こいちゃ![R-18]

蒼い色鉛筆

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③本編↓未工事(すごいえちえち)背後注意でお楽しみください。

どうも、鷹橋です。 中編

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左藤サトウ燃夏モカは自分の耳を疑った。

大好きな恋人である優沢ユサワ由海広ユミヒロさんから
昼休憩で電話を貰ったときはウキウキ
気分で折り返し電話を掛けた。

泣きじゃくる恋人の
ただならぬ様子に肝が冷えた。

そして?なんだって?

受付令嬢から交際を迫られている?

それだけでも腹立たしいのに、
海さんが断ったら復讐に
ストーカーを決意された?

燃夏は今まで特定の誰かに
激しい怒りを感じたことはない。

しかし今回は怒り狂い、相手の顔面が
潰れるまで後悔させてやりたいという
燃夏らしくないほどまでの激情を抱いた。

「ごめんっ…ごめんね、モカくんっ…
私、私どうしたらいいかっ…こんなっ…
こんな、困ること…っ!」

逃げ出した屋上で縮こまる
海さんの姿が容易に想像できる。

そして、ずっと泣いている。

あの人を泣かせてもいいのは俺だけだ。
俺だけ。それ以上に幸せを感じて欲しいと
願い、実行する自信があるからだ。

そういう嫉妬の観点でも、燃夏の怒りは
抑えきれないほど膨れ上がる。

「海さん、話してくれてありがとう。
怖かったですね。頑張りましたね。」

「ひっ…、ひっ、ひっく…、ぐすっ…」

撫でてあげたい、恐怖で震える彼を
抱き締めて、安心させてあげたい。

届かない距離がもどかしい。
俺に出来るのは、現状を誤魔化すだけ…。

「私、私っ…!」

「海さん、帰りにいつものカフェに
寄りましょう?大丈夫、いつでも
不安になったら電話を掛けてください。
二人で会いましょう?」

「んっ、うん…、わ、わわかった…。」

海さんは混乱している。

仕事に戻ればたちまち切り替え、
仕事の間だけは安定するはずだ。

今、彼が電話を握りしめて
離さない姿まで目に見えるようだ。

「大丈夫、俺がいますから。
海さん、愛してます。」

「ありがとう…ありがとう、モカくん…」

唾を飲み込む音が聞こえる。
そして、唐突に切れた電話。
彼は意を決して、電話を切ったのだろう。

「………。」

沸き上がる怒りと憎しみは殺意に近い。

しかし、嫌いなものはいつでも
壊して解決出来るものではない。

燃夏は自分の全てを掛けてでも
由海広を守ることを己に誓う。





仕事終わりと同時に繋がる電話。

由海広が不安に押しつぶれそうになり、
カフェから電話を掛けていた。

それが途絶えないように
燃夏も別の話題で気をそらし、
話を続けながらカフェへ向かう。

到着と同時に由海広を探し、見つけた。

いつもの席とは違い奥の方で怯えている。

可哀想に…。
お茶を喜んで嗜む彼の姿はまるでない。

「海さん…っ!」

「ごめんね、ごめんねモカくん…っ」

「謝らないで下さい。怖かったのは
海さんでしょう?だから謝らないで。」

いつもの顔と全然違う。
目を剥いてカタカタと震える由海広。

同じソファーの隣に座り、
守るように由海広を壁際に押し込む。

「大丈夫、大丈夫。」

「は、は、っ…はひゅ…」

肩をとん、とん、とゆっくりたたく。

過呼吸になりかけた
由海広の呼吸が少しだけ落ち着く。

「俺が守ります。海さん、
俺に守らせて下さい。お願いします。」

「そん、そそんな、…どっどうしたら…」

俺相手に言葉がどもるとは…。
相当のストレスに耐えているのだろう。

「俺が相手に言います。
俺の海さんに近づくなと。…。」

力ずくで、と言いかけた。

しかし現実でそんなことすれば
一番に迷惑が掛かり、
自分を責めるのは海さんだ。

そして俺だって鉄格子行き。

海さんを守れないし、暴力で解決する
大人をよく知っているのでそれは
避けなければならなくなった。

「誰が、誰に言うんですの?」

冷たい女の声。

「……っ!!」

ばっ、と立ち上がり、海さんを背後に
隠し敵意むき出しで相手を睨む。

化粧で粉が噴いているけばけばしい女だ。

30代、いや20代後半か。
やけに小さい女だ。

目に刺さる赤の飾りを強調し、
顔は狐に似ている。
呆れた表情をしながら
テーブルの前で斜に構えている。

「…お前がストーカーか。」

「失礼ですね。ワタシはお付き合いを
