2 / 9
作戦会議
しおりを挟む
「どうした、グルメ雑誌なんて見て」
連絡先は無事に交換できたので、さっそく次の約束を取り付けるべく店を物色していたのだが。取引先や同僚、友人らの場合とはかなり勝手が違うので、店選びに少し行き詰っていた。
「……先日、見合いをしたと言っただろう?」
「言ってたなぁ。気が進まんとか言ってた割には、次の日に花を撒き散らしてるかのような浮かれ顔で出勤してきたから……変な薬でも打たれてきたのかと心配したぜ」
「まぁ、彼女にはそのくらいの魅力があったから、彼女中毒のようになっていたんだ」
「その言い方はねーだろ。その彼女に謝れ」
「彼女は驚いていたけれども礼を言ってくれたぞ。そんな風に褒められる事はなかなかないからありがとうございます、とな。やはり心の美しさが外見の雰囲気ににじみ出てるからあんなに美人なのだろう」
「社交辞令以外の何物でもないわ! 高校生に気を遣わせてどうすんだよ!」
「そう、彼女が高校生の未成年なのが悩みの種なんだ。未成年だから、選ぶ事の出来る店が限られる」
初めて会った日に、年が少々離れているのは支障ないと言ってくれていた。だけども、それはあくまでも『俺たち二人が結婚するにあたっては、どちらも年齢は気にならない』というだけで、こうやって出かけるとなるとそうはいかない。良識ある大人でいなければ、きっと彼女は俺の手からさらさら零れ落ちるようにいなくなってしまうのだ。
「……状況的に居酒屋ってのも憚られるな」
「そうだな。居酒屋はもっと親睦を深めてから、ファミリー層が多い時間帯を狙っていく必要がある。もちろん、彼女が行ってみたいというのならば一向に構わないが」
「向こうもお嬢さんなんだから、無難に高級ホテルのディナーとかでもいいんじゃないか?」
「逆に普段通り過ぎて面白くないかもしれないだろう。新鮮な場所に連れて行ってこそ、甲斐性のある男というもので」
「……それなら、好きな食べ物とか興味あるものとかを聞いてから考えた方が良いんじゃないのか」
「やはりそうか……彼女の手を煩わせる事無くスマートに事を運びたかったんだが」
「何言ってんだよ。そういう会話を丁寧に積み重ねていくからこそ、互いへの信頼や愛情が深まるんだろうが」
「……ふむ」
「一目惚れした結婚相手なんだろ? そんなら猶更、他の人間よりもそういう積み重ねが大事な相手のはずだ。メールでも電話でも何でもいいから、とりあえず一言好きな食べ物は何ですかと聞いてこい」
「……流石、周りを巻き込んだ大恋愛の末に学生結婚した奴の言う事は違うな」
「それは今関係ねぇ!」
心からの賛辞のつもりで言ったのだが、当の本人には丸めた書類で頭を叩かれてしまった。
連絡先は無事に交換できたので、さっそく次の約束を取り付けるべく店を物色していたのだが。取引先や同僚、友人らの場合とはかなり勝手が違うので、店選びに少し行き詰っていた。
「……先日、見合いをしたと言っただろう?」
「言ってたなぁ。気が進まんとか言ってた割には、次の日に花を撒き散らしてるかのような浮かれ顔で出勤してきたから……変な薬でも打たれてきたのかと心配したぜ」
「まぁ、彼女にはそのくらいの魅力があったから、彼女中毒のようになっていたんだ」
「その言い方はねーだろ。その彼女に謝れ」
「彼女は驚いていたけれども礼を言ってくれたぞ。そんな風に褒められる事はなかなかないからありがとうございます、とな。やはり心の美しさが外見の雰囲気ににじみ出てるからあんなに美人なのだろう」
「社交辞令以外の何物でもないわ! 高校生に気を遣わせてどうすんだよ!」
「そう、彼女が高校生の未成年なのが悩みの種なんだ。未成年だから、選ぶ事の出来る店が限られる」
初めて会った日に、年が少々離れているのは支障ないと言ってくれていた。だけども、それはあくまでも『俺たち二人が結婚するにあたっては、どちらも年齢は気にならない』というだけで、こうやって出かけるとなるとそうはいかない。良識ある大人でいなければ、きっと彼女は俺の手からさらさら零れ落ちるようにいなくなってしまうのだ。
「……状況的に居酒屋ってのも憚られるな」
「そうだな。居酒屋はもっと親睦を深めてから、ファミリー層が多い時間帯を狙っていく必要がある。もちろん、彼女が行ってみたいというのならば一向に構わないが」
「向こうもお嬢さんなんだから、無難に高級ホテルのディナーとかでもいいんじゃないか?」
「逆に普段通り過ぎて面白くないかもしれないだろう。新鮮な場所に連れて行ってこそ、甲斐性のある男というもので」
「……それなら、好きな食べ物とか興味あるものとかを聞いてから考えた方が良いんじゃないのか」
「やはりそうか……彼女の手を煩わせる事無くスマートに事を運びたかったんだが」
「何言ってんだよ。そういう会話を丁寧に積み重ねていくからこそ、互いへの信頼や愛情が深まるんだろうが」
「……ふむ」
「一目惚れした結婚相手なんだろ? そんなら猶更、他の人間よりもそういう積み重ねが大事な相手のはずだ。メールでも電話でも何でもいいから、とりあえず一言好きな食べ物は何ですかと聞いてこい」
「……流石、周りを巻き込んだ大恋愛の末に学生結婚した奴の言う事は違うな」
「それは今関係ねぇ!」
心からの賛辞のつもりで言ったのだが、当の本人には丸めた書類で頭を叩かれてしまった。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい




【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

虜囚の王女は言葉が通じぬ元敵国の騎士団長に嫁ぐ
あねもね
恋愛
グランテーレ国の第一王女、クリスタルは公に姿を見せないことで様々な噂が飛び交っていた。
その王女が和平のため、元敵国の騎士団長レイヴァンの元へ嫁ぐことになる。
敗戦国の宿命か、葬列かと見紛うくらいの重々しさの中、民に見守られながら到着した先は、言葉が通じない国だった。
言葉と文化、思いの違いで互いに戸惑いながらも交流を深めていく。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる