73 / 79
最終決戦編
六話
しおりを挟む「――――っう…がっ…」
大厄の炎に蝕まれ、その苦痛と絶望が全身に駆け巡る。
その呪詛が右肩から手首まで浸食し、蒼き炎を漏れ出しながら歩く洋助は、大厄対策本部を目指して突き進む。
「はぁッ……はぁッ…」
息を切らして肩で呼吸をする。
呪いは体と精神、二つを汚して洋助を苦しめる。
そして、彼の姿を捉えた本部の巫女は、命令に従って大厄として打ち滅ぼそうと出向く。
しかし、それを阻止する篝火の巫女が交戦に入り戦況は洋助を中心に激化する。
「……ぐあっ…ああぁぁ!!」
突如、洋助の身体が燃え盛る。
焔に焼かれた部分を中心に、その身体の機能を補う様に武具甲冑が構成される。
――それはまさに、艱難辛苦の大厄であった。
もはや人間の姿とはかけ離れ、その精神性も危ぶまれる。
覚束ない足取りで歩き、なんとか本部まで到達した洋助、それを待ち受ける人影在り。
「―――よくぞ来た、洋助」
「――おぼ、ろ……」
静まり返った本部は、その人員が出払った事を意味する。
その本部の広い敷地、中庭で桜花紫電を握って佇む巫女―――朧。
「今や本部の巫女はこの渦中に巻き込まれ責務を果たせず、大厄の侵攻を好きにさせておる……、これがお主の望んだ未来か?洋助?」
「――違うっ…だが、この結果も俺は受け入れるっ…」
「綺麗事を…もはや言い訳もさせん…再び切り伏せて進ぜよう」
雷が轟き、地を這う電撃が足元を滑る。
「俺はっ…大切な人を失わなくて済む世界を作りたいっ…例えそれが綺麗事の理想論でもっ!俺は最後までそれを貫きたい!」
「その理想がッ…既に何人もの犠牲と不幸を撒き散らしておるのじゃッ!!例え手を汚してでも多くの民を救えるのであればっ!!それらを実行し維持する、それこそが恒久的平和に必要なことじゃッ!!」
激昂する朧は、紫電を放ってその怒りを表す。
ぶつかり合う正義と正義は、武による決着でしか収まらない。
「神力の無い世界を恐れ、新しき世を拒む事こそが間違いなんだッ!」
「今、この日ノ本こそが新しき世でありッ!安寧となる国を築ける時代なのだッ!」
噛み合わぬ価値観は、洋助に刀を抜かせて構えさせる。
その紅葉の刀身を流し見た朧は、口角を吊り上げて語る。
「―――ほぅ…その刀は宗一郎の得物か、……なるほど、奴もお主に手を貸したか」
「そうだ、例え俺の選択が間違っていても、後悔しない様にこれを授けてくれた」
「相も変わらず甘い男じゃ……、いいじゃろう、その甘ったれた想いごと叩き斬るッ!」
様々な想いを背負って戦う洋助。
様々な歴史を背負って戦う朧。
両者の刀はゆっくりと互いを捉え、今、最強の二人が二度目となる戦を始めた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。
味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。
十分以上に勝算がある。と思っていたが、
「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」
と完膚なきまでに振られた俺。
失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。
彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。
そして、
「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」
と、告白をされ、抱きしめられる。
突然の出来事に困惑する俺。
そんな俺を追撃するように、
「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」
「………………凛音、なんでここに」
その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる