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撃滅の夜叉兵編
六話
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天草姉妹を圧倒し、詰め寄り投降を促す洋助。
最悪怪我をさせてでも連れ戻す決意をした彼は、体術を構える。
「そこまでだ、この場は退け」
「―――なッ…」
その時、堂々とその姿を現したのは、赤城幸助。
「赤城さんっ…!」
「赤城様ッ!?」
天草姉妹は彼を見て反応する、それを見る限り面識はあり篝火と共謀した事実が伺える。
「何故お前が…水島さんはどうしたッ!?」
「彼を救いたければここは退け、今頃血を流して寝てるだろうよ」
「なん、だと…」
実際、彼は拘束されていた車両を抜け出しここにいる。
その事を考えれば水島が危機的な状況であるのも事実、選択が、迫られる。
その気になればこの場にいる全員を斬れる程の実力を持ちながら、それでも斬らない選択をした洋助、その状況は一変し、抱えた迷いが再び揺れ動く。
「――どうした?早く向かわなければ水島さんが死ぬぞ?」
「う、うるさいッ!!お前たちを捕縛してからでも遅くないっ…」
「なるほど、あくまで抵抗するか、なら…仕方ない」
赤城は洋助の目の前をずけずけと通り過ぎ、その刀を芹の首に当てる。
「あ、赤城様ッ…?」
「何をしているッ…お前…!?」
――あろうことか仲間であるはずの天草芹を殺そうする。
「もう一度だけ言おう、ここから去れ、でなければこいつらを殺す」
「馬鹿なッ…何を言って…」
「―――是非も無し」
躊躇いすらなくその刀は振り落とされる、それをスローモーションで捉える洋助はついに、――折れる。
「待てッ…!!わかった…従う…だから彼女達に手を加えるな」
「――そうか、良い心がけだ」
後ずさり、少しずつ距離を取る。
常に人の命を優先し、守る事だけを考えてきた洋助が初めて味わう敗北。
それは、感情の無い大厄のみと戦ってきた洋助の強さであり弱み、その弱みを見抜かれ赤城幸助は自らの仲間ですら人質に取り、本気で命を奪おうとした。
「赤城ッ!お前の目的は果たさせないッ!」
「――面白い、今度は覚悟を決めて来い」
捨て台詞となる言葉を吐き、素直にその場から離れる洋助。
蒼い神力を纏って飛び立つ姿は、彗星のような煌めき。
――しばらくして、その輝きが見えなくなると赤城は刀を下ろして納刀する。
「怪我は無いか?芹、菘」
「あ…はい、助けてくださりありがとうございます」
「――待てよ、赤城さん…さっきの脅しは洋助を追い払う演技だとしても洒落になってねぇよ、芹に何かあればうちはアンタを斬っていた」
菘は納得いかず、赤城のやり方を問う。
利害の一致、そして目的の共感があったとしても姉を傷付けるやり方には賛同できない、天草菘は一人の巫女である前に姉想いの妹であった。
「そうだな…、確かに悪いことをした、が…僕には、僕にしか分からない確信もある、あいつは…洋助は手を出せない、絶対にだ」
「根拠は?」
「そんなものは無い、だが言い切れる、あいつは人を斬れない、今は、な」
嘘や場当たり的な言葉ではなく、それが真実といわんばかりの目で言う。
包帯に巻かれ僅かに覗く瞳は、神力を持たない人間はと思えぬ威圧的があり、二人の巫女を呑み込む。
「……っ、わかった、信じるよアンタを」
「感謝する」
半ば押し切られながら納得し、殺気を収める菘。
そして、赤城幸助は大きな一歩を踏み出す。
「さぁ、往くぞお前たち、我ら篝火は朧の奴隷ではない事を証明しようじゃないか!!」
薄汚れた包帯を緩ませ、その顔を晒す赤城。
