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シルバ・アリウム、剣聖と成る
四話
しおりを挟む仮にも大陸を治めた一国の王女が、辺境の土地である場所への赴任。
実権の移譲と共にその存在も端へ追いやろうと、騎士団は動いていた。
「―――と、国境の軍事強化や交易を重視するため、この提案を受け入れて頂けますか」
すらすらと詭弁を並べて語り、この処遇の正当性を説明するシバ。
シルバも一度頷いてしまった以上、これを否定する事はできずに渋々受け入れた。
「……国境付近でのジニア村への赴任の件、承りました、
今後は村の発展とアリウム国の更なる繁栄を約束致します」
「それでこそ王女様である!がっはっは!」
「……ゴッツ殿、いささか口が過ぎますよ?仮にも王女様であります、
もう少し丁重にお話しなさい」
「おっと、これは失礼した、御無礼であったなシルバ王女!」
「―――いえ、お気になさらず」
一連の約束を取り決め、緩み切った気持ちで接するゴッツ。
対するシバはあくまで冷静、この会議が終わるまでその姿勢は崩さなかった。
「失礼、私からも一つよろしいか?」
すると、機を見計らって声を上げるは名門の生まれであるシュバルツ。
彼は若くしてその才を発揮し、齢二十にして名家の家督を継いだ。
―――文武両道、容姿端麗。
それらの言葉は彼のためにある、そう言える程の人物である。
「シュバルツ殿、如何いたした?」
ゴッツは視線を移し、彼を見据えて問いかける。
一呼吸、息を吸い込んで彼は言い切る。
「私と交わしているシルバ殿下との婚約についてですが、
今回のジニア村への赴任によって“破棄”させて貰いたい」
―――名門シュバルツ家当主から無慈悲に言い放たれた婚約破棄。
本来であれば守るべきはずのシルバを、彼は自身の立場を保全するため切り捨てた。
シルバはその言葉に何も言わず、ただただ俯く。
帝都からの追放、婚約者から告げられる約束の反故。
剣聖と呼ばれた国王アリウムの逝去によって、シルバの人生は大きく動き、ここから物語は動き出す。
これは、十六歳の女の子が剣聖と呼ばれるまでに至る物語。
戦災によって居場所を失いながらも、王の養子として育てられた彼女が剣の才とその人柄を活かして生きてゆく。
そう、これは剣聖王姫の始まりであった―――。
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