❰完結済!❱堅物牛乳(ウシチチ)お父さんと激しくラブしたい!

蒼い色鉛筆

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じゅうはちぱいめ

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痛みでイライラしていたから帰りの最中、携帯の通知はあえて切っていたが、メールをする前に既に四葉さんからメッセージが届いていた。

『調子はどう?痛み止めとか飲んだ?』

…彼女からのメールに少なからず僕の心は高揚していた。蒼雨の口元は自然と綻んだまま、返信をする。

『ありがとう、すぐ飲むことにする。ダサいとこ見せちゃったな…3ポイント狙ってたのになー。』

ピロン♪返信早!

『ダサいとか思ってないから!』
『すっごく心配だった…骨折だったらどうしようって…』

学校では抑えていた分、感情がせき止められないらしい。それでも彼女の優しい説教に頷いているうちに日曜日の話題になった。

『おっ?どこ行こうか。屋外は×><ゆっくりしたいから水族館か動物園とかどう?』

『え!』
『ダメだよ花文くん!安静にしてな!』
『デートは一回休み、また来週にしよ?』

え!え!!そんなの困る!!
僕はワガママなんだ、午前中は四葉さんとデートして午後は高橋パパに甘やかされて、この不安を癒される計画を立ててるんだから!急いで返信しないと…!

『突き指のことなら全然平気だよ!寂しいから構って欲しいな、無理にとは言わないけど…』

これはあまり使いたくない奥の手だ。
だけどこれで断る女子はいないし、四葉さんも最終的には折れてくれた。

『分かった、でも本当に無理しないで。』

ああ…ふぅ…良かった。
孤独な日曜日なんてそれこそ僕なら寝込む。僕は…僕は、どっちに会いたくて必死なんだろう?四葉さんにも、高橋パパにも会いたい?そんなの、以前は考えたこともなかったのに…

「いてて…」

ジクジクと熱を持つ左手の主張によって、まだ痛み止めを飲んでないことを思い出す。メールはなんとかなったし、今日は薬飲んで早く眠ろう…。

気乗りしなくて頭を掻いた蒼雨は電気の消えたリビングへ薬箱を探しに行った…。

*******************

「水族館チョー楽しかった~!」

四葉さんは僕が買ってあげた一目惚れしたペンギンのぬいぐるみを大事に抱っこして、感動と興奮のため息を洩らした。もう帰りはすっかり夕方だった。

「面白い魚がいっぱいいたね。」

「うん、明日はアジ焼こうーっと。すごいよね、こんなに寒いのに魚たちは元気に泳いでて、ペンギンショーが…!あぁもうペンギンチョー可愛かった!♡」

「ペンギン好きだねー。」

「………。」

「?」

なんてことない会話の途中だったと思うが、四葉さんが人気のない道の真ん中で立ち止まってしまったので失言があったか?と胸が騒ぐ。夕方であまり顔は見えないが、彼女は言いにくそうにしていてペンギンを更に強く抱きしめた。

「ウチは…花文くんのことの方が好き。」

「~~~~~っ!」

あまりの可愛さに…!
ペンギンを抱っこした彼女ごと抱きしめ、キスをした。

「んむっ…」

本当に男慣れしてないんだろうな、まだキスをすると四葉さんは顔に力を入れて息を止めて、怖がってるみたいにビクッとする。だからこれ以上手は出せない…高橋パパが怖いし。と言うかこんな強引なこと普段しないのにどうしたんだ僕は…!?

体を離しても余韻が残ってて、ドキドキしたまま手を繋いで彼女の家へ帰る。

「お父さんに顔赤いって言われるかも…」

「はは…」

正直に答えられたら多分殴り殺されるな。
高橋パパが気づきませんように…。

*******************

出来立てのご飯ってめちゃくちゃ美味しい。今日も満腹になるまでご馳走してもらった蒼雨は突き指のことなんて忘れたかのようにご機嫌でニコニコしていて、学校での話を四葉さんと一緒に高橋パパに話す。

その話を穏やかな目元で、うんうんと相づちを打つ高橋パパの横顔がたまらないくらい好き。

「あはは!あれめっちゃ面白かったよねー!」

四葉さんの鈴の転がるような笑い声につられ笑いしてしまう。

「そうそう、今もクラスで『それが?』って口ぐせ流行ってるから思い出す度笑えてくるw」

「………。」

「はあ、はあ、お腹苦しい…!笑いすぎて顔痛いよぅw…っあ、花文くん、手は大丈夫?」

「手?」

相づち以外ほとんど口を挟まない高橋パパが怪訝な顔をしてみせた。これは2人を心配させる訳にはいかない。あえて突き指した包帯ほどけかけてる手を上げてみせて、ヘラヘラと答える。

「うん大丈夫大丈夫。この通りだよ。」

「冷却はしてるのか?見せなさい。」

「た、高橋パパ?大丈夫ですよ、痛み止め飲んでますから…」

なんか高橋パパが怖い。
鬼のように鋭い目付きで僕の負傷した手を乱暴に掴み、何も処置していないことに気づくと般若のように顔を歪ませた。

「突き指を軽視してはいけない!よつは、氷を持ってきなさい。お前も怪我には詳しいはずだ、気をつけなさい!君は…そこから動くんじゃない。いいな、湿布を2階から持ってくる。」

「………っ。」

楽しい空気から一変、怒り心頭の高橋パパが巨体を揺らしてドスドスとリビングを去る。眉間に突きつけられた指から拳銃を受けたような衝撃で、蒼雨は口を開いたまま固まっていた。四葉さんも気まずい様子だ。慌ててキッチンから氷水をボウルいっぱいに持ってきてくれたが、今の寒い季節これに手を突っ込む方が風邪引きそうなんだ。そうだ、この冷えきった空気をフォローしないと…

「あはは、お父さん怖いね。ごめんね、僕のせいで怒られちゃうね。」

「…お父さんは昔強いアメフトの選手だったんだけど練習の怪我を放置してたら、2度と試合に出れなくなっちゃったんだ。だから怪我については誰よりも厳しいことすっかり忘れてたの…。」

「あぁ…そうだったんだね。」

それは怒られても仕方ないかもしれないけどフォローだ、フォロー。

「そ、それにしたってあんなに怒ることないじゃないか。四葉さんが怪我してもあんな感じなの?」

「うん、あれくらい普通だよ。ウチが陸上頑張ってるって知ってるから擦り傷でも手当てしてないと大変。いつもあんな感じよ?」

「………。」

心がざわつく…この、不明瞭な感覚。
意識することよりも早く、気にしないことが1番と判断した。ぐっと心を抑えて下唇を噛んでいると…

「湿布!!巻き方とリハビリを教えるから毎日やるように!」

激おこぷんぷんな高橋パパが床を踏み鳴らして2階から降りてきた。

やっぱり僕はこの家族が1番好きだな…。
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