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邂逅
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しおりを挟む「あい、ちょっと出かけようぜ」
「いきなりですね、何かあるんですか」
「ごはん食べに行こ、あと買い物」
「……なぜ」
「お腹すいただろ?それに必要な物もついでに買いに行こうぜ」
「―――ですが……」
「ほら、早くいこうぜ」
何故かよそよそしいあいの手を引き、外に出る。
生活用品や雑貨、飲食等を兼ね備える駅前のデパートへ赴くと、あいは気乗りしない声色で俺に話しかける。
「……ここで、買い物をするんですか」
「そうだけど、嫌か?」
「いえ……そういう訳では…」
やはりどこか様子のおかしい彼女は、そのしっかりとした性格からは考えられないほどおどおどしている。
なんなら家を出てから繋いでいた手は離されることは無く、道中悪態をつかれながらもしっかりと握られていた。
「―――もしかして、怖いのか?」
「え……」
「いや、人混みとか嫌なのかなって……そんな気がした」
「なっ……!!怖いなんてっ…そんな訳ないじゃないですか!!」
図星だったのか、似合わない狼狽ぶりを晒している。
しかし、人混みを苦手とする人間なんて沢山いるし、年相応に嫌な事がある事実に俺は安心すら覚えていた。
「まぁいいや、なるべく人が少ないお店回るから許してくれ」
「べ、別に……どこでも行っていいですけど」
「そうか?なら適当にファミレスから行こうぜ、お腹減っちまったよ」
「子供ですか、貴方は……」
冷たい目線を向けられたが気にせず向かう。
軽やかな足取りで歩いていると、あいとの距離が離れていた事に気付く。
どうやら無意識のうちに握っていた手を離していたらしく、先行して歩いていた。
「―――あぁ、迷子になっちまうと面倒だな、ほら」
「え……けど…」
「なんだ、人前だと恥ずかしいのか?
気にすんなよ、俺の方が色々と恥ずかしい思いしてきた」
「それはそれで嫌ですけど……まぁ、わかりました」
渋々と繋いでくれた手を握り、今度はゆっくりと歩き出す。
子供とはこんなにも小さく、気難しいのだと再認識する。
ここからの半年、本当に上手く生活できるか不安しかなかった。
少し歩いて、辿り着いた近場のファミレスで席に着く二人。
「さぁってと……あいは何食べる?なんでも頼んでいいぞ」
「あんまり高くないものなら、なんでもいいです……」
「なんだそれ、ここで頼める物なんて限られてんだから、
遠慮なく好きな物頼めばいいんだよ、ほら、メニュー」
「けど……」
「これなんて美味しそうだぞ、デザートもある」
終始畏まり、遠慮しがちなあい。
その理由もなんとなく理解も出来るが、遠慮は欲しくはない。
恐らく、孤児院での生活から外食もあまりとらず、節制した生活を送る事が常だったのであろう。
俺にも、似たような経験があるから気持ちを察せる。
だが、それを理由に今までと同じ生活を送るのは違う。
彼女が持つ可能性、詐欺師に騙されないその体質を解明する為に、俺とこの子は一緒に過ごしてゆくのだから。
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