こいちゃ![R-18]

蒼い色鉛筆

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③本編↓未工事(すごいえちえち)背後注意でお楽しみください。

館内はお静かに 前編

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独りの時は、映画館なんて無縁だった。

映画館で好きな映画を観ようなんて
考えたこともなくて、
自宅でDVDを観るくらい。

それが燃夏モカくんとデートをするように
なってから、随分と身近な存在になった。

二人とも映画好きで、今では毎月
お気に入りの映画をチェックしている。

「すみません、ポップコーンの塩味と
キャラメル味Mサイズを一つずつ。
飲み物はホットコーヒーMと緑茶Mを。」

何度も繰り返し注文するうちに、
口下手の由海広ユミヒロもいつものメニューは
一息でスラスラ言えるようになった。

代金を支払い、ケースに入れてもらって
映画のお供を大事に胸に抱える。

背を向けたカップルやグループの間を
慎重に縫って歩いて行き、
上を向いてモカくんの姿を探す。

「お待たせしました、海さん。」

ぽんっと背中を叩かれ、振り返る。

「んーん、今終わったとこだよ。」

ほっと一安心した笑顔のモカくんは、
しっかりチケットを二枚握っている。

「チケットありがとうね。」

「いえ、もう少し時間があるので
椅子に座りましょうか。」

「そうだね。」

ポップコーンを落とさないように
気をつけて、二人分の空席を見つけて
同時に腰を落ち着けた。

さりげなく手が伸びてきて、
キャラメルポップコーンを一つまみ。

「あっ、映画観るときのお供が減るよ?」

「キャラメルは出来立てが最高なんです。
ふふふ、味見ですよ。」

上機嫌のモカくんは
美味しそうに咀嚼している。

リスみたいで可愛いけど、
二度目がないように
ポップコーンを彼から遠ざけた。

「あぁ、もう一口…。」

物欲しそうに手を出されても
心を鬼にして頭を左右に振った。

「だーめ、この前もそう言って…
ほとんど全部食べたこと忘れてないよ。」

「むう…。」

しょぼん、と残念そうなモカくん。

緑の宝石のようなキラキラした
瞳が涙に潤むと、良心がチクチク痛む。

一口くらい…あげてもいいかな…。
揺らぐ心を別の話題で逸らす。

「欲しい席、とれた?」

「もちろん。バッチリです。」

「スゴいね…。ネットで席が
予約出来るなんてイマドキ便利だね。」

純粋に感心した。

おじさん、仕事以外のパソコンは
ちんぷんかんぷんで…。
予約はモカくんに任せっきりだった。

「ちなみに、映画は…?」

彼が、申し訳なさそうに笑う。

「すみません、この前、
観た映画と…同じやつです…。」

「あ、そうだったね。
えっと確か…、三回観てスタンプが
貯まると特典が貰えるんだっけ。」

「そうなんです…!
そしてこれが限定キーホルダーです!」

「おおーっ、」

モカくんは誇らしげに
小さなキーホルダーを掲げた。

彼が好きな映画のシリーズのやつだ、
名前は…忘れたけど、一番お気に入りの
ヒーローだ。名前は忘れちゃったけど…。

「ちゃっかり海さんの分も
貰っちゃいました…。」

保存用、ってやつかな?

好きな人に渡ってこそ、
キーホルダーも輝く物だ。

「ん、モカくんが嬉しいほうが
私も嬉しいからいいんだよ。」

「ありがとうございます…!」

大事にキーホルダーを仕舞うモカくん。
はしゃぐ姿がかわいいな…。

時間を確認した彼は、
もう一度申し訳なさそうに私を見た。

「海さんさすがに…、
同じ映画は飽きちゃいますよね。」

「ん?別に、楽しいから平気だよ。」

「俺は飽きました…。」

君のほうが飽きちゃったか。
正直に言い切ったなぁ。

確かに、限定DVDもしっかり予約してるし
限定キーホルダーのスタンプのために
連続で映画館に来ているから、
映画の内容はもう覚えているけど…

「で、デートだから…。」

二人でいるから楽しい…、と
消えるような声で呟いた。

恥ずかしくなって赤面して俯いたが、
モカくんにはバッチリ聞こえたようだ。

「あまりかわいいこと言わないで下さい…
襲えないじゃないですか。」

「……っ、ご、ごめんね…。」

残念そうに囁く口ぶりが色っぽくて、
ついドキドキしてしまう。

公共の場でゴクリと喉を鳴らしてしまった。

「…間もなく上映の時間です…」

アナウンスを聞いて、同時に顔を上げる。

「あっ、そろそろですね。」

「ん!行こうか。」

ぞろぞろ動く人の波に従って動く。

スタッフさんの案内の声を聞いて、
少しずつホールへ誘導されて歩いていった。






つづきます→
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