釣り上げた口角は彼の表情を愉快に映し、月夜に照らされた素顔はどこか見慣れた顔でもあった――。
最悪怪我をさせてでも連れ戻す決意をした彼は、体術を構える。
「そこまでだ、この場は退け」
「―――なッ…」
その時、堂々とその姿を現したのは、赤城幸助。
「赤城さんっ…!」
「赤城様ッ!?」
天草姉妹は彼を見て反応する、それを見る限り面識はあり篝火と共謀した事実が伺える。
「何故お前が…水島さんはどうしたッ!?」
「彼を救いたければここは退け、今頃血を流して寝てるだろうよ」
「なん、だと…」
実際、彼は拘束されていた車両を抜け出しここにいる。
その事を考えれば水島が危機的な状況であるのも事実、選択が、迫られる。
その気になればこの場にいる全員を斬れる程の実力を持ちながら、それでも斬らない選択をした洋助、その状況は一変し、抱えた迷いが再び揺れ動く。
「――どうした?早く向かわなければ水島さんが死ぬぞ?」
「う、うるさいッ!!お前たちを捕縛してからでも遅くないっ…」
「なるほど、あくまで抵抗するか、なら…仕方ない」
赤城は洋助の目の前をずけずけと通り過ぎ、その刀を芹の首に当てる。
「あ、赤城様ッ…?」
「何をしているッ…お前…!?」
――あろうことか仲間であるはずの天草芹を殺そうする。
「もう一度だけ言おう、ここから去れ、でなければこいつらを殺す」
「馬鹿なッ…何を言って…」
「―――是非も無し」
躊躇いすらなくその刀は振り落とされる、それをスローモーションで捉える洋助はついに、――折れる。
「待てッ…!!わかった…従う…だから彼女達に手を加えるな」
「――そうか、良い心がけだ」
後ずさり、少しずつ距離を取る。
常に人の命を優先し、守る事だけを考えてきた洋助が初めて味わう敗北。
それは、感情の無い大厄のみと戦ってきた洋助の強さであり弱み、その弱みを見抜かれ赤城幸助は自らの仲間ですら人質に取り、本気で命を奪おうとした。
「赤城ッ!お前の目的は果たさせないッ!」
「――面白い、今度は覚悟を決めて来い」
捨て台詞となる言葉を吐き、素直にその場から離れる洋助。
蒼い神力を纏って飛び立つ姿は、彗星のような煌めき。
――しばらくして、その輝きが見えなくなると赤城は刀を下ろして納刀する。
「怪我は無いか?芹、菘」
「あ…はい、助けてくださりありがとうございます」
「――待てよ、赤城さん…さっきの脅しは洋助を追い払う演技だとしても洒落になってねぇよ、芹に何かあればうちはアンタを斬っていた」
菘は納得いかず、赤城のやり方を問う。
利害の一致、そして目的の共感があったとしても姉を傷付けるやり方には賛同できない、天草菘は一人の巫女である前に姉想いの妹であった。
「そうだな…、確かに悪いことをした、が…僕には、僕にしか分からない確信もある、あいつは…洋助は手を出せない、絶対にだ」
「根拠は?」
「そんなものは無い、だが言い切れる、あいつは人を斬れない、今は、な」
嘘や場当たり的な言葉ではなく、それが真実といわんばかりの目で言う。
包帯に巻かれ僅かに覗く瞳は、神力を持たない人間はと思えぬ威圧的があり、二人の巫女を呑み込む。
「……っ、わかった、信じるよアンタを」
「感謝する」
半ば押し切られながら納得し、殺気を収める菘。
そして、赤城幸助は大きな一歩を踏み出す。
「さぁ、往くぞお前たち、我ら篝火は朧の奴隷ではない事を証明しようじゃないか!!」
薄汚れた包帯を緩ませ、その顔を晒す赤城。
釣り上げた口角は彼の表情を愉快に映し、月夜に照らされた素顔はどこか見慣れた顔でもあった――。
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