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③本編↓未工事(すごいえちえち)背後注意でお楽しみください。
ifモノ語 過充電1
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お知らせ
※人間さんたちのセリフは『』で
表示されます。
※批判的に思える表現を使うことを
悪しからずご理解くださいませ。
※あくまでフィクションとして
お楽しみください。
都内の小洒落た喫茶店…。
流行りのように華美ではないけれど、
木の温もりを感じて落ち着くと
マスターは気に入ってる。
最近はココアに夢中のようだ。
私は磨かれた清潔なテーブルの上で
きちんと正座をしてマスターと
ご友人の会話をBGMに多様な
コーヒー豆の香りを存分に楽しむ。
ただのスマホだけど私には名前がある。
マスターが設定した由海広という名前を
頂いた。
名前を貰うことはとても名誉なことで
誇らしく思う。
しかし最高画質、最高速度、最先端
技術の結晶と言われた華やかな時代は
とうの昔に過ぎ去ってしまった…。
マスターたちのお喋りが聞こえる。
『…ところでさ、あんたの携帯
随分古いよね。いつの型よ、それ。』
コアがドキリとした。
ご友人はマスターと特に仲がいい。
彼女の言葉をきっかけに私を破棄して
買い直すしれない…。
内心焦って恐ろしくて不安だが
メモリーのどこかでは仕方ない。と
分かっている。
何せ私は二年前の機種だ。
ヒトの感覚では最近のことでも
今の携帯技術なら二昔古いと私は思う。
ヒトで言えばいいおじさんだ。
イケメンモデルだなんて言われた
過去が恥ずかしい…。
ご友人のとげとげしい視線と
マスターの視線が二つ、一身に
注がれてドキドキする。
マスターが答えた。
『結構前かなー。使い勝手がよくて
手放せないのよ。画面も見やすいし
すごくお気に入りなの。』
『あんたって昔からモノを大事に
するよねー。私なんて見てっ!
新機種が出たから買い換えたのっ!』
マスターの柔らかい言葉に
ホッとしたのも束の間で、ご友人は
自身の最新機種を取り出して見せた。
「こんにちはっ!初めまして!」
「ど、どうもこんにちはです。」
若く聡明そうで美しい女性が
元気よく丁寧に挨拶してくれた。
昔の自分もそうだったかもしれない。
今のおじさんは自分の古臭さを隠せず
恥ずかしそうに身を縮めながら
小声で挨拶を返した。
細部までこだわって作られた彼女は
自信に満ち溢れて堂々としていて
さらに綺麗だ。
おろおろとマスターの顔色を窺う。
『また~?あなたこそ新しいものに
気が移りすぎよ。でも可愛いね。
その携帯。』
「…っ!」
スピーカーを塞いでも声が聞こえる。
『でしょでしょ?いいのよ、これ。
一番気に入ってるのは充電の速さかな。
ほっといたらいつの間にか満タンに
なってくれて長持ちするのよ~。』
『へぇ、そうなんだ?』
マスターが丁寧に使ってくれている
けれど私の磨耗したバッテリーは
最近…すぐに電池が切れてしまう。
…正直充電も疲れ気味だ。
『まだ使いたいから、私の方は
バッテリーだけでも代えようかな…』
『それならいっそさ~。』
もうお二人の話は私で持ちきり。
コアが痛むような気がして
気の遠くなるような時間だった。
結局マスターはやんわりと断って
その日は終了した。
私のデータも日々更新されるけど、
ご友人だって最初は私をちやほやして
可愛がってくれた。
ヒトは変わってしまうんだ…。
それならいつか、マスターだって…。
いやいや、自分のマスターを
信じなくてどうする。
未来に不安を感じてる場合ではない。
自分に出来ることは今精一杯、
仕事に尽くすことだろう。
気持ちを切り替えて、
電子部品を一気に冷却する。
そんな葛藤に、日々悩まされていた。
『ただいま~、っと。』
独り暮らしをしてるマスターの
マンションに帰ってくると、
少し冷えた指先でそっとバックの
中から取り出された。
慣れたタップで画面を確認すると…
『あ、もう20%だ…。充電しとこ。』
「すみません、マスター。」
不甲斐ない自分の謝罪は
マスターには届かない。
それでも申し訳ない
メモリーでいっぱいだ。
いつものベッドサイドテーブルの上に
置いてもらう。
「やあ、お帰り。由海広さん。」
「ただいまです。」
黒々した清潔な短髪に日に焼けた
健康的な肌。がっちりした逞しい
青年が優しい笑顔で出迎えてくれる。
彼は私の充電器。
私の…というより仕事仲間の友人だ。
それ以上の感情はない。
「外は寒かった?」
「ええ、本日の天気は最高気温
24度でしたがいきつけの店内の冷房が
普段より2度低く設定されていて
冷えて…ちょっと疲れました。」
「お疲れ様。早速だけど、
充電するみたいだね。」
マスターを確認して、彼が言った。
「はい、お願いします。」
これもいつも通り…。
彼がジーンズの隙間から雄々しい
コードを取り出した。
見慣れたもので感想は特にない。
私の仕事はマスターに情報を
提供したり記憶することだけではない。
充電することもマスターを支えるため
必要な仕事なんだ。
特にそれ以外に思うことはない。
するりとズボンと下着を脱ぐ。
そして充電口が分かりやすいように
床に手と膝ついて腰を上げた。
「よっ…接続するよ。」
「はい。」
ケースを抱えた彼が位置を調整して、
正しく結合した。
「ん…っ。」
充電が始まったがこれは仕事だ。
なんの気持ちの高ぶりもなく
単調に受け入れた。
つづきます→
※人間さんたちのセリフは『』で
表示されます。
※批判的に思える表現を使うことを
悪しからずご理解くださいませ。
※あくまでフィクションとして
お楽しみください。
都内の小洒落た喫茶店…。
流行りのように華美ではないけれど、
木の温もりを感じて落ち着くと
マスターは気に入ってる。
最近はココアに夢中のようだ。
私は磨かれた清潔なテーブルの上で
きちんと正座をしてマスターと
ご友人の会話をBGMに多様な
コーヒー豆の香りを存分に楽しむ。
ただのスマホだけど私には名前がある。
マスターが設定した由海広という名前を
頂いた。
名前を貰うことはとても名誉なことで
誇らしく思う。
しかし最高画質、最高速度、最先端
技術の結晶と言われた華やかな時代は
とうの昔に過ぎ去ってしまった…。
マスターたちのお喋りが聞こえる。
『…ところでさ、あんたの携帯
随分古いよね。いつの型よ、それ。』
コアがドキリとした。
ご友人はマスターと特に仲がいい。
彼女の言葉をきっかけに私を破棄して
買い直すしれない…。
内心焦って恐ろしくて不安だが
メモリーのどこかでは仕方ない。と
分かっている。
何せ私は二年前の機種だ。
ヒトの感覚では最近のことでも
今の携帯技術なら二昔古いと私は思う。
ヒトで言えばいいおじさんだ。
イケメンモデルだなんて言われた
過去が恥ずかしい…。
ご友人のとげとげしい視線と
マスターの視線が二つ、一身に
注がれてドキドキする。
マスターが答えた。
『結構前かなー。使い勝手がよくて
手放せないのよ。画面も見やすいし
すごくお気に入りなの。』
『あんたって昔からモノを大事に
するよねー。私なんて見てっ!
新機種が出たから買い換えたのっ!』
マスターの柔らかい言葉に
ホッとしたのも束の間で、ご友人は
自身の最新機種を取り出して見せた。
「こんにちはっ!初めまして!」
「ど、どうもこんにちはです。」
若く聡明そうで美しい女性が
元気よく丁寧に挨拶してくれた。
昔の自分もそうだったかもしれない。
今のおじさんは自分の古臭さを隠せず
恥ずかしそうに身を縮めながら
小声で挨拶を返した。
細部までこだわって作られた彼女は
自信に満ち溢れて堂々としていて
さらに綺麗だ。
おろおろとマスターの顔色を窺う。
『また~?あなたこそ新しいものに
気が移りすぎよ。でも可愛いね。
その携帯。』
「…っ!」
スピーカーを塞いでも声が聞こえる。
『でしょでしょ?いいのよ、これ。
一番気に入ってるのは充電の速さかな。
ほっといたらいつの間にか満タンに
なってくれて長持ちするのよ~。』
『へぇ、そうなんだ?』
マスターが丁寧に使ってくれている
けれど私の磨耗したバッテリーは
最近…すぐに電池が切れてしまう。
…正直充電も疲れ気味だ。
『まだ使いたいから、私の方は
バッテリーだけでも代えようかな…』
『それならいっそさ~。』
もうお二人の話は私で持ちきり。
コアが痛むような気がして
気の遠くなるような時間だった。
結局マスターはやんわりと断って
その日は終了した。
私のデータも日々更新されるけど、
ご友人だって最初は私をちやほやして
可愛がってくれた。
ヒトは変わってしまうんだ…。
それならいつか、マスターだって…。
いやいや、自分のマスターを
信じなくてどうする。
未来に不安を感じてる場合ではない。
自分に出来ることは今精一杯、
仕事に尽くすことだろう。
気持ちを切り替えて、
電子部品を一気に冷却する。
そんな葛藤に、日々悩まされていた。
『ただいま~、っと。』
独り暮らしをしてるマスターの
マンションに帰ってくると、
少し冷えた指先でそっとバックの
中から取り出された。
慣れたタップで画面を確認すると…
『あ、もう20%だ…。充電しとこ。』
「すみません、マスター。」
不甲斐ない自分の謝罪は
マスターには届かない。
それでも申し訳ない
メモリーでいっぱいだ。
いつものベッドサイドテーブルの上に
置いてもらう。
「やあ、お帰り。由海広さん。」
「ただいまです。」
黒々した清潔な短髪に日に焼けた
健康的な肌。がっちりした逞しい
青年が優しい笑顔で出迎えてくれる。
彼は私の充電器。
私の…というより仕事仲間の友人だ。
それ以上の感情はない。
「外は寒かった?」
「ええ、本日の天気は最高気温
24度でしたがいきつけの店内の冷房が
普段より2度低く設定されていて
冷えて…ちょっと疲れました。」
「お疲れ様。早速だけど、
充電するみたいだね。」
マスターを確認して、彼が言った。
「はい、お願いします。」
これもいつも通り…。
彼がジーンズの隙間から雄々しい
コードを取り出した。
見慣れたもので感想は特にない。
私の仕事はマスターに情報を
提供したり記憶することだけではない。
充電することもマスターを支えるため
必要な仕事なんだ。
特にそれ以外に思うことはない。
するりとズボンと下着を脱ぐ。
そして充電口が分かりやすいように
床に手と膝ついて腰を上げた。
「よっ…接続するよ。」
「はい。」
ケースを抱えた彼が位置を調整して、
正しく結合した。
「ん…っ。」
充電が始まったがこれは仕事だ。
なんの気持ちの高ぶりもなく
単調に受け入れた。
つづきます→
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