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撃滅の夜叉兵編
七話
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赤城幸助の護送任務失敗から数日、その責任の所在を確かめるよりも重い事実が本部内で動き出す。
「神威の巫女による、裏切り…」
「はぁー…こっちは艱難辛苦の被害がようやく落ち着いてきたって言うのに、ほんっと、ろくな事しないわねアイツら」
ダンっ、と飲んでいたお茶を強く置き遺憾を示す灯。
なだめようと口を開こうとする洋助だったが、天草姉妹の件も思い出し言葉が詰まる。
「そもそも、数十年前に解体された篝火って組織が、なんで今頃暗躍してるのよ」
「それについても現在調査中って聞いています、……いずれにせよ、俺達は指示があるまで動けません…」
「この組織大丈夫かしら、不安だわ」
悪態をつき、ガラの悪い体勢でのけぞる灯。
そこに、焔が書類を抱えて戻ってくる。
「お待たせ致しました、これが今回預かった書類と、話の内容です」
「お、焔おかえり、会議どうだった?」
「――とりあえず資料に目を通して頂ければ、話はそれからです」
各部署の代表巫女、そして戦巫女各班代表、と遊撃隊代表。
その者達で行われた緊急会議から帰ってきた焔は、真剣な眼差しで二人を見る。
焔の雰囲気を察し、怒り気味だった灯も姿勢を正して書類を手に取る。
洋助も渡された書類を受け取ると、それを黙々と読む。
「――なに、これ?ふざけんてんの?」
「これは一体ッ…」
記載された内容を読み進めると、二人は驚愕する。
そこに書かれた内容には、事実上の遊撃部隊解散が記されていた。
「納得できないッ!!なんで焔が神威の巫女に異動なのよっ!!」
「……神威の巫女達の離反は計七名…内捕縛した巫女は一名のみ、その穴埋めとして適正の高い巫女が選出されただけ、私はその中の一人という訳です…」
「そんな…」
水瀬焔の遊撃部隊異動、そして通達はそれだけに留まらない。
「それに何ッ!?私が新設される部隊へ異動って…!?洋助はどうなるの!!」
「それについても説明はありました、特殊遊撃部隊は実質洋助さんの所属を表すだけの看板となりますが、その実力から一人での行動も問題ないと判断されました」
「問題大ありよッ!こんな危なっかしい奴一人に出来ない、ちょっと抗議してくるッ!」
「――この決定は朧様の意思でもあります」
「なッ!?」
朧の名が出ると、灯の動きは止まる。
巫女にとって朧は法であり、絶対的な力と権力の象徴。
故に灯は口を閉じ、拳を握って留まる、それほどに朧の影響力は大きい。
「――仕方ない、事なんですよ、きっと…」
洋助は目を閉じ、諦めて言い切る。
それは、先の任務での自身の甘さを思い知り、犠牲になった機動部隊への贖罪。
自分のやり方は本当に正しいのか、それすら分からずに朧のやり方を否定する事なんて出来ない、その意思の表れである。
「けどッ…それでも…あたしは…」
彼の身を案じ食い下がる灯。
過去に自信を庇い、死の淵に追いやった事実からくる不安。
「灯さん、焔さん――」
ふと、洋助は立ち上がって二人を見据える。
不安に駆られる灯と、灯と離ればなれになる焔を心配させぬ為に言い放つ。
「俺は、大丈夫です、無理はしませんし雪だっています、ですから、二人にしか出来ない務めを果たしてください」
「洋助さん…随分頼もしくなられましたね…」
「ばか洋助…何かあったらすぐ報告するのよッ!!」
「――ッはい!」
元気よく返事をして、不安を断ち切る。
その返事と表情を見て、彼女らも安心して諦める。
洋助なら全てを上手く成す、そう信じて今回の騒動を飲み込むのであった。
「神威の巫女による、裏切り…」
「はぁー…こっちは艱難辛苦の被害がようやく落ち着いてきたって言うのに、ほんっと、ろくな事しないわねアイツら」
ダンっ、と飲んでいたお茶を強く置き遺憾を示す灯。
なだめようと口を開こうとする洋助だったが、天草姉妹の件も思い出し言葉が詰まる。
「そもそも、数十年前に解体された篝火って組織が、なんで今頃暗躍してるのよ」
「それについても現在調査中って聞いています、……いずれにせよ、俺達は指示があるまで動けません…」
「この組織大丈夫かしら、不安だわ」
悪態をつき、ガラの悪い体勢でのけぞる灯。
そこに、焔が書類を抱えて戻ってくる。
「お待たせ致しました、これが今回預かった書類と、話の内容です」
「お、焔おかえり、会議どうだった?」
「――とりあえず資料に目を通して頂ければ、話はそれからです」
各部署の代表巫女、そして戦巫女各班代表、と遊撃隊代表。
その者達で行われた緊急会議から帰ってきた焔は、真剣な眼差しで二人を見る。
焔の雰囲気を察し、怒り気味だった灯も姿勢を正して書類を手に取る。
洋助も渡された書類を受け取ると、それを黙々と読む。
「――なに、これ?ふざけんてんの?」
「これは一体ッ…」
記載された内容を読み進めると、二人は驚愕する。
そこに書かれた内容には、事実上の遊撃部隊解散が記されていた。
「納得できないッ!!なんで焔が神威の巫女に異動なのよっ!!」
「……神威の巫女達の離反は計七名…内捕縛した巫女は一名のみ、その穴埋めとして適正の高い巫女が選出されただけ、私はその中の一人という訳です…」
「そんな…」
水瀬焔の遊撃部隊異動、そして通達はそれだけに留まらない。
「それに何ッ!?私が新設される部隊へ異動って…!?洋助はどうなるの!!」
「それについても説明はありました、特殊遊撃部隊は実質洋助さんの所属を表すだけの看板となりますが、その実力から一人での行動も問題ないと判断されました」
「問題大ありよッ!こんな危なっかしい奴一人に出来ない、ちょっと抗議してくるッ!」
「――この決定は朧様の意思でもあります」
「なッ!?」
朧の名が出ると、灯の動きは止まる。
巫女にとって朧は法であり、絶対的な力と権力の象徴。
故に灯は口を閉じ、拳を握って留まる、それほどに朧の影響力は大きい。
「――仕方ない、事なんですよ、きっと…」
洋助は目を閉じ、諦めて言い切る。
それは、先の任務での自身の甘さを思い知り、犠牲になった機動部隊への贖罪。
自分のやり方は本当に正しいのか、それすら分からずに朧のやり方を否定する事なんて出来ない、その意思の表れである。
「けどッ…それでも…あたしは…」
彼の身を案じ食い下がる灯。
過去に自信を庇い、死の淵に追いやった事実からくる不安。
「灯さん、焔さん――」
ふと、洋助は立ち上がって二人を見据える。
不安に駆られる灯と、灯と離ればなれになる焔を心配させぬ為に言い放つ。
「俺は、大丈夫です、無理はしませんし雪だっています、ですから、二人にしか出来ない務めを果たしてください」
「洋助さん…随分頼もしくなられましたね…」
「ばか洋助…何かあったらすぐ報告するのよッ!!」
「――ッはい!」
元気よく返事をして、不安を断ち切る。
その返事と表情を見て、彼女らも安心して諦める。
洋助なら全てを上手く成す、そう信じて今回の騒動を飲み込むのであった。
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