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邂逅
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しおりを挟む「なんだよ、思ったけど、なんだ?」
「―――それがね、何も無かったんだ、脳の反応も能力による精神作用も」
「は?」
「脳波は詐欺師の様な特徴、だが、その力は見られず詐欺師の力に影響されない、
これは、もしかしたらだけど……僕はその子を特殊な体質だと仮定していてね、
言うなれば……そう“騙されない体質”とでも言っておこうか」
「おいおい……それが本当なら秘匿され続けた詐欺師の意味が無くなるぞ?
能力が通用しなきゃ詐欺師もただの人だ、そうだろ?」
この話が本当なら、詐欺師の天敵が存在する。
彼女の体質を研究し、それが解明されれば詐欺師に対して有効な手段を得られる。
もはや俺が抱えられる範疇を超えた案件であった。
「ようくんの言う通り、彼女の存在が裏社会のバランスをも崩しかねない、
だからこそ、慎重に事を運びたいし内密にその子の検査を進めたい」
「……それがなんで、俺に仕事を依頼するに繋がるんだ?」
「やだなぁ~ようくんっ、君の力を忘れた訳じゃないよね?
実際、先程のヤク子くんだってその力に充てられての行動だ、
だからこそ君は彼女を強く叱らなかった、違うかい?」
「うっせぇ……あれは怒る気もしなかっただけだ」
「素直じゃないねー、まぁ…そこも可愛いポイントだけど」
本当に嫌になる。
俺の力、それは勿論、詐欺師としての力。
「……精神科医として、詐欺師と呼ばれる人間の研究者として、
君がその力を制御し、罪も犯さずに平和に生きている事を感謝しているよ、
その気になれば、君は関わる人間全てを“魅了”して利用する事が出来る、
いわば……カリスマ性の塊みたいな人間なのだから」
―――魅了。
どうやら俺には、そんな力があるらしい。
今でこそ力を制御して扱う事が出来るが、普通に生きていても能力は微量ながら発動しており、俺は人から嫌われるという事が無かった。
ヤク子も、茜も、異性として俺を見たとき魅力的な異性に見えている。
さっきみたいに迫られる事もあれば、目の前の男の様に同性であっても求められる程に、その力は発揮してしまう。
まぁ、織田の場合は潜在的な性の趣向が男にあっただけで、同性の場合の好意は大概が敬意とか尊敬とかである。
「で、詐欺師として俺の力をどう利用したいんだ」
「一人の少女と、一緒に生活してみないか?」
冗談か、聞き間違えたかな。
「おい、もう一度言ってみろ」
「だから、その女の子と半年ぐらい一緒に過ごして欲しい、
期間中に君の能力の影響を受けなければ彼女の体質は本物だし、
幸か不幸か、その子孤児だし引き取るのも丁度いい、
前金で支払う五百万も、必要経費と生活費として受け取って」
「……お前さ、少し考えれば分かるだろ?俺がガキの面倒見れると思うか?
なんなら、子供にとって俺は害でしかないと自負できるぞ?」
「うーん……そうかな、ようくんは良い父親になれると思うけど」
「テメェの感想なんかどうでもいいんだよ!!とにかく断る、
子供の面倒もそうだが、そいつの存在は俺には大きすぎる」
面倒事に巻き込まれない、それを第一として部屋を出ようとした。
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