艱難辛苦の戦巫女~全てを撃滅せし無双の少年は、今大厄を討つ~

作間 直矢 

文字の大きさ
上 下
46 / 79
撃滅の夜叉兵編

―――2

しおりを挟む
 
 「…どうして、貴方達が、ここに…」
 「あ?鈍感な奴だな、お前らが護送している赤城さんに用があるんだよ、その意味ぐらい分かるだろ?」
 「…それに、話し合う時間もありません、どうします?殺し合います?」

 神威の巫女の裏切り、それも実力派である天草姉妹の。

 どこまで篝火と繋がりがあるのかはわからない、しかし、この襲撃は疑いようも無く彼女達の仕業であり、故に迷いが生まれる。

 「そんな…なんで、どうして…」

 呼吸は乱れ、視界はぶれる。
 
 結界の強化を警備して以降、その後もお務めを共にする機会も多く、彼女達の人間性は知っていたつもりであった。
 こんな酷い事ができるはずがない、そう言い聞かせようにも姉妹は得物を携え距離を詰める、それは彼女らが敵に回る決定的な行動。

 「どうした?艱難辛苦を倒した実力を見せてくれよ」
 「俺は…戦いたくありません、芹さんッ!菘さんッ!」
 「――この期に及んでまだそんな、…覚悟を決めなさい」

 迷いが、心の弱さが露呈する。
 この数年確かに洋助は数えきれない大厄を討ってきた、だが、人を斬る事など無く、彼の誓いに人を殺める覚悟は無い。

 故に迷い、震え、焦点が定まらない。

 守るための戦いに、その守る対象を斬らなくてはならない、矛盾した想いが体を縛る。

 「い、嫌だッ!?戦いたくありませんッ!!」
 「甘えるなッ!!」

 あまりの狼狽ぶりに耐えきれず、菘が飛び上がって斬りかかる。
 逃げ腰の洋助は納刀したまま鞘でそれを受けると、鍔迫り合いに持ち込む。

 「なんで裏切ったんですかッ!?巫女のお務めを投げ出すんですかッ!!」
 「うるせぇ!私達はなッ…もっとやりたい事があんだよっ!巫女に縛られてちゃ前に進めねぇんだ!」

 ガキィンッ…!

 鞘が刃によって欠け、鈍い音が響く。
 菘は間合いを離し、後ろに回り込んだ芹が追撃できるように仕掛ける。

 「芹さんっ…!目的は、この惨劇の意味はなんですかっ…!話してください!」
 「…貴方のように使命に導かれ、お務めを果たす人には理解なんて出来ません、時間の無駄です」

 脇差しの鋭い突きを躱し、接近戦をしながら問う。
 せめて、この戦いの意味を知らねば刀は抜けない、洋助は命の危機に晒されながらも未だ迷い、決断出来ずにいた。

 「悩みがッ…問題があれば力になりますッ!刀を収めてくださいッ!!」
 「――てめえはッ!!いつまで頭お花畑なんだよッ!!現実見ろ洋助ッ!!」

 神力を込めた強烈な一撃。
 それを目で追っていた洋助の頭に、撃鉄が引かれる。

 「―――わかりました」

 迷いは、未だある。
 ならば、それごと抱え、押し通る。

 バチィンッッ…!!!

 菘の重い剣戟、刀は頭を二つに斬る勢いで放たれた、が――。

 「な、なにぃ…!?」

 ――真剣白刃取り。

 両の手で押さえつけられた刀身は、菘がいくら動かそうともビクともしない、必死に悶えながら刀を引き抜こうとするが、洋助の手のひらで刀はへし折られる。

 「っぐ…」
 「菘ちゃんッ!!」

 フォローに入る芹は脇差しを投擲し、洋助の行動を止めようとした。

 ――ィンッ!

 だが、振り放った脇差は洋助によって折られた刀身を投擲され、相殺される。
 
 「そんなッ…」

 その圧倒的な実力に姉妹は畏怖する、これが、特殊遊撃部隊の赤原洋助、と。

 「無理矢理にでも連行し、話を訊きます、俺は俺の誓いを押し通す」

 ――吹っ切る、撃鉄は引かれ、打ち下ろされた。
 
 迷い諸共抱え、戦う実力がある。
 そのために彼はこの数年死に物狂いで鍛錬を続けた、今更その誓いを捻じ曲げる事など出来ない。

 「諦めて投降してください、まだ間に合います」

 圧倒的武力を見せ付け、洋助はその蒼い光を強く纏わせた――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ
ファンタジー
 ここは、剣と魔法の異世界グリム。  ……その大陸の真ん中らへんにある、荒野広がるだけの平和なスラガン地方。  近辺の大都市に新しい冒険者ギルド本部が出来たことで、辺境の町バッファロー冒険者ギルド支部は無名のままどんどん寂れていった。  そんな所に見習い冒険者のナガレという青年が足を踏み入れる。  無名なナガレと崖っぷちのギルド。おまけに巨悪の陰謀がスラガン地方を襲う。ナガレと仲間たちを待ち受けている物とは……?  チートスキルも最強ヒロインも女神の加護も何もナシ⁉︎ ハーレムなんて夢のまた夢、無双もできない弱小冒険者たちの成長ストーリー!  努力と友情で、逆境跳ね除け成り上がれ! (この小説では数字が漢字表記になっています。縦読みで読んでいただけると幸いです!)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

千年巡礼

石田ノドカ
ファンタジー
 妖怪たちの住まう世界に、一人の少年が迷い込んだ。  見た事もない異形の蔓延る世界だったが、両親の顔を知らず、友人もいない少年にとって、そこは次第に唯一の楽しみへと変わっていった。  そんなある日のこと。  少年はそこで、友達の咲夜を護る為、命を落としてかけてしまう。  幸い、咲夜の特別な力によって一命は取り留めたが、その過程で半妖となってしまったことで、元居た世界へは帰れなくなってしまった。 『方法はないの?』  方法は一つだけ。  妖たちの宿敵である妖魔の長、『酒吞童子』を、これまでと同じ『封印』ではなく、滅することのみ。 『ぼく、こんどこそ、さくやさまをまもるヒーローになる!』  そんな宣言を、仲の良かった妖らは馬鹿にもしたが。  十年の修行の末——  青年となった少年は、妖たちの住まう国『桜花』を護るための部隊へ所属することとなる。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...