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卒業試験決着編

三話 

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 神威の巫女による大規模な結界強化は、数日にわたり各所で行われた。
 護衛任務を受け持つ遊撃部隊は神威の巫女の舞踏を護衛しつつ、着実にお務めをこなしていった。

 「―――焔さん、最近灯さんに避けられている気がします」

 そんな中、洋助はここ最近の違和感を焔に話す。
 
 大厄の大規模発生以降、お見舞いや精密検査等で灯と顔を合わせてはいたがまともに会話はしていない。

 たまたまと思っていたが、ここ数日の任務で露骨なほど会話を避けられ、洋助自身もおかしいと思い焔に気持ちを吐露した。

 「あー…やっぱり気付きますよね…すみません洋助さん、決して嫌っている訳ではないのです、灯さんもそれに関しては申し訳ないと思っていますよ」
 「そうですか…、となると…やっぱり艱難辛苦との戦闘での件ですかね…」
 「はい…、あれ以降洋助さんに合わせる顔がないと悔やんでいます…」

 艱難辛苦との戦闘で灯を庇い貫かれた洋助、そのショックは貫かれた本人よりも灯の方が凄まじく、己の未熟と後悔だけがただ巡る。
 
 結果として、灯は自責の念に駆られ上手く言葉が見つからない、避ける形で洋助に接してしまっている。

 「灯さんは人一倍真面目で、それ故に傷付きやすい、普段気丈に振る舞い明るいのも、その裏返しみたいなものなんです」
 「……よく見ていますね、灯さんとは付き合い長いんですか?」
 「そうですねー…、京都の教育機関からずっと一緒で、今に至るぐらいですかね?」
 「それは、結構長い付き合いですね」
 「ふふ、今の洋助さんと雪さんみたいなものですね」

 急に関係性を見抜かれて視線が泳ぐ洋助は、気恥ずかしさから話題を戻す。

 「まぁ…、けど、今後灯さんとはどうすればいいのでしょうか…」
 「うーん…、それなら、少しだけ昔話でもしましょうか?」
 「昔、話ですか…」

 思い出す様に焔は言う。
 
 それはきっと桐島灯という人にとって大事な過去であり、また、水瀬焔にとっても大切な過去、彼女達二人の人間性を知る貴重な話。

 「なんてことありません、灯さんが、…灯ちゃんがどういった人なのか、何のために戦っているのか、それを知るだけの話です」
 「戦う意味、ですか…」
 「洋助さんが皆を守りたいように、灯ちゃんにも、私にも戦う意味があります、それを知れば灯ちゃんの今の苦悩も少しは理解できるかもしれません」

 ――戦巫女として何故戦うのか。
 
 命を懸けて戦う意味は一人一人にあり、それ故に巫女は強い。
 それは洋助にも当てはまり、強さの核心でもある。

 「少し長くなります、良かったらどうぞ」
 「あ、ありがとうございます…」

 焔は自販機の飲み物をおもむろに買うと、洋助に手渡す。
 休憩室に二人は腰掛け、少し甘めのコーヒーを一口含む、そして一瞬の間を置いて水瀬焔は語り掛ける。

 「あれは、私が京都の教育機関に配属されての事でした…」

 缶コーヒーを静かに置き、昔語りはゆっくり始まる。

 これは、大厄対策本部最強と言われた彼女のお話。
 
 そして、我流を極めた戦巫女、桐島灯のお話でもある――。
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