こいちゃ![R-18]

蒼い色鉛筆

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③本編↓未工事(すごいえちえち)背後注意でお楽しみください。

歌って聞かせて! 中編

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「へぇえ…」

しっかりした壁作り、綺麗な内装。
天井には輝く小さなミラーボール。

由海広ユミヒロは感動のため息をつく。

学生時代にカラオケなんて明るい雰囲気の
場所には行ったことがなくて…
燃夏モカくんに誘われて初めて経験した。

興味津々に室内を見回す。

「なんか、ちょっと暗いんだね?」

「ん、ここで調整できますよ。」

「おおー!」

モカくんは慣れた手つきで
部屋の明かりを調整した。

おじさん感動だよ…!

モカくんに誘導してもらい、
奥のソファーに丁寧に腰かける。

扉を閉めたモカくんは隣のソファーに
座ってメニュー表を取り出す。

「海さん飲み物、先頼みます?」

微かに聞こえる隣の歌声に
気を取られていた。

「んん?どして?」

「歌ってる間に店員来たら恥ずいなって…」

「……ほぅ」

照れ笑いするモカくんかわいいな…。

しかし勉強になる。

確かにそういうシチュエーションは
恥ずかしいだろうな…。

「メニュー表見せてー。」

「んっ、どぞ。」

テーブルの上に広げた
ドリンク一覧を二人で眺める。

なんだかお洒落な飲み物や
お酒なんかも置いてあるんだなぁ…。

「ん~、コーヒーかな。」

「はーい。」

モカくんは素早い動作で受話器を取る。
私、そんなの見えてなかった…。

「コーヒー1つとコーラ1つ。」

「…かっこいい……」

短く注文したモカくん、
すごいベテランでかっこいい…!

受話器を置いたモカくんがため息をつく。

「ちょっと、海さんあんまり
かわいいこと言わないでくださいよ。
歌いに来たんですよ?」

「?…へ、変なこと言ったかな?」

「言いました。キスしますよ?」

「ふぁあ…っ」

ぐっと顔を近づけた彼。

甘い声で囁かれると下腹部に響く…っ!

「んむっ、」

「…ふふ。」

触れるだけの短いキスなのに…、
いけないことしてて
すごくドキドキしてしまう…。

ちら、っと入り口を見た。

ガラスの扉は殆どすりガラスと
チラシで覆われているが、
何故か足元と上の方は透き通ったガラスだ

そんなことはないと思うけど、
どちらからでも
覗き込まれたら見えてしまう。

もし、もし…イケナイことしてたら…っ。

「……っ。」

これ以上考えてはいけない、と
メニュー表に目を落とす。

「も、モカくん、先に歌っていいよ。」

「そうですか?俺、
海さんの歌も聞きたいですけど。」

「ん、ん~っ、あとで…。」

ちょっとえっちな妄想して
気持ちが落ち着かない。

読んでるふりをするので精一杯だ。

「それじゃあ、数曲先に入れますね。」

「ん!いいよー。」

ピピピピピッ!

「!?」

携帯かと思ったらモカくんが
目にも止まらぬ早さで曲を入力してた。

初めて見た訳じゃないけど、
相変わらず、すごさに圧倒される。

「?」

口を開けて呆けていると彼も首を傾げる。

若い人にはこれくらい当然なのか…?
ますます自分がおじさんであることを
自覚すると同時に、そんなことないと
自分自身を誤魔化す。
まだ、な、慣れてないだけだから…!

