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撃滅の夜叉兵編
―――2
しおりを挟む「…どうして、貴方達が、ここに…」
「あ?鈍感な奴だな、お前らが護送している赤城さんに用があるんだよ、その意味ぐらい分かるだろ?」
「…それに、話し合う時間もありません、どうします?殺し合います?」
神威の巫女の裏切り、それも実力派である天草姉妹の。
どこまで篝火と繋がりがあるのかはわからない、しかし、この襲撃は疑いようも無く彼女達の仕業であり、故に迷いが生まれる。
「そんな…なんで、どうして…」
呼吸は乱れ、視界はぶれる。
結界の強化を警備して以降、その後もお務めを共にする機会も多く、彼女達の人間性は知っていたつもりであった。
こんな酷い事ができるはずがない、そう言い聞かせようにも姉妹は得物を携え距離を詰める、それは彼女らが敵に回る決定的な行動。
「どうした?艱難辛苦を倒した実力を見せてくれよ」
「俺は…戦いたくありません、芹さんッ!菘さんッ!」
「――この期に及んでまだそんな、…覚悟を決めなさい」
迷いが、心の弱さが露呈する。
この数年確かに洋助は数えきれない大厄を討ってきた、だが、人を斬る事など無く、彼の誓いに人を殺める覚悟は無い。
故に迷い、震え、焦点が定まらない。
守るための戦いに、その守る対象を斬らなくてはならない、矛盾した想いが体を縛る。
「い、嫌だッ!?戦いたくありませんッ!!」
「甘えるなッ!!」
あまりの狼狽ぶりに耐えきれず、菘が飛び上がって斬りかかる。
逃げ腰の洋助は納刀したまま鞘でそれを受けると、鍔迫り合いに持ち込む。
「なんで裏切ったんですかッ!?巫女のお務めを投げ出すんですかッ!!」
「うるせぇ!私達はなッ…もっとやりたい事があんだよっ!巫女に縛られてちゃ前に進めねぇんだ!」
ガキィンッ…!
鞘が刃によって欠け、鈍い音が響く。
菘は間合いを離し、後ろに回り込んだ芹が追撃できるように仕掛ける。
「芹さんっ…!目的は、この惨劇の意味はなんですかっ…!話してください!」
「…貴方のように使命に導かれ、お務めを果たす人には理解なんて出来ません、時間の無駄です」
脇差しの鋭い突きを躱し、接近戦をしながら問う。
せめて、この戦いの意味を知らねば刀は抜けない、洋助は命の危機に晒されながらも未だ迷い、決断出来ずにいた。
「悩みがッ…問題があれば力になりますッ!刀を収めてくださいッ!!」
「――てめえはッ!!いつまで頭お花畑なんだよッ!!現実見ろ洋助ッ!!」
神力を込めた強烈な一撃。
それを目で追っていた洋助の頭に、撃鉄が引かれる。
「―――わかりました」
迷いは、未だある。
ならば、それごと抱え、押し通る。
バチィンッッ…!!!
菘の重い剣戟、刀は頭を二つに斬る勢いで放たれた、が――。
「な、なにぃ…!?」
――真剣白刃取り。
両の手で押さえつけられた刀身は、菘がいくら動かそうともビクともしない、必死に悶えながら刀を引き抜こうとするが、洋助の手のひらで刀はへし折られる。
「っぐ…」
「菘ちゃんッ!!」
フォローに入る芹は脇差しを投擲し、洋助の行動を止めようとした。
――ィンッ!
だが、振り放った脇差は洋助によって折られた刀身を投擲され、相殺される。
「そんなッ…」
その圧倒的な実力に姉妹は畏怖する、これが、特殊遊撃部隊の赤原洋助、と。
「無理矢理にでも連行し、話を訊きます、俺は俺の誓いを押し通す」
――吹っ切る、撃鉄は引かれ、打ち下ろされた。
迷い諸共抱え、戦う実力がある。
そのために彼はこの数年死に物狂いで鍛錬を続けた、今更その誓いを捻じ曲げる事など出来ない。
「諦めて投降してください、まだ間に合います」
圧倒的武力を見せ付け、洋助はその蒼い光を強く纏わせた――。
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