俺の愛しい婚約者

吉華(きっか)

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一目惚れ

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『彼女と目が合ったその瞬間、雷に打たれたような衝撃が俺を襲った』
 手垢に塗れた表現である事は重々承知している。だが、本当にその位の衝撃を受けたのだから、仕方ない。
「互いの両親が望んでいますから、きっと私たちはこのまま婚約して結婚……という流れになると思います。誠さんは、それでも大丈夫ですか……?」
 美しい漆黒が僕を捉え、不安げに見上げてきた。潤んでいるその瞳が、鈴のような声を奏でる口元が、俺の視線をこれでもかと引き留める。
「俺には恋慕う人も恋人もございませんから、問題ありません。貴女こそ……沙織さんこそ、相手が俺で大丈夫ですか」
 目の前の佳人は、俺よりもだいぶ年下だった。高校二年生と言っていたから、九つは下である。女子高生からしてみれば、二十五を超える男は皆一律におじさん扱いになってしまうのではないだろうか。
「……私、も。問題ありません、から、お話を進めていただいて、大丈夫……です」
 恥ずかしげに頬を染めつつ、鈴の音が幸福を紡ぐ。はっきりと本人からの了承を得たその瞬間、俺の脳内で鐘が鳴り響いた。
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