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撃滅の夜叉兵編

十一話

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 防衛のためバリケードが敷かれたガラスを打ち破り、二人の夜叉は突撃する。

 「だぁッ!!」
 「はッ」

 外での戦闘は神威の巫女と夜叉巫女による戦闘が行われ、屋内では銃を持った神力を持たない戦闘員が戦線を張っていた。
 しかし、二人の修羅を止める程の武力など無く、紙切れの様に押し倒されては突破されていく。

 「――巫女でなければこんなもんか、…これぐらい弱ければ手加減もしやすいわね」
 「そうですね、余計な血を流すのも忍びないですし」

 床で転がる戦闘員は、皆致命傷を貰いつつも命には別条が無い、せめてもの慈悲である。

 その後も弾幕の張られた通路や室内を猛進して、赤城のいるであろうフロアまで向かう。
 途中、天井がガラス張りの見通しの良い広間に出ると、二人の脚はぴたりと止まる。

 「――来ます、灯さん」
 「わかってる、狙うならここしかない」

 外の奇襲で確認した事、それは天草姉妹が未だ現れていない事実。
 それを加味し、襲撃を狙うとすれば空間の広いここ、故に脚を止め構える。

 ――瞬間、四方の壁が爆発し、外壁や破片が砕け散る。

 「ッぐ…!?」

 壁内に爆薬が仕込まれており、少し近づいた瞬間を見計らって爆発した。
 視界と聴覚が一瞬麻痺し、二人は目を伏して粉塵を払いのける、と――。

 バリィンッ!!

 天井のガラスが破れ、上から舞い降りるは天草菘。

 「突貫だぜッ!!」

 携えるは特殊金属由来の形状が妙な大棍棒、それを洋助目掛けて振りかざし、地面を穿ち、破壊する。

 「菘ッ…!?」

 なんとか軌道を捉えて躱し、大振りの棍棒は落下の勢いで床を粉砕する。
 その破壊力は爆発で発生した粉塵を薙ぎ払い、視界をクリアにさせる。

 ――その時である。

 「あれを躱しますか、…流石です」

 爆破された壁、その奥から閃光と化して斬りかかる天草芹。
 その得物も特殊金属由来で作られた薙刀であり、その長さは自身の身長をゆうに超える。

 「芹さん…かッ!?」

 集中的な洋助への奇襲、それは先の戦いで身をもって知った強さ故から。
 しかし、その全てを寸前でいなされる、が、体勢の崩れた彼を二人掛かりで襲い掛かる。

 「洋助ッ!!」

 そこに助太刀するは灯、芹の薙刀を弾き仕切り直させる。
 洋助も棍棒を躱して灯を背に仕切り直す。

 「―――ここは私に任せて洋助、貴方は赤城のところへ」
 「…何を、言っているんですか…、見捨ててはいけません」
 「この作戦の目標は彼よ、今逃げられたら後が無い、さぁ、早く」
 「――ですが…」

 すると、洋助は背中を軽く叩かれる。

 「大丈夫、いざとなれば逃げるし安心して洋助」
 「―――っ、…わかりました」

 灯の判断は組織員として正しい、だが個人の考えとして納得できない。
 それでも、赤城の目的を阻止しなければいけない一心で洋助はその場から離脱する。

 「行かせるかッ!!」
 「ッたぁ!!」

 横降りの棍棒を対人用の捕縛ワイヤーでからめとる灯は、洋助の離脱を援護する。

 「させません」

 薙刀を持ち替えて、芹は動き出すが止めるように銃声が鳴り響く。

 「あんたらの相手はあたしよ、余所見したら死ぬよ?」

 芹に狙いを定めて銃弾を放つ灯は、天草姉妹を挑発する様な笑みで言い切る。
 動きを止めた天草姉妹、その隙に施設奥へと駆け込む彼の姿は見えなくなる。

 「はぁ…困りましたね菘?」
 「まったくだ、うちらも無益な殺生がしたいわけじゃねぇ」

 わざとらしく頭を抱え、困り果てる顔で灯を睨む芹。

 「あんたらは一体何がしたいわけ?迷惑なのよね、姉妹揃ってバカだと」
 「愚かな巫女にはこの大義がわかりません、語るだけ無駄です」
 「――あ、そう…ほんっと、神威の巫女って可愛くないわね」

 距離を保つ両者の空気は最悪で、今にも殺し合いが始まる寸前。
 それを呑みこみ、菘は得物に巻き付くワイヤーを強引にはち切る。

 「お互い御託はいいだろ?始めようぜ、特殊遊撃部隊の桐島灯?」
 「そうね、これ以上は時間の無駄」

 殺気が交わり、空気が凍てつく。
 三者の瞳に青い神力が宿り、その輝きが揺らめくと同時に殺し合いが始まった。
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