破滅を突き進めば終わると思ってた悪夢の様子がなんかおかしい。

秋野夕陽に照山紅葉

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ファリオの見る夢【ファリオ目線】

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 …さすがに、5度目ともなると飽きてきた。

 目の前の金髪女は最初こそツンケンと大袈裟な反応で面白みもあったが、毎回慣れてくると俺に媚びるばかりで、結局そこらの町娘と何ら変わらない。

 新鮮に感じるのは、あくまでも『俺が』彼女を知らないから、なのだ。
 繰り返すならば意味がない。



 これが奇妙な夢の世界だと自覚するのは早かった。

 俺はいつだって、周りの人間が台本通りに動いているんじゃないかと疑いながら生きている。俺に求められている役割を見つけ、求められているセリフを誦じると、周りの人間は安心したように機嫌よく演技を続ける。終わりのない芝居だ。それは、悪いことではない。
 客商売をしようとするなら演技力が必要だ。真に利に聡い商人は、誰より優れた役者であるべきだから。


 しかしこの夢で、俺はこの金髪女の演技しか見なくていい。彼女にしか合わせる必要のない2人舞台。…現実でこんなことはあり得ない。

 夢の中の俺が、本来の自分の役割を放棄したために、将来のため時間をかけて築いてきた人間関係が、命が、一瞬で喪われていく。
 誰が考えた台本か知らないが、なんて不粋な筋書き。


 気付いてからは冷めた目で、このナンセンスな芝居を見続けた。3本目を見る頃、芝居の幕が降りるタイミングがわかった。

 クラウディア・リレディ。彼女の死と同時だ。


 どの芝居でも、彼女に与えられた役割は酷いものだった。この台本を書いた奴の目的は明らかだった。

 クラウディアを貶め、辱め、その尊厳を奪う。


 作り物の舞台だからと、どうでもいい心地で事の成り行きを見て来たが…5度目の終幕は最悪だった。










「…っふざけるな!!」




 思わず怒鳴った途端、感覚が元に戻った。

 学院内の教室。自分の机。
 怒鳴ると同時に机に叩きつけたらしき右手の拳が、じわじわと熱を持つ。

 同じ教室の男連中が驚いた顔でこちらを見ていた。
 教壇に立つ経済学の教師が、身を竦めながら「ラ、ラブロイ様…わ、私…何か間違えておりましたでしょうか…?」と聞いて来たので、俺は慌てて「先生ごめんね、寝ぼけちゃった」と笑ってみせた。

 ホッとした様子の教室の空気にヘラヘラと笑顔を返しながら、俺は考える。


 今のはなんだ?



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