひっ捕らえよ」
「―――お待ちください、フタバ伯爵……
わたくしシルヴィアが逆賊とは、ご説明ください」
「なにをぬけぬけと、我が城に送り付けたお前のこの書状……
反乱を煽る文言と、ありもしない事実を述べた事は到底許されん、
不穏分子は即座に取り除く、そのために兵を遣わせこの辺境の地に来たというのに
お前は罪を更に重ねた……どうしてくれようぞ?」
ここまでの武力行使に正当性を保たせるために、ありもしない嘘をよくもまぁペラペラと喋る。
小賢しい汚職を平然とやっていた時点で、ある程度頭が回ると思っていたが想像以上にどうしようもない。
こんな小悪党が名誉あるアリウム騎士団に所属しているという事実だけで、国の恥であり怒りが沸き立つ。
「……シルヴィア、命令さえあれば―――」
「不要です、ヒース……ここから先、何があっても手を出すことは許しません」
私の怒りを感じ取り、ヒースが刃を抜きかける。
しかし、それを戒めてフタバ伯爵と真っ向から向かい合う。
「フタバ領主殿、仰っている言葉の意味は分かりませんが、
私はこの国の為に尽力し励んできました、反乱を煽るなどと心外です、
―――それとも、私が送った書状に都合の悪い事でも書いてありましたか?」
「小娘ぇ……我に楯突くのか?」
「国の貢献と、領主様に対しての態度、これらに関係はありますか?
もっと建設的な対話をしたいものですね……、これではらちがあきません」
「ふぉっほっほッ……!!!ふざけた娘だッ!!
もはや言葉を語る術もない、兵士共ッ!!こやつを殺せッ!!」
下された号令。
それは狼狽していた兵士を鼓舞するには充分な一声であり、部隊がまとまってシルバを襲い始める。
「っ……シルヴィアッッ!!!」
手を出すことを禁じられているヒースは、苦悶の表情を浮かべてその情景を眺める。
そんな心配を他所に、シルバは微動だにせず動かず、僅かに一呼吸―――
息を、吸い込み一喝する。
『痴れ者がぁッッッ!!!!!』
空気が痺れる錯覚。
そう思わせる程の威圧感を放ち、兵士達を委縮させた。
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