破滅を突き進めば終わると思ってた悪夢の様子がなんかおかしい。

秋野夕陽に照山紅葉

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リリィ・トロイゼル②【リリィ目線】

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「やっぱり、絶対におかしいから!」

 ダン!と机ににペンを握る拳を打ち付け、私は日記帳代わりのノートを見下ろした。
 プロローグ初日に覚書きを記した上に、赤インクで実際に起こったイベントを修正書きしている、見開きのページ。

 各攻略キャラの名前を縦軸に並べ、ゲーム内の経過時間を横軸にして、きちんとグラフにしているのだ。
 なんか、こういう…ちゃんとした設計図?みたいなのがないと不安になるのは、前世の日本の記憶かもしれない。

 ハインリヒ様…好感度がピクリとも上がらず、廊下では会えるけど目が合わないというか、目が合ったとしても可哀想な子を見る目というか。少なくともまっっったく恋愛感情が伺えない!
 予定イベント、バツ!バツ!バツ!

 エルネストくん…転入生ってことで「困ったことない?」とか気にかけてくれてるけど、あくまでもオトモダチ感が全面に出てる。遠目にクラウディアを見つけては嬉しそうに尻尾振ってるし。ナイナイ。
 予定イベント、バツ!バツ!バツ!

 アンリちゃん…プロローグ初日の放課後に会える筈なのに未だに会えず。というか学校にも来てないってホント大丈夫?!と心配になってお見舞い行ってみたけど、門兵さんに追い返され、遂にはお義父様に王宮からクレームまで来ちゃったから、もう行けない…。
 イベント以前にバツ!!

 テレンス様…には会える、けど怖いので、私の方が避けてます、ハイ。殺意って目に見えるのね、と知りました。私、何かしちゃったのかしら…。初対面の学校迷子イベントをクラスメイトの女子に邪魔されて以降、こそこそ様子伺ってるけどバレると視線で殺されそう。怖い。
 予定イベント、バツ!バツ!バツ!

 ファリオくんは…よくわからない。うん。カッコいいし、スマートだし、優しいし、うん。すごいカッコいい…。でもでも、カフェのお客さんにはみんな優しくしてるし、町の女の子からプレゼント貰ったりしてる所も見ちゃったし、なんか、会いに行くのが辛くなって来ちゃった。
 予定イベントはサンカク、サンカク…。
 他の攻略キャラの反応がゲームと全然違うから、ファリオくんも優しさが好意なのか接客業のお愛想なのか判断つかないよ…。

「はぁ」

 もうそろそろ、3ヶ月目になっちゃう。

「こんなんで、エンディングどうなるんだろ…。これでもハーレムエンドになるのかなぁ」

 メモしてある25通りのエンディング。可能性の消えたエンディングにはバツを付けていく。ハーレムエンドには赤マルつけて、真ん中にハテナ。

 ペンを動かしながらエンディングリストを眺めていて、ピタリと手が止まった。

「…あ、今このイベントが起きたら、もしかしたらもしかするかも…!」


 逆転の一手。
 だけど、このままではクラウディアはこのイベントのフラグを立ててはくれないだろう。

 それなら、私が。うまくやれば、きっとできる…!


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