コンコン

「コーヒーとコーラお持ちしました~」

「どうも。」

扉側のモカくんが膝をついた
店員さんからお盆を受け取り、扉を閉めた

なるほど、確かに歌う前なら
店員さんが来ても気まずくならない。

熱唱中だったら少し恥ずかしいかな…。

「はい、海さんコーヒーです。」

「ありがとー。」

いい香りのコーヒーカップを受け取り、
一口味わう。中々美味しい…。

「んんっ、それじゃお先します。」

「待ってました~!」

自然とマイクを握ったモカくんが
咳払いして立ち上がる。
ぱちぱち、と拍手で迎える。

すっ、と口元にマイクを
寄せる動作がすごく似合う。

なんというかテレビのアイドルみたいだ。
素直にかっこいい。

♪~…

おお、彼の十八番のイントロだと
気づいて気持ちがわくわくする。

モカくん、すごい上手いんだよね…。

「♪~……。」

「……。」

違和感のないアレンジ。
モカくんの声で響く甘く切ない声。
滑らかな息継ぎは彼の世界観に
引き込まれてしまう…。

「……。」

じんわり涙ぐんでしまう。
それだけ彼の歌には「力」がある。
言葉一つ一つさえ、胸に熱く響く。
そっと目頭を指で押さえた。

♪~♪~…

「♪~…♪~~……。」

「…素晴らしい!!!!」

歌い終わると同時に
割れんばかりの拍手を送る。

照れを誤魔化す彼は頭を
わしゃわしゃ掻いている。

「久しぶりだからちょっと鈍ってます…」

「そうかな…、いつでも最高だよ…!」

「…ほんっと押し倒しますよ?」

「ん?」

マイクを切ってモカくんが何か呟く。

由海広は滲んだ涙を気づかれないように
拭うのに必死になっていた。

♪~…

「おおっ、」

続いて二曲目も聞いたことある。

マイクを構えたモカくんをそっと見守る。

「…♪~…。」

「ぉぉ…。」

つい、一緒に口ずさんでしまいそうだ。

それは勿体ないのでコーヒーを含み、
耳を澄ませて彼の世界に浸る。

本当に最高だ…。

「まるでライブを聞いてるみたいだよ。」

「…それは褒めすぎです…。」

間奏でモカくんは、ふいっとそっぽ向いた

耳が赤くなってる。かわいいな。

歌が上手い彼に何度もアンコールする。
ノリノリのモカくんも答えてくれて
歌を聞いていると、一時間なんて
あっという間に過ぎた。

「そろそろ海さんの歌を聞きたいです。」

「んえ!…わ、私はいいよぉ…。」

喉をさするモカくんは、
どさっと椅子に座って休憩する。

一度も触っていない
タッチパネルを寄越された。

「俺海さんの歌好きですから。
聞きたいなぁ。ほら、よく歌うあの曲…」

残りのコーラを飲み干した彼は
額の汗を拭い、優しく言ってくれた。

「ん、んんん…」

折角歌いに来たし…、
そこまで良く言ってもらうと嬉しくなる。

ピ…、ピ…ピ…。

一文字ずつ曲名を入力する。

ガチャ

「コーラもう1つ。」

モカくんが注文している間、
色々早さとか高さとか設定画面に
移るけどよく分からないので
そのまま曲を設定する。

「海さんスタートは?」

「…コーラ来てから…。」

恥ずかしいから…。

ちびちびコーヒーを飲む。

コンコン

ノックでコーラを受け取った彼が
しっかり扉を閉めたのを確認して、
開始ボタンを押した。

歌うの緊張する…。

座ったまま画面を食い入るように見る。
隣でモカくんがニコニコしてるのが
ちらりと見えた。

「…♪~。」







燃夏は機嫌よく由海広の歌に耳を澄ませる

海さんは歌うことを恥ずかしがるけど
全然音痴ではない。

むしろ常人より上手い方だ。

低く落ち着いたセクシーな声が
とても心地いいけど…。

なんで歌うのが全て国民的アニメの
オープニングなのか…!

とりあえずかわいい。
そして才能の無駄遣いとはこのこと。
いやすごい萌えるから無駄じゃないか。

有名な映画の主題歌も歌うけど…、
流行に流されない、好きな歌を歌う
海さんが俺は好きだ。

かわいいからって笑うと
彼は拗ねてマイクを置いてしまうので、
にやけるのを我慢しながら歌を聞く。

一曲歌うと疲れて脱力する海さんと
交代しながら歌い、また一時間が過ぎた。






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