こいちゃ![R-18]

蒼い色鉛筆

文字の大きさ
上 下
114 / 200
③本編↓未工事(すごいえちえち)背後注意でお楽しみください。

館内はお静かに 前編

しおりを挟む
独りの時は、映画館なんて無縁だった。

映画館で好きな映画を観ようなんて
考えたこともなくて、
自宅でDVDを観るくらい。

それが燃夏モカくんとデートをするように
なってから、随分と身近な存在になった。

二人とも映画好きで、今では毎月
お気に入りの映画をチェックしている。

「すみません、ポップコーンの塩味と
キャラメル味Mサイズを一つずつ。
飲み物はホットコーヒーMと緑茶Mを。」

何度も繰り返し注文するうちに、
口下手の由海広ユミヒロもいつものメニューは
一息でスラスラ言えるようになった。

代金を支払い、ケースに入れてもらって
映画のお供を大事に胸に抱える。

背を向けたカップルやグループの間を
慎重に縫って歩いて行き、
上を向いてモカくんの姿を探す。

「お待たせしました、海さん。」

ぽんっと背中を叩かれ、振り返る。

「んーん、今終わったとこだよ。」

ほっと一安心した笑顔のモカくんは、
しっかりチケットを二枚握っている。

「チケットありがとうね。」

「いえ、もう少し時間があるので
椅子に座りましょうか。」

「そうだね。」

ポップコーンを落とさないように
気をつけて、二人分の空席を見つけて
同時に腰を落ち着けた。

さりげなく手が伸びてきて、
キャラメルポップコーンを一つまみ。

「あっ、映画観るときのお供が減るよ?」

「キャラメルは出来立てが最高なんです。
ふふふ、味見ですよ。」

上機嫌のモカくんは
美味しそうに咀嚼している。

リスみたいで可愛いけど、
二度目がないように
ポップコーンを彼から遠ざけた。

「あぁ、もう一口…。」

物欲しそうに手を出されても
心を鬼にして頭を左右に振った。

「だーめ、この前もそう言って…
ほとんど全部食べたこと忘れてないよ。」

「むう…。」

しょぼん、と残念そうなモカくん。

緑の宝石のようなキラキラした
瞳が涙に潤むと、良心がチクチク痛む。

一口くらい…あげてもいいかな…。
揺らぐ心を別の話題で逸らす。

「欲しい席、とれた?」

「もちろん。バッチリです。」

「スゴいね…。ネットで席が
予約出来るなんてイマドキ便利だね。」

純粋に感心した。

おじさん、仕事以外のパソコンは
ちんぷんかんぷんで…。
予約はモカくんに任せっきりだった。

「ちなみに、映画は…?」

彼が、申し訳なさそうに笑う。

「すみません、この前、
観た映画と…同じやつです…。」

「あ、そうだったね。
えっと確か…、三回観てスタンプが
貯まると特典が貰えるんだっけ。」

「そうなんです…!
そしてこれが限定キーホルダーです!」

「おおーっ、」

モカくんは誇らしげに
小さなキーホルダーを掲げた。

彼が好きな映画のシリーズのやつだ、
名前は…忘れたけど、一番お気に入りの
ヒーローだ。名前は忘れちゃったけど…。

「ちゃっかり海さんの分も
貰っちゃいました…。」

保存用、ってやつかな?

好きな人に渡ってこそ、
キーホルダーも輝く物だ。

「ん、モカくんが嬉しいほうが
私も嬉しいからいいんだよ。」

「ありがとうございます…!」

大事にキーホルダーを仕舞うモカくん。
はしゃぐ姿がかわいいな…。

時間を確認した彼は、
もう一度申し訳なさそうに私を見た。

「海さんさすがに…、
同じ映画は飽きちゃいますよね。」

「ん?別に、楽しいから平気だよ。」

「俺は飽きました…。」

君のほうが飽きちゃったか。
正直に言い切ったなぁ。

確かに、限定DVDもしっかり予約してるし
限定キーホルダーのスタンプのために
連続で映画館に来ているから、
映画の内容はもう覚えているけど…

「で、デートだから…。」

二人でいるから楽しい…、と
消えるような声で呟いた。

恥ずかしくなって赤面して俯いたが、
モカくんにはバッチリ聞こえたようだ。

「あまりかわいいこと言わないで下さい…
襲えないじゃないですか。」

「……っ、ご、ごめんね…。」

残念そうに囁く口ぶりが色っぽくて、
ついドキドキしてしまう。

公共の場でゴクリと喉を鳴らしてしまった。

「…間もなく上映の時間です…」

アナウンスを聞いて、同時に顔を上げる。

「あっ、そろそろですね。」

「ん!行こうか。」

ぞろぞろ動く人の波に従って動く。

スタッフさんの案内の声を聞いて、
少しずつホールへ誘導されて歩いていった。






つづきます→
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...