艱難辛苦の戦巫女~全てを撃滅せし無双の少年は、今大厄を討つ~

作間 直矢 

文字の大きさ
上 下
74 / 79
最終決戦編

七話

しおりを挟む

 最強の二人が最終決戦を始める時、大厄の襲撃に対応する水島は逼迫していた。

 「せやぁッ!!」

 その格闘術を駆使して苦難をなぎ倒す。
 しかし、巫女を守りながら戦う彼は徐々に押され、戦線は後退して苦戦する。

 大厄撃破者といえど、苦難を連続で相手にするのは厳しく、体力と気力は摩耗する。
 惨苦以上の大厄が出現していない為、辛うじて対処できてはいるが、その惨苦が顕現するのも時間の問題、水島は焦りを伴って戦う。

 「―――このままではッ…」

 四体目の苦難を討ち滅ぼし、拳を振り抜いて仕切り直す。

 すると、水島の周りを囲むように結界が張られ、そのいずれにも惨苦が顕現しようと、禍々しい蒼き炎を纏った腕が伸び始める。

 「ここまでか……」

 善戦したものの、三体の惨苦には為す術もなく、彼は諦めて構えを解く。

 ―――その瞬間であった。

 ドンッッッ………!!!

 突如飛来する仰々しい巫女装束を纏った少女が二人、――神威の巫女である。

 「――天草…芹、菘ッ!?」

 守る様に惨苦を大棍棒で押しつぶす菘、そして薙刀で一刀両断する芹。
 
 彼女達は本部の巫女との抗争後、大厄の出現を察知するとその掃討に回っていた。
 それは本来の巫女のお務め、人を守る役目を全うするため。

 「どうして、君達がッ…!?」
 「あぁん…?あんた大厄撃破者の……確か――」
 「水島務、さん、でしたね?……まさか負傷した巫女の救助をして下さっていたのですか?……感謝致します」
 「篝火の目的は本部の壊滅ではないのかっ…どうしてこんな…」

 二人の美しき巫女に問う水島は、状況を呑みこもうとする。

 「まぁ…説明してやってもいいが、――それより後ろッ!!」

 菘はその大棍棒を変形させ、鉄扇を展開しては水島の顔を紙一重で逸らして後ろの惨苦に打撃を叩きこむ。

 「だぁッ!!」
 「菘ッ!!」

 タイミングを合わせて追撃する芹は、惨苦の頭を跳ね飛ばし、その炎を噴出させる。
 顕現した三体の惨苦は、天草姉妹によって一瞬で殲滅され、その姿を消す。

 「―――とりあえず感謝する、だが、君達の目的が不明瞭である限り信用はできん」
 「構いません、ですが、――私達の邪魔をするのであれば容赦はしませんよ?」

 ――空気が変わる、彼女達は巫女の在り方を変えようと戦い、そのために行動している。

 洋助に触発され、人命を尊重した戦いを重視していたが、その目的を阻む者がいればその限りではない、故に殺気が漂う。

 しかし、水島もその真意を汲み取ると脱力し、敵意を無くす。

 「理由はどうあれ、今助けて貰ったのは事実だ、それを仇で返すつもりはない、……ただ、篝火は、赤原君は何をするつもりなんだ…」
 「目的は単純だ、朧を斬るッ!そのためにうちら篝火は本部の巫女を表に出したッ!……だが…」
 「そこに大厄が出現するまでは予想できませんでした、故に一時的に本部の巫女の交戦を中断し、対処に回っております」

 二人の説明を聞き、この戦況に納得する水島。
 だが、朧の殺害はそれこそ大罪であり、世界の均衡が壊れる程の大事件である。

 計画の恐ろしさに冷や汗を流し、彼もまた決断する。

 「それは……赤原君も望んだ事なのか?」
 「……あいつの理由はわからない、だが、あいつもあいつなりの目的があって協力している、それは事実だ」
 「そうか―――」

 誰よりも優しく、常に人の事を考える彼が、漠然と朧に挑むはずはない。
 洋助の選択を信じ、水島もまた彼が目指す未来に希望を託す。

 「――ならば、私達機動部隊も君たちに加勢しよう、だだし、命を奪う事は許さん」
 
 機動部隊隊長である水島の言葉は、姉妹を少しだけ感心させる。

 「へぇー…案外話がわかるじゃねーか、水島さん」
 「……であれば、機動部隊には戦巫女達の救助と状況の説明をお願い致します、どのみち、朧のいない本部の統制はいまや機能していないはずです、貴方が指揮を執って事態を収拾してください」
 「君達はどうする?」
 「私達は依然として大厄を殲滅します、それに……洋助さんに万が一の事があれば命を投げ打ってでも助力するつもりですから……」
 「……わかった、君達を信用しよう」

 二人の覚悟を垣間見て、彼は振り返って救護班の車両に向かう。

 それぞれが出来ることを胸に、蒼き炎が舞い散る戦場を、巫女と英雄は駆けて往くのであった――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...