お願いしてるだけですよ?
由海広さんが恥ずかしがるので、
ワタシが心を鬼にして
アピールしてるだけですよ?」

「それでなんだよっ…!付き合う相手は
怯えてるじゃねえか!!」

「……ははーん…」

女が鼻で笑う。

「そちらが恋人、ですか?由海広さん。」

背中にしがみついて震える
海さんがびくっと震えた。
そして、なおさら強くしがみつく。

…もう海さんは限界だ。

「…そうだ。俺が恋人だ。」

「…あっはっはっはっは!!!」

女の高笑いが耳に障る。

「くだらない。馬鹿みたい。気持ち悪い。
男同士?その年で恋愛ごっこに
興じてるんですか?随分暇なんですね。」

「…っ!」

女は自信たっぷりの笑みを浮かべた。

そして、ゆっくりと
向かいのテーブルに腰を下ろした。

「てめぇ…誰が許可したんだ。
とっとと出てけ…っ。」

「ここは公共の場、あなたごときに
指図されるほどワタシは
落ちぶれてませんわ?
それに、席を立つあなたのほうが
今は異端ですわよ?ぁあ、男同士で…。
ふふっ、充分異端でしたわね。」

「……。」

海さんを庇いながらゆっくり座る。

「お前に恋愛指導されるほど
こっちは困ってねぇんだよ…。」

「あら、劣等感はあるんですね?
だって…非生産的、非効率的…。
無駄。極まりない。」

「勝手に喋る口はそこか?
横っ面二、三発ぶん殴れば黙るか?」

「わあ~こわい、脅迫ですわ。
あーこわぁい。…ワタシに手を出せば
お父様が許しませんわ。」

「………。」

あからさまに馬鹿にする女。
殴れるものなら殴ってみろと頬を差し出す。

思い切りぶん殴れたらどんだけ
すっきりするか…。

「ふふ、できないんでしょう?
ワタシはあなたと違って、対話で解決
するためにわざわざ庶民の喫茶店に
足を運んだんですのよ?」

寛ぐ女は、しきりに毛先を弄ぶ。

余裕の表情でコーヒーを頼んだ。

「ワタシ、いつもは高級コーヒーしか
口にしないんですがたまには一興ですわ」

「勝手に飲んでろ。
俺たちが出てってやるよ。」

「大人が怖いからって逃げ出して
解決するんですか?」

硬直した海さんの腕を引きかけて止まる。 

…この女が二度と姿を現さないように、
話さなければいけないのか。

今までの人生にない苦行だが、
大人しく席に収まる。

女は満足そうに自信ありげに笑う。

「あなたもしかして左藤さん?
ウチの会社でも端整なお顔が人気ですわ。
ところで…大学はどちらを?」

「大学出るやつだけが偉いのか?」

「あら、負け惜しみ。高卒ね。」

また不快な気分にさせる馬鹿にした笑い。

「噂が絶えませんわ。女遊びがすごくて
大抵の女性とすぐにネるって。」

「そりゃ噂だ。昔から多いんだよ、
自称カノジョ。」

「真実にすればいいじゃないですか。
その辺の女と子供作って結婚すれば。
ワタシは由海広さんと、結婚。
ほら、常識的で、普遍的で、あたりまえ。
素敵でしょ?」

「……ぅっ…!」

思わず吐き気を催した。

あたりまえと、常識と言うくせに
自分の思い通りにしたいだけの自己中女。

燃夏にはたくさん思い出したくない
思い出がある。

女が細いタバコを満足気に吸引する。
もわっと紫煙が辺りに広がる。

「大体ねぇ、あなたたちのゴールは?
結婚出来るんですか?
子供作れるんですか?
親に紹介出来るんですか?分かります?」

「…うるせぇ…っ!」

俺たちに出来ないことを
揚げ足のように取り上げる。

出来ない、出来ないことだ。

他人に知られればたちまち好奇の眼差し。

約束も契約も出来ないふわふわした関係。

それでも海さんは言ってくれた。
「色んな意味で特殊な私たちが誰かと
比較することない」って。

俺はそれで正しいと思ったんだ。

「はいはい、言葉につまれば
黙れ、うるせぇ、そうやって負け犬が
吼えるのを聞くのがワタシの役目。」

女が腕を広げて、お手上げのポーズ。

何度殴りたいのを我慢してるか…。

「学歴の低い男と話すのは疲れるわ。
由海広さん、黙ったままですか?
起きてます?分かります?」

「…っ、…!」

ずっと震えていた海さん。

話しかけられて、
今にも崩れそうに脆くなっている。

「話しかけんなストーカー女…っ!」

「おだまり低学歴。」

「…って…!」

蚊の鳴くような小さな声で彼が叫んだ。

「やめ、て…くださいっ…!かれ、を…
恋人を、悪く…言わないで下さい…っ!」

「恋人、はっ!こいびと。あっはっは!」

上機嫌に女が笑