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じゅうごぱいめ
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それから僕は毎週日曜日、高橋さんの家で夕食をご馳走になっている。
好きな料理を作ってくれるし、時々時間を合わせて四葉さんと買い物したり、何よりご飯が美味しい。こんなに楽しいの人生で初めてだ!!
逆に僕から出来ることと言えば材料費を出すことくらいなんだけど…それが高橋パパにバレた時、目くじら立てて怒られた。
「子供が気を使わなくて良し、食うに困らないくらいは稼いでるつもりだ。」
ーー子供扱いされてムカつくよりも、余計惚れた自分が情けない。僕も…ああいう大人に「なりたかった」。
「………。」
じゃあ、毎週彼女に会っているのにどこでお父さんと愛を育んでいるか?それは…
*******************
今夜も満足満腹、温かいご飯がこんなに美味しいなんて知らなかった。唇に残ったソースさえ舌でペロリと舐めとってしまう。
幸せ気分で感謝を述べる。
「は~~今日も最高でした。四葉さん、日に日に腕前が上がってるね。シェフに向いてるんじゃないかな。」
「え!?う、ウチが…っ!?そんな、大げさに褒めたってディナーはクリームブリュレしか出てこないからねっ!♡」
やった~~♡
お腹いっぱいだけどデザートは別腹だよね。ちっちゃい陶器のクリームブリュレがたまらなく愛しい。もちろん、完食。
この家で学んだこと。
デザートは別腹、ご飯は温かいと美味しい、あえて冷やす料理もある、四葉さんは料理が本当にうまい、高橋パパはーーー
対面の席に座す一家の大黒柱を盗み見た。
クリームブリュレという可愛いお菓子を前にしても凛と背筋が伸びた佇まいでお上品にお食べになってあらせられる。
それから時々、切れ長のまつ毛を忙しく動かしリビングの丸時計に目をやっていた。
「もう遅い時間だ…そろそろお開きにしなさい、花文くんは送るから身支度をしなさい。」
「ええー、まだ9時なのに…っていつも思うけど花文くんの家は真逆だもんね。いつも来てくれてありがとうー。」
「こちらこそ、家族みたいに接してもらって最高に幸せだよ。高橋パパさんもいつもありがとうございます。」
「………。」
僕の声かけには反応せず、高橋パパはそっぽを向いて席を立つと車のキーを取って、先に出ていってしまった。すかさず四葉さんのフォローが入る。
「ウチのお父さん毎度冷たくてゴメンね。車の中でイヤなこと言われたりしてない?」
「ーーーーそんなことないよ。送っていただいて感謝してる。いつもありがとう四葉さん、デザートもとっても美味しかった。」
危ない危ないーーーー。
余計なことを口走るところだった。
車の中で「ナニ」してるかなんてとてもとても、言えたことじゃないーーーー。
エプロン姿のままの四葉さんは無邪気に笑い返し、ニコニコして頬を赤く染めた。
「ううん、ウチこそありがとう。昼間観た映画超面白かったね!」
こういうところでしかお返し出来ないから…チケット代なんて彼女の労力に比べたら微々たるものだ。そういえば…
「来週は陸上大会だったよね。めいっぱい応援行くからね。」
「っ…!ぷ、プレッシャーだなぁ~~。」
顔から火を吹くくらい赤くなるとこ、遺伝なんだろなぁ。それに控えめなところも。彼女は上級生よりもずっと足が速く、優秀な選手なんだから1位は固いだろう。
「聞こえるように、届くように応援する。でも集中を削がないよう気をつけるからね。大丈夫、四葉さんなら大丈夫。」
「ーーーっ、うん、お父さん、待たせるとうるさいから…っ!また来週!来てね!」
「ふふふ。」
恥ずかしがりな彼女は上手いこと言えず、いっぱいいっぱいになっちゃって僕の背中をグイグイ押して追い出す。好きなスポーツにストイックなところ尊敬するなぁ。
「ごちそうさまでした。」
最後に一礼してから高橋家を後にする。
さて…次は。
*******************
ガチャ…
「高橋パパ、すみませんお待たせしました。」
助手席から乗り込むと、運転席の高橋パパはソワソワと落ち着きがなかった。ライトも点けず、ナニを考えていたんでしょうか。
「遅い。よつはに不埒なことしてないだろうな。」
「まさか、来週の大会頑張ってって話しただけですよ。全力で応援してきますからね~。高橋パパの代わりに。」
「………。」
あ、悲しませたかな…本当は1番応援したい立場だろうに、応援に行けないお父さん。「親が来るとか恥ずかしいw」って中学時代四葉さんがオトモダチに笑われたことを気にして、大会の日は必ず仕事を入れるようにしてるらしい。こうして見ると「親」って大変なんだな、と同情しちゃうところがある。
「…シートベルトを締めなさい。発進する。」
「はい。写真、沢山撮ってきますね。」
「動画も頼む。」
「~~~っwww、はいw」
ああ、可愛い親娘だなぁ。
こんな日が無限に続けばいいのに…。
蒼雨がシートベルトを装着したのを確認し、高橋父は慎重に墨色のミニバンを前進させた。
クルクルクルル…
ハンドルをきって砂利を踏む音が心地いい。運転が安定すると高橋父の代わりに蒼雨がタッチパネルを操作して音楽を流す。
クラシック好きって意外だけど慣れるとブレないなぁと思ったりする。
そうして二人を乗せた車は夜道を走り出す。
目的地は蒼雨の家のマンション…から少し道のずれた、人気のない川沿いへ…。
好きな料理を作ってくれるし、時々時間を合わせて四葉さんと買い物したり、何よりご飯が美味しい。こんなに楽しいの人生で初めてだ!!
逆に僕から出来ることと言えば材料費を出すことくらいなんだけど…それが高橋パパにバレた時、目くじら立てて怒られた。
「子供が気を使わなくて良し、食うに困らないくらいは稼いでるつもりだ。」
ーー子供扱いされてムカつくよりも、余計惚れた自分が情けない。僕も…ああいう大人に「なりたかった」。
「………。」
じゃあ、毎週彼女に会っているのにどこでお父さんと愛を育んでいるか?それは…
*******************
今夜も満足満腹、温かいご飯がこんなに美味しいなんて知らなかった。唇に残ったソースさえ舌でペロリと舐めとってしまう。
幸せ気分で感謝を述べる。
「は~~今日も最高でした。四葉さん、日に日に腕前が上がってるね。シェフに向いてるんじゃないかな。」
「え!?う、ウチが…っ!?そんな、大げさに褒めたってディナーはクリームブリュレしか出てこないからねっ!♡」
やった~~♡
お腹いっぱいだけどデザートは別腹だよね。ちっちゃい陶器のクリームブリュレがたまらなく愛しい。もちろん、完食。
この家で学んだこと。
デザートは別腹、ご飯は温かいと美味しい、あえて冷やす料理もある、四葉さんは料理が本当にうまい、高橋パパはーーー
対面の席に座す一家の大黒柱を盗み見た。
クリームブリュレという可愛いお菓子を前にしても凛と背筋が伸びた佇まいでお上品にお食べになってあらせられる。
それから時々、切れ長のまつ毛を忙しく動かしリビングの丸時計に目をやっていた。
「もう遅い時間だ…そろそろお開きにしなさい、花文くんは送るから身支度をしなさい。」
「ええー、まだ9時なのに…っていつも思うけど花文くんの家は真逆だもんね。いつも来てくれてありがとうー。」
「こちらこそ、家族みたいに接してもらって最高に幸せだよ。高橋パパさんもいつもありがとうございます。」
「………。」
僕の声かけには反応せず、高橋パパはそっぽを向いて席を立つと車のキーを取って、先に出ていってしまった。すかさず四葉さんのフォローが入る。
「ウチのお父さん毎度冷たくてゴメンね。車の中でイヤなこと言われたりしてない?」
「ーーーーそんなことないよ。送っていただいて感謝してる。いつもありがとう四葉さん、デザートもとっても美味しかった。」
危ない危ないーーーー。
余計なことを口走るところだった。
車の中で「ナニ」してるかなんてとてもとても、言えたことじゃないーーーー。
エプロン姿のままの四葉さんは無邪気に笑い返し、ニコニコして頬を赤く染めた。
「ううん、ウチこそありがとう。昼間観た映画超面白かったね!」
こういうところでしかお返し出来ないから…チケット代なんて彼女の労力に比べたら微々たるものだ。そういえば…
「来週は陸上大会だったよね。めいっぱい応援行くからね。」
「っ…!ぷ、プレッシャーだなぁ~~。」
顔から火を吹くくらい赤くなるとこ、遺伝なんだろなぁ。それに控えめなところも。彼女は上級生よりもずっと足が速く、優秀な選手なんだから1位は固いだろう。
「聞こえるように、届くように応援する。でも集中を削がないよう気をつけるからね。大丈夫、四葉さんなら大丈夫。」
「ーーーっ、うん、お父さん、待たせるとうるさいから…っ!また来週!来てね!」
「ふふふ。」
恥ずかしがりな彼女は上手いこと言えず、いっぱいいっぱいになっちゃって僕の背中をグイグイ押して追い出す。好きなスポーツにストイックなところ尊敬するなぁ。
「ごちそうさまでした。」
最後に一礼してから高橋家を後にする。
さて…次は。
*******************
ガチャ…
「高橋パパ、すみませんお待たせしました。」
助手席から乗り込むと、運転席の高橋パパはソワソワと落ち着きがなかった。ライトも点けず、ナニを考えていたんでしょうか。
「遅い。よつはに不埒なことしてないだろうな。」
「まさか、来週の大会頑張ってって話しただけですよ。全力で応援してきますからね~。高橋パパの代わりに。」
「………。」
あ、悲しませたかな…本当は1番応援したい立場だろうに、応援に行けないお父さん。「親が来るとか恥ずかしいw」って中学時代四葉さんがオトモダチに笑われたことを気にして、大会の日は必ず仕事を入れるようにしてるらしい。こうして見ると「親」って大変なんだな、と同情しちゃうところがある。
「…シートベルトを締めなさい。発進する。」
「はい。写真、沢山撮ってきますね。」
「動画も頼む。」
「~~~っwww、はいw」
ああ、可愛い親娘だなぁ。
こんな日が無限に続けばいいのに…。
蒼雨がシートベルトを装着したのを確認し、高橋父は慎重に墨色のミニバンを前進させた。
クルクルクルル…
ハンドルをきって砂利を踏む音が心地いい。運転が安定すると高橋父の代わりに蒼雨がタッチパネルを操作して音楽を流す。
クラシック好きって意外だけど慣れるとブレないなぁと思ったりする。
そうして二人を乗せた車は夜道を走り出す。
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