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最終決戦編
六話
しおりを挟む「――――っう…がっ…」
大厄の炎に蝕まれ、その苦痛と絶望が全身に駆け巡る。
その呪詛が右肩から手首まで浸食し、蒼き炎を漏れ出しながら歩く洋助は、大厄対策本部を目指して突き進む。
「はぁッ……はぁッ…」
息を切らして肩で呼吸をする。
呪いは体と精神、二つを汚して洋助を苦しめる。
そして、彼の姿を捉えた本部の巫女は、命令に従って大厄として打ち滅ぼそうと出向く。
しかし、それを阻止する篝火の巫女が交戦に入り戦況は洋助を中心に激化する。
「……ぐあっ…ああぁぁ!!」
突如、洋助の身体が燃え盛る。
焔に焼かれた部分を中心に、その身体の機能を補う様に武具甲冑が構成される。
――それはまさに、艱難辛苦の大厄であった。
もはや人間の姿とはかけ離れ、その精神性も危ぶまれる。
覚束ない足取りで歩き、なんとか本部まで到達した洋助、それを待ち受ける人影在り。
「―――よくぞ来た、洋助」
「――おぼ、ろ……」
静まり返った本部は、その人員が出払った事を意味する。
その本部の広い敷地、中庭で桜花紫電を握って佇む巫女―――朧。
「今や本部の巫女はこの渦中に巻き込まれ責務を果たせず、大厄の侵攻を好きにさせておる……、これがお主の望んだ未来か?洋助?」
「――違うっ…だが、この結果も俺は受け入れるっ…」
「綺麗事を…もはや言い訳もさせん…再び切り伏せて進ぜよう」
雷が轟き、地を這う電撃が足元を滑る。
「俺はっ…大切な人を失わなくて済む世界を作りたいっ…例えそれが綺麗事の理想論でもっ!俺は最後までそれを貫きたい!」
「その理想がッ…既に何人もの犠牲と不幸を撒き散らしておるのじゃッ!!例え手を汚してでも多くの民を救えるのであればっ!!それらを実行し維持する、それこそが恒久的平和に必要なことじゃッ!!」
激昂する朧は、紫電を放ってその怒りを表す。
ぶつかり合う正義と正義は、武による決着でしか収まらない。
「神力の無い世界を恐れ、新しき世を拒む事こそが間違いなんだッ!」
「今、この日ノ本こそが新しき世でありッ!安寧となる国を築ける時代なのだッ!」
噛み合わぬ価値観は、洋助に刀を抜かせて構えさせる。
その紅葉の刀身を流し見た朧は、口角を吊り上げて語る。
「―――ほぅ…その刀は宗一郎の得物か、……なるほど、奴もお主に手を貸したか」
「そうだ、例え俺の選択が間違っていても、後悔しない様にこれを授けてくれた」
「相も変わらず甘い男じゃ……、いいじゃろう、その甘ったれた想いごと叩き斬るッ!」
様々な想いを背負って戦う洋助。
様々な歴史を背負って戦う朧。
両者の刀はゆっくりと互いを捉え、今、最強の二人が二度目となる戦を始めた。
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