7 / 7
最終話 これから名実ともに
しおりを挟む 通路を数回曲がり、行き止まりまでくると、俺の腕試しが始まる。
「僕が向こうから来るモンスターは全部倒すから、コルネくんはそのオルトロス一体に集中して」
俺はオルトロスは行き止まりの部分にいて、通路の方からやってくるモンスターを師匠が防ぐようなかたちだ。
次々と他のモンスターを倒していたのを見ていたせいか師匠には目もくれず、ウウウと唸りながら離れて俺だけを睨みつけるオルトロス。
オルトロスは今回の旅で倒してはいるが、ダンジョンのモンスターはAランク以上がごろごろいるというからそれよりも強い可能性が高い。何より、実際と同じ強さなら俺の腕試しの相手として師匠が選ぶわけがない。
相手の実力が分からない以上、こちらからは下手に動けない──そう思って様子を見ていると、痺れを切らしたのかオルトロスがこちらへ一直線に向かってくる。
──速い。ターニュで見たものとは比べものにならないスピードでオルトロスが迫ってくる。俺から突っ込んでいかなくて正解だったが、ここからどうするべきか……すぐに思いついたのは二つ。
一つはこちらからも向かっていき、斬りつける。お互いに加速している状態のため、俺の剣の殺傷力は跳ね上がる。しかし、それは向こうの攻撃の威力も増すということであるのtお、お互いに勢いをつけすぎているせいで剣への負担が大きい。よほど真っ直ぐ刃を入れないと剣が折れてしまう危険がある。
そうなると二つ目だな。俺は集中してオルトロスの動きを目で追う。今も少しずつ加速していっているオルトロスが次の瞬間どこにいるかを推測していく。
「ここだ!」
俺は素早く土魔法でダンジョンの床を盛り上げ、土壁をつくる。ボコボコと盛り上がってくる地面にすぐに気付いたオルトロスの顔には驚きが浮かぶが、勢いがつきすぎていて急には停まれない。
「キャウ──」
目を逸らすように頭を横に向けながらひと鳴きをしようとしたところで、オルトロスは俺の出した土壁に激突する。大きな音とともに頸椎がボキリと折れ、オルトロスの首が本来曲がらない方向に曲がる。
もともとダンジョンの床や壁は異常に硬い。それに勢いよくぶつかれば多少はダメージが入るかと思ったが、予想よりも衝撃が大きかったようだ。
直後、その躯はサラサラとなって消えていき魔力結晶となる。首の骨が折れて即死だったのだろう。
そして残った魔力結晶はかなりの大きさだ。記憶が正しければラムハのダンジョンの奥で採れたものよりも大きい気がする。
「早かったね。意外と楽勝だった?」
「そんなことはないですね。オルトロスが突っ込んできてくれたおかげですよ」
のんきに自分が倒したモンスターの魔力結晶を袋に入れながら師匠が訊いてくる。 からんと袋の中で魔力結晶がぶつかり合う音を聞いて顔が緩んだ師匠に、俺はずっと気になっていたことを訊ねる。
「……全部の袋がいっぱいになるまでこの腕試しは続くんですか?」
「いや、コルネくんが続けたいならそうすればいいし、満足したならやめればいいよ。僕は魔力結晶ほしいからたくさん狩るけど」
俺が一人で大量のモンスターを倒さなくていいと知って一安心だ。
「持ってきた袋全部がいっぱいいっぱいになるまで倒すんですか?」
「え……さすがにそこまではしないよ──あれは予備。袋が破れたりなくなったりしたときのために一応持ってるんだ」
笑って答える師匠。たしかにモンスターの攻撃や魔力結晶の重みで袋が破れることはあり得る。よく忘れ物はしそうになるのに、そういうところだけ用意周到なんだ──と心の裡で思った。
「僕が向こうから来るモンスターは全部倒すから、コルネくんはそのオルトロス一体に集中して」
俺はオルトロスは行き止まりの部分にいて、通路の方からやってくるモンスターを師匠が防ぐようなかたちだ。
次々と他のモンスターを倒していたのを見ていたせいか師匠には目もくれず、ウウウと唸りながら離れて俺だけを睨みつけるオルトロス。
オルトロスは今回の旅で倒してはいるが、ダンジョンのモンスターはAランク以上がごろごろいるというからそれよりも強い可能性が高い。何より、実際と同じ強さなら俺の腕試しの相手として師匠が選ぶわけがない。
相手の実力が分からない以上、こちらからは下手に動けない──そう思って様子を見ていると、痺れを切らしたのかオルトロスがこちらへ一直線に向かってくる。
──速い。ターニュで見たものとは比べものにならないスピードでオルトロスが迫ってくる。俺から突っ込んでいかなくて正解だったが、ここからどうするべきか……すぐに思いついたのは二つ。
一つはこちらからも向かっていき、斬りつける。お互いに加速している状態のため、俺の剣の殺傷力は跳ね上がる。しかし、それは向こうの攻撃の威力も増すということであるのtお、お互いに勢いをつけすぎているせいで剣への負担が大きい。よほど真っ直ぐ刃を入れないと剣が折れてしまう危険がある。
そうなると二つ目だな。俺は集中してオルトロスの動きを目で追う。今も少しずつ加速していっているオルトロスが次の瞬間どこにいるかを推測していく。
「ここだ!」
俺は素早く土魔法でダンジョンの床を盛り上げ、土壁をつくる。ボコボコと盛り上がってくる地面にすぐに気付いたオルトロスの顔には驚きが浮かぶが、勢いがつきすぎていて急には停まれない。
「キャウ──」
目を逸らすように頭を横に向けながらひと鳴きをしようとしたところで、オルトロスは俺の出した土壁に激突する。大きな音とともに頸椎がボキリと折れ、オルトロスの首が本来曲がらない方向に曲がる。
もともとダンジョンの床や壁は異常に硬い。それに勢いよくぶつかれば多少はダメージが入るかと思ったが、予想よりも衝撃が大きかったようだ。
直後、その躯はサラサラとなって消えていき魔力結晶となる。首の骨が折れて即死だったのだろう。
そして残った魔力結晶はかなりの大きさだ。記憶が正しければラムハのダンジョンの奥で採れたものよりも大きい気がする。
「早かったね。意外と楽勝だった?」
「そんなことはないですね。オルトロスが突っ込んできてくれたおかげですよ」
のんきに自分が倒したモンスターの魔力結晶を袋に入れながら師匠が訊いてくる。 からんと袋の中で魔力結晶がぶつかり合う音を聞いて顔が緩んだ師匠に、俺はずっと気になっていたことを訊ねる。
「……全部の袋がいっぱいになるまでこの腕試しは続くんですか?」
「いや、コルネくんが続けたいならそうすればいいし、満足したならやめればいいよ。僕は魔力結晶ほしいからたくさん狩るけど」
俺が一人で大量のモンスターを倒さなくていいと知って一安心だ。
「持ってきた袋全部がいっぱいいっぱいになるまで倒すんですか?」
「え……さすがにそこまではしないよ──あれは予備。袋が破れたりなくなったりしたときのために一応持ってるんだ」
笑って答える師匠。たしかにモンスターの攻撃や魔力結晶の重みで袋が破れることはあり得る。よく忘れ物はしそうになるのに、そういうところだけ用意周到なんだ──と心の裡で思った。
0
お気に入りに追加
15
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

婚約者を親友に盗られた上、獣人の国へ嫁がされることになったが、私は大の動物好きなのでその結婚先はご褒美でしかなかった
雪葉
恋愛
婚約者である第三王子を、美しい外見の親友に盗られたエリン。まぁ王子のことは好きでも何でもなかったし、政略結婚でしかなかったのでそれは良いとして。なんと彼らはエリンに「新しい縁談」を持ってきたという。その嫁ぎ先は“獣人”の住まう国、ジュード帝国だった。
人間からは野蛮で恐ろしいと蔑まれる獣人の国であるため、王子と親友の二人はほくそ笑みながらこの縁談を彼女に持ってきたのだが────。
「憧れの国に行けることになったわ!! なんて素晴らしい縁談なのかしら……!!」
エリンは嫌がるどころか、大喜びしていた。
なぜなら、彼女は無類の動物好きだったからである。
そんなこんなで憧れの帝国へ意気揚々と嫁ぎに行き、そこで暮らす獣人たちと仲良くなろうと働きかけまくるエリン。
いつも明るく元気な彼女を見た周りの獣人達や、新しい婚約者である皇弟殿下は、次第に彼女に対し好意を持つようになっていく。
動物を心底愛するが故、獣人であろうが何だろうがこよなく愛の対象になるちょっとポンコツ入ってる令嬢と、そんな彼女を見て溺愛するようになる、狼の獣人な婚約者の皇弟殿下のお話です。
※他サイト様にも投稿しております。

神嫌い聖女と溺愛騎士の攻防録~神様に欠陥チートを付与されました~
咲宮
恋愛
喋れない聖女×聖女を好きすぎる護衛騎士の恋愛ファンタジー。
転生時、神から祝福として「声に出したことが全て実現する」というチートを与えられた、聖女ルミエーラ。しかし、チートに欠陥が多いせいで喋れなくなってしまい、コミュニケーションは全て筆談に。ルミエーラは祝福を消そうと奮闘するもなかなか上手くいかない。
そして二十歳の生誕祭を迎えると、大神官は贈り物と称して護衛騎士の選択権を授けた。関係構築が大変だとわかっているので、いらないのが本音。嫌々選択することになると、不思議と惹かれたアルフォンスという騎士を選択したのだが……。
実はこの男、筆談なしでルミエーラの考えを読める愛の重い騎士だった!?
「わかりますよ、貴女が考えていることなら何でも」
(なんか思っていたのと違う……!?)
ただこの愛には、ある秘密があって……?
※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しております。
完結いたしました!!
夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜
梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーロットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。
そんなシャーロットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。
実はシャーロットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーロットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーロットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。
悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。
しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーロットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーロットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーロットは図々しく居座る計画を立てる。
そんなある日、シャーロットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

【完結済】姿を偽った黒髪令嬢は、女嫌いな公爵様のお世話係をしているうちに溺愛されていたみたいです
鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
王国の片田舎にある小さな町から、八歳の時に母方の縁戚であるエヴェリー伯爵家に引き取られたミシェル。彼女は伯爵一家に疎まれ、美しい髪を黒く染めて使用人として生活するよう強いられた。以来エヴェリー一家に虐げられて育つ。
十年後。ミシェルは同い年でエヴェリー伯爵家の一人娘であるパドマの婚約者に嵌められ、伯爵家を身一つで追い出されることに。ボロボロの格好で人気のない場所を彷徨っていたミシェルは、空腹のあまりふらつき倒れそうになる。
そこへ馬で通りがかった男性と、危うくぶつかりそうになり──────
※いつもの独自の世界のゆる設定なお話です。何もかもファンタジーです。よろしくお願いします。
※この作品はカクヨム、小説家になろう、ベリーズカフェにも投稿しています。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる