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ごぱいめ
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僕の2倍くらい体格の違うおじさんを電車から連れ出すのは苦行に思えたけど、放心して脱力したおじさんの腕を掴んで次の駅で引きずり降ろすのは意外と容易かった。
「大丈夫ですか?ほら、座ってください。」
「……………………。」
声をかけて駅のホームの椅子に座らせても口を開けたまま上の空。よっぽどショックだったのかな?飲み物でも買ってきてあげよう。
近くの自販機で温かいお茶を買ってきて戻っても、おじさんは微動だにしていなかった。
「おじさん、はい、飲めますか?」
お茶のキャップを開けて、手渡しする。ちゃっかり手を握ってしまった…すごいゴツゴツしてる!マッチョ触りたいなぁ!
「あ、あ…あ、りがとう…。」
おじさんは掠れた声で返事して、機械的にお茶を飲もうとしてネクタイに少し溢していたから熱そうで心配したけど、おかげで正気になったみたいだった。
「…何が、起こったんだ…?」
「おじさんが女子高生に痴漢疑惑投げられて、僕が割り込んで解決した、って感じです。」
簡潔!
「…………。」
しばし逡巡した後、両手でお茶のボトルを持った自分の手の甲を、おじさんはギリリッと爪で引っ掻いた。
「ちょっと、何してるんですか!」
目を離せなくて、隣に座って止めさせようとしたけど普通に力で負けた。筋肉は伊達じゃない。しかし彼は冷静だったようだ。
「君は彼女の知り合いか…?」
「いいえ、でもああいう釣りって良くありますし、おじさんは悪くないって知ってたから助けただけですよ。」
共犯と疑われたのかちょっとムッとする。
おじさんは再度、深いため息をついた。
「済まない…頭の中の整理が出来ない…。済まない、無関係の君の、その…個人情報まで…」
「あ、渡した電話番号ですか?あれテキトーですよ。」
「なっ…!?」
そんな、びっくりされましても。
「流石に僕、無実のおじさんにお金せびる女の子に本当の電話番号教えるの怖いですもん!さっきのは全部エ、ン、ギ!」
「そ、そうだったのか………済まない。」
「おじさん、謝ってばかりですねぇ。」
「…私にも年頃の娘がいる。」
「ふんふん。」
子持ち…パパかぁ、独身っぽくはなかったけど指輪してないから複雑なんだろうなぁ。
「お転婆だから毎日心配してる…その中でも、卑劣な犯罪には強い嫌悪感があった。自分は絶対しないと誓っていたのに、まさか疑われるなんて…。」
「それは残念でしたね…。」
既婚者か…でも相手がいないならいいかな?娘さんがいくつか知らないけどきっと愛情と肉欲には飢えて熟れ熟れだ…本気で勃起しそう…!そんなことで頭がいっぱいになった生返事だった。
おじさんは再度深々お詫びした。
「君、さっきは…キツく注意して済まない。私も未熟だな…人生何があるか分からない、嫌な思いさせたのに助けてくれてありがとう。」
「………あっ、いやいや全然!教えてくれてありがとうございました!言い方も優しくて絶対、痴漢なんてする人じゃないって思いましたから!」
「後日…お礼をさせて欲しい。名前を聞いてもいいかな?」
「花文です!花文蒼雨でっす!!!」
名前来た嬉しい!と思う前に自己紹介していた。本当の住所電話番号をペラペラと。これをきっかけにお礼はあなた…♡と迫ってトロトロに♡おじさんは丁寧にメモしていた。書き終えると安心した様子で今度は相手の自己紹介をされた。
「ありがとう、私は高橋皆人だ。」
「んっ?」
ん?んん???
…………………。
はっはっはっは、蒼雨、考え過ぎだ。
僕の彼女の名字が高橋だからって過剰反応し過ぎ。これが三流エロ作品なら、ええ!?彼女のオトウサン!?なんて展開だろうけどあり得ない。考えてもみて、この国に「高橋さん」が何人いるんだ。佐藤さんの次に多いんだぞ?もしかしたらそこに立ってる駅員さんの名前も高橋さんかもしれない。いやぁ焦った~~~。
この勢いで、言うことちゃんと言っとこう!
「高橋さん、僕があなたを助けたのはね、下心あってのことなんですよ。」
「な、なんだ?下心って…。」
戸惑うその手に、そっと軽く触れた。
「僕、あなたに一目惚れしたみたいです♡次にお会いする時を楽しみにしてます…♡」
「………っ!」
おっと、時間がやばい!彼女を待たせてしまう!
「では、また後日!」
さっきとはまた違う、驚きに放心した高橋さんを残して駅の出口へ駆ける。
今日は良い日だ…なんて良い日だ!♡
充足感に幸せを感じつつ、彼女の家までダッシュした。
「大丈夫ですか?ほら、座ってください。」
「……………………。」
声をかけて駅のホームの椅子に座らせても口を開けたまま上の空。よっぽどショックだったのかな?飲み物でも買ってきてあげよう。
近くの自販機で温かいお茶を買ってきて戻っても、おじさんは微動だにしていなかった。
「おじさん、はい、飲めますか?」
お茶のキャップを開けて、手渡しする。ちゃっかり手を握ってしまった…すごいゴツゴツしてる!マッチョ触りたいなぁ!
「あ、あ…あ、りがとう…。」
おじさんは掠れた声で返事して、機械的にお茶を飲もうとしてネクタイに少し溢していたから熱そうで心配したけど、おかげで正気になったみたいだった。
「…何が、起こったんだ…?」
「おじさんが女子高生に痴漢疑惑投げられて、僕が割り込んで解決した、って感じです。」
簡潔!
「…………。」
しばし逡巡した後、両手でお茶のボトルを持った自分の手の甲を、おじさんはギリリッと爪で引っ掻いた。
「ちょっと、何してるんですか!」
目を離せなくて、隣に座って止めさせようとしたけど普通に力で負けた。筋肉は伊達じゃない。しかし彼は冷静だったようだ。
「君は彼女の知り合いか…?」
「いいえ、でもああいう釣りって良くありますし、おじさんは悪くないって知ってたから助けただけですよ。」
共犯と疑われたのかちょっとムッとする。
おじさんは再度、深いため息をついた。
「済まない…頭の中の整理が出来ない…。済まない、無関係の君の、その…個人情報まで…」
「あ、渡した電話番号ですか?あれテキトーですよ。」
「なっ…!?」
そんな、びっくりされましても。
「流石に僕、無実のおじさんにお金せびる女の子に本当の電話番号教えるの怖いですもん!さっきのは全部エ、ン、ギ!」
「そ、そうだったのか………済まない。」
「おじさん、謝ってばかりですねぇ。」
「…私にも年頃の娘がいる。」
「ふんふん。」
子持ち…パパかぁ、独身っぽくはなかったけど指輪してないから複雑なんだろうなぁ。
「お転婆だから毎日心配してる…その中でも、卑劣な犯罪には強い嫌悪感があった。自分は絶対しないと誓っていたのに、まさか疑われるなんて…。」
「それは残念でしたね…。」
既婚者か…でも相手がいないならいいかな?娘さんがいくつか知らないけどきっと愛情と肉欲には飢えて熟れ熟れだ…本気で勃起しそう…!そんなことで頭がいっぱいになった生返事だった。
おじさんは再度深々お詫びした。
「君、さっきは…キツく注意して済まない。私も未熟だな…人生何があるか分からない、嫌な思いさせたのに助けてくれてありがとう。」
「………あっ、いやいや全然!教えてくれてありがとうございました!言い方も優しくて絶対、痴漢なんてする人じゃないって思いましたから!」
「後日…お礼をさせて欲しい。名前を聞いてもいいかな?」
「花文です!花文蒼雨でっす!!!」
名前来た嬉しい!と思う前に自己紹介していた。本当の住所電話番号をペラペラと。これをきっかけにお礼はあなた…♡と迫ってトロトロに♡おじさんは丁寧にメモしていた。書き終えると安心した様子で今度は相手の自己紹介をされた。
「ありがとう、私は高橋皆人だ。」
「んっ?」
ん?んん???
…………………。
はっはっはっは、蒼雨、考え過ぎだ。
僕の彼女の名字が高橋だからって過剰反応し過ぎ。これが三流エロ作品なら、ええ!?彼女のオトウサン!?なんて展開だろうけどあり得ない。考えてもみて、この国に「高橋さん」が何人いるんだ。佐藤さんの次に多いんだぞ?もしかしたらそこに立ってる駅員さんの名前も高橋さんかもしれない。いやぁ焦った~~~。
この勢いで、言うことちゃんと言っとこう!
「高橋さん、僕があなたを助けたのはね、下心あってのことなんですよ。」
「な、なんだ?下心って…。」
戸惑うその手に、そっと軽く触れた。
「僕、あなたに一目惚れしたみたいです♡次にお会いする時を楽しみにしてます…♡」
「………っ!」
おっと、時間がやばい!彼女を待たせてしまう!
「では、また後日!」
さっきとはまた違う、驚きに放心した高橋さんを残して駅の出口へ駆ける。
今日は良い日だ…なんて良い日だ!♡
充足感に幸せを感じつつ、彼女の家までダッシュした。
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