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最終決戦編

五話

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 治療の施しようが無い彼の身体を抱え、水島は救護班の車両に乗せる。

 「――死ぬなッ…赤原君ッ!!」

 ぐったりとする洋助は、蒼い炎の揺らめきが身体を侵して呻く。
 その様子は恐ろしくも痛々しく、彼を見る機動部隊は不安の眼差しを向ける。

 「……彼のその姿は間違いなく大厄です、ですが――」
 「ああ、その心は人であり、それを守る必要がある」

 せめて痛みを和らげようと、その焼け爛れた身体に濡れたタオルを当てて処置する隊員は、目を細めて語る。

 「まだ若いのに、…なぜこんな仕打ちを彼は受けなければならないんでしょうか…、私はね隊長、巫女の少女達に守られるのも、こんな青年に全てを背負わせるのも酷く心が痛む、……だから隊長、貴方の行動に私は感謝しています」

 二児の父である隊員は、この現実を良しとせず水島に従う。

 「私も、巫女を取り巻く環境には常々疑問に思う部分がある、今回の件で何か変わればいいが…」

 厳しい顔つきで話すと、本部に戻る車両が急に止まる。
 その様子はおかしく、水嶋は身を乗り出して運転手に確認を取る。

 「――どうしたッ!?」
 「すみませんっ…ただ、本部に向かう途中の道が…」
 「何が起きている…」

 窓を覗くと、道が抉れて舗装は途絶えていた。
 その原因は巫女同士の戦闘であり、道端には怪我を負い、血を流す巫女が倒れている。

 「秋田さんッ!?急いで彼女達の保護をお願いしますッ!」

 水島は人命を優先するため、負傷した巫女の救出に入る。

 「なぜこんな…、篝火との抗争か…?」

 本部から出動している巫女に手を貸し、気を失っている彼女達を救護班の車両に移す。
 と、二人目の負傷者を移送しているその時であった。

 「隊長ッ!大変ですッ、赤原さんがッ…」
 「――どうした、なにがあったッ!?」
 「それが…、急に目が覚めたと思ったら本部の方向へ飛び去っていき…」
 「なんだとっ…!?」

 先ほどまで寝ていた彼はそこにおらず、掛けていたタオルを散らして消え去っていた。

 「っく…、あの体で一体どこへ…」
 「どうしますかっ…隊長ッ…」
 「とにかく負傷した巫女達を保護するッ、その後赤原君を捜索するっ!」

 抱えた巫女をそっと下ろすと、止血して応急処置を施す水島。
 幸い重傷を負った巫女はおらず、刀傷や擦り傷等がほとんどであった。

 ―――ふと、水島は思う。

 大厄となった洋助に対抗し、離反した夜叉巫女部隊。
 主力部隊となっていた特殊遊撃部隊の不在。
 そして、武装組織篝火の機を見計らった強襲。

 この事態に対応する大厄対策本部は、今や手薄となり大厄に対する対抗手段を持たない。

 「――――まずい、ぞ…」
 「……え?」

 故に、恐怖する。
 万が一、この状況に大厄が現れる事があれば、それは―――。

 ―――ガシャァァン!!

 その予想を肯定するが如く響く破壊音。
 
 建物を破壊し、顕現するは蒼き大厄。

 「……まさか、この状況で大厄の出現だとッ!?」
 「隊長ッ!苦難がこちらへ向かってきますッ!!」

 巫女の救出を優先していた彼らを襲う大厄。
 人と人が争い、状況が混沌に陥る中、それを掻き混ぜる様に大厄が出現する。
 
 絶体絶命の水島は、大厄撃破者として、その務めを果たす――。
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