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4 僕の話

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20歳を目前に、全てから解放されることを決めた。

僕は引きこもるのをやめ、積極的に町に出るようになった。
護衛も兼ねた侍従が付いてきたが、「今、町に気になる娘がいるが、まだ貴族であることを内緒にしている。どうか彼女と会う時はひとりにして欲しい。これ以上心配させたくないから家族には内密に。帰りは適当に待ち合わせして、伴に帰ろう」と伝えると、婚約破談のあれこれを知っている彼は快く引き受けてくれた。

前世で人間工学を学んでいた知識を生かし、僕は婚約者がいたころにいくつかの意匠の特許をとっていたので、手をつけていない個人的な資産はある。

ひとりになった僕は、手始めに下町の宿屋で一番安い部屋を借りた。

貴族は出歩く時は基本的に手ぶらだ。荷物を持つと、必然的に侍従が着いてくることになる。「彼女への贈り物だ」と侍従に怪しまれない程度に細々した大きさで、金や小物を持ち出した。
手のひらに収まらない大きさのものは町でこっそりと買い足し、荷物は宿屋に置いてから屋敷に戻る。
一見活動的になったかのような僕に、両親はほっとしたのだろう。おずおずと声をかけて来るようになった。

だが、僕の心はピクリとも動かない。
何を言われても、何も感じない。

無表情な息子をどう思うのか、両親は表情を引きつらせて黙り込む。それでも、後日また話しかけてくるのを繰り返した。


一週間もすると、屋敷の僕の部屋はいらない物だけが残った。そろそろ良いだろう。


僕は「いつものように」身軽な格好で町へ出掛けた。
侍従へ待ち合わせの時間を伝えて別れ、宿屋に向かう。

町で購入した、大きな背負い鞄ひとつ分。旅人にしては大きな荷物だが、貴族としてはあり得ない少ない荷物。

僕が必要だと思うものは、このくらいで充分だ。
いらない物が多すぎたのだ。

粗末だが丈夫な町民の服に着替え、鞄を背負って部屋を出る。
ベッドの上に脱いだ服は放置するが、部屋はあと1ヶ月分先払いしてある。気付かれるのはまだ先の話だ。
旅人が日除けでそうするように長い手拭を頭にかけて顔を隠すと、僕は裏道を選んで町の外門へ向かった。
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