破滅を突き進めば終わると思ってた悪夢の様子がなんかおかしい。

秋野夕陽に照山紅葉

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テレンスの見る悪夢【テレンス目線】

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 不思議な体験だった。

 不思議で、この上なく不快な体験。
 悪夢のような光景が、酷くリアルに何度も繰り返されたのだ。

 悪夢の中で、私は愚かで滑稽な役回りを演じていた。

 大切な…ずっと大事に大事に慈しんできた宝である妹を、悲しませ、泣かせ、俯かせ、遂にはその命を自ら散らせてしまってなお、「仕方ないことだった」と冷めた目で見届けるのだ。

 何度も、何度も。

 だがそれを繰り返すうちに、自分の行いの異様さに気付く。気付いた瞬間、やっと私は自身の思考のコントロールを取り戻した。

 何故そのような事を許すのか、何故妹の苦しみに寄り添い救い上げようとしないのか、今の私には全く理解できない。
 その理解できない動機を、夢の中の私は違和感なく受け入れ、大義名分としてさも大事そうに掲げていた。


 くだらない。たかが、出会ったばかりの女…そのひとりの為の必要な犠牲だなどと。
 夢の中の己の言動、その全てに吐き気すらもよおす。



 不快な悪夢から目覚めたら、何故かベッドの中ではなく、見慣れた学院の生徒会室にいた。
 寝ていたわけでもない。その証拠に、先ほどまで確認していた書類の内容も頭に入っている。

「白昼夢…?」

 私はグシャリと前髪をかきあげた。
 背筋に冷たい汗が伝うのを感じる。

 悪夢の中は、今より未来の時間だった。
 経験した事ない未来を、何度も繰り返したというのか。

 …それは、まるで未来視ではないか。

 未来視は、神殿の領域だ。未来の可能性を読み解く技術として、神官職に就くものが学ぶもの。私は領域外だ。


「…クラウディア…」

 大切な、妹。


 今はただ、妹の顔が見たい。




 私は席を立つ。
 まだ教室にいるだろうか。
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