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シルバ・アリウム、剣聖と成る

三話

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 ―――今は亡き国王、剣聖アリウム国王は娘に説く。


 『シルバの剣は人を斬るにあらず、故に不殺の剣』


 それがどんな意味を持っていたのか、今ではその真意は分からず彼は没した。
 この言葉が、家臣団の団結を綻ばせるとは知らずに。


 「―――アリウム騎士団の考えは、わかりました……
  あなた方は私にどうして欲しいのですか?」

 「なに、我々の要求はただ一つ、国の実権を我々に委ねて頂きたい」

 「あなた方の傀儡になれとっ……それはっ!!」

 「必要なのは王女である肩書、政務や外交に貴方の力は必要ありません」


 もはやシルバ王女に対する姿勢は強硬であり、家臣の一人であるシバは淡々と己が野心を口にする。


 「はっはっはッ!シルバ王女、シバ殿の提案を受け入れられないのは理解できるが、
  ここは一つ大人になって頂きたい所存だ、かような細腕でいかに国を治める?」


 間髪入れずに割って入るは、武闘派で有名なアリウム騎士団が一人のゴッツ。
 彼もまたシルバの存在に疑問を抱き、王位継承に異を唱える有力騎士である。


 「私とて剣ばかり嗜んでいた訳ではありません、政をこなし民の暮らしを守っています、
  現に先の大戦で被害にあった地域の復興支援や、ここ帝都の治安改善策を執り行って
  おり、義父が亡き今もそれらを積極的にこなしていきます」

 「……なるほど、最低限の仕事はなさっていたようですな、
  しかし、それさえも王が居たからこそ出来た仕事だったのでは?」

 「然り、シルバ王女は王の偉大さを知らぬのです、
  貴方が行う政務などアリウム国王がいてこそのもの、
  それを今、お隠れになった王を前提として話されるのはいささか疑問です」


 もはや、どのような言葉でも騎士団を納得させる事は出来ない。

 自身の力不足、義父であった王の偉大さ、そして家臣の信頼。
 あらゆる要素が交錯して、ついに彼女は視線を下げてその意思を、

 ―――折って、しまった。

 (出来る、出来ずの問答ではなく、彼らは私をはじめから信用していない
  故にこの会議、そして私の処遇を決める為の場……か)

 決して、シルバに能力が無い訳ではない。
 
 だが戦によって居場所を失った孤児を、唐突に養子として受け入れた事実は変わらず、血筋と身分を重視する騎士団にとって到底受け入れられる事ではなかった。


 「―――わかりました、国の行方、騎士団にお任せ致します……
  ですがっ……ですがッ!!くれぐれも、天下泰平の世を乱さぬ様にお願い致します」


 苦渋の決断ではあるが、これが最良と想っての言葉。
 拳を固く握ってこみ上げる感情を必死で押し殺す。


 「王女様、貴方の英断感謝致します、
  ―――して、このままという訳にいきませんので、
  こちらから提案があります」

 「……聞きましょう」

 「では、恐れながらも……まず、シルバ王女にはある役割をこなして頂きたいのです、
  それは隣国であるバーベナ国、その国境付近であるジニア村の統治と発展を
  お願いして頂きたい、つきましては―――」


 平然と告げるこの提案は、事実上帝都からの追放であった。

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