こいちゃ![R-18]

蒼い色鉛筆

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③本編↓未工事(すごいえちえち)背後注意でお楽しみください。

館内はお静かに 中編

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ここの映画館のコーヒーは、
良い豆を挽いて作られているようだ…。

濃いだけじゃない、苦味と酸味が
深い味わいで…すごく美味しい…。

由海広ユミヒロは、まだ温かいコーヒーを
少しずつ口に含み、味を楽しむ。

バァン!

「…っ、」

スクリーンの大きな音に驚いて正面を向く。

通い始めた最初の頃は、
映画館の音量に慣れなかったが
今は大きな音じゃなければ大丈夫。

コーヒーを楽しむ余裕さえあると思うと
私も少し、映画館通だったり…?

「ふふふ…」

迫力満点のエフェクト…は
二度目まではすごい興奮したけど…
少し慣れてしまったようだ。

正面のスクリーンよりも
ちら、と隣の席の燃夏モカくんを見た。

お気に入りのシーンのようで
がっつり目線が前を向いている。
しかしキャラメルポップコーンは
さくさくと彼に咀嚼され確実に減っている。

映画に釘付けになりながら、器用だ…。

思わず感心してしまう。

聞こえないようにクス、と笑って
なんとなく手元を見た。

ちょっと寂しいところもあるけど、
好きな物に夢中になれるのもいいことだ…。

スクリーンは盛り上がっているが、
視線だけで館内を見回す。

一番後ろの席って…いいかも…。

端っこだからよく見えないかと
心配していたけれど椅子の角度が
ちゃんと調整されていて、
不自由なく映画を楽しめる。

前三列空いているので前回のように
前後左右のお客さんの些細な反応に
びくびく怯える必要もない。

のびのび寛いで、モカくんの手を繋いで
いないほうの手でコーヒーを啜る。

やっぱり美味しい…。
帰りにもう一杯、買って帰ろうかな…。

真剣に悩むほど美味しい。

だけど…結構なピンチが迫っている…。

昨日多少残業して深夜に帰って来て
寝不足のまま映画館に来たからか…。

眠い…。

とろとろ瞼が重くなる。
穏やかな眠りの世界に導かれてしまう…。

少しでも眠くならないように
ホットコーヒーを選んだけど、
カフェインを摂取しすぎて私の体は
麻痺しているようで…、全然眠い。

話の展開が読めているとはいえ
映画館で寝るのは映画にも、
モカくんにも失礼になってしまう…。

そう思いながらも、瞼がジワリ温かくて
今にも閉じてしまいそうだ…。

寝るな、眠っちゃダメだ由海広…。

「んん…っ。」

太ももの肉をつねり、覚醒を促す。

だがその痛みも鈍くなるほど眠い…。

ユラユラ前後に揺れて船を漕いでしまう。

もはやあまり画面が見えていない…。

空調も丁度いいし、座り心地もいい…。
そうだ、モカくんに起こしてもらうよう
助けを求めよう…。

意識の淵で名案を思いつくが、
すぐに愚策と気づく。

パシパシ瞬きする回数が多くなる。

ぼんやり意識がまどろんできた…。

私は…なんて説明するつもりだ…?
モカくんは何度観ても楽しみで
映画館に来ているのに、
「眠いからちょっと起こしてくれる?」
なんて…そんなこと絶対言えない。
例え声を掛けても
絶対そうは言わないけど…。

なんて…声を…?コーヒー…温かい…?

「……………。」

考える隙をつかれて睡魔に襲われ…、
由海広は完全に…目を閉じてしまった。







ふわふわ…暗くて…温かくて…心地いい…。
小声で名前を呼ばれてる気がする…。

「…さん…、みさん…。」

モカくんの声かな…。
ここは家…?じゃない…どこだっけ…。

「…海さん、そんなに積極的に
迫られると…俺、我慢出来なくなりますよ」

「…っ!!」

セクシーな彼の囁く声に、カッと目が開く。

キョロキョロ、その場で現状確認。
ここは映画館で、まだ上映中だ。

モカくんの胸に頭を預けて
随分がっつり寝ていたようだ。

危ない…。普段の声でつい、
「モカくんすき…」とか答える所だった。

一人胸の中でピンチを
乗りきって、ほっとする。

落ち着く間もなくはっと顔を上げて
今まで眠らせてくれた彼を見た。

ニコニコしてるのに、表情が読めない…。
心なしか、怒ってる…?ようにも見える。

「ご、ごめんね…モカくん。」

急いで小さい声で謝って、席に戻る。

もたれていた体がピキッとひきつった。
映画を観ても、大分終盤の様子。

思った以上に寝てたみたい…。

モカくんも、もう正面を向いたかな…?

そう思いながら、おそるおそる
視線を隣に向けてみる。

「………。」

まだ、変わらないニコニコ顔で
私の方を見ていた。

ちょっぴり、背筋がぞくっと冷えた…。

「え、えと…っ。確かこの後の展開、
すごいよね…!負けそうだった主人公が
見事、大逆転するとこだよね?」

笑顔をお返しして、
あからさまに話題を逸らす。

ようやく彼も、自分の席にゆったり収まる。

「そうですね。…でも気にせず、
休んでてくださいね。」

あ、拗ねてる…。

申し訳ない気持ちがチクチク心を刺す。

いつの間にか離れていた手を
もう一度ぴたりと重ね合わせる。

今度は反射ではなく、
しっかり心を込めて小さな声で謝る。

「途中寝ちゃってごめんね…。
最後までは、二人で観たいな…。」

「……でも海さん、眠いでしょ?」

彼の口調はまだ拗ねている。

多分背けた顔の向こうでは
ツンと唇を尖らせて、それでも
言葉を選んで抗議をしてくれている…。

「ぅく…。」

だが鋭いところを指摘されて小さく呻く。

目は覚めたけど、正直まだ眠い。

スクリーンをぼんやり眺めていたらまた、
心地よく眠ってしまうかもしれない…。
ダメだ、それだけはダメだ…!

口に出さないように、心の中だけで焦る。

すると…彼から思わぬ提案をされた。

「…俺が、眠らせないように
刺激しましょうか?それなら最後まで
なんとか起きていられますよね?」

「おぉ、それいいね…!」

簡単に気の効いた対応を思いつくなんて
本当に彼はすごい…!と感動する。

小声で彼の名案を二つ返事で頷いた。

モカくんは、再度にっこり笑顔になる。

「それじゃあ、あと少し…。
頑張って起きてて下さいね?」

「ん!…分かった…!」

目を輝かせてしっかり了承する。

方法はなんだろう…?
寝そうになったら肩を揺するとか
手を握って起こしてくれるとか、かな?

この時…すっかり忘れていた。

彼の笑顔は、裏の計れない、
どこか怒りを感じた表情であったことを…。

「ん…?」

スルリとほどかれた手で
足の間を撫でている現状が理解出来ず…
呆けて見つめていた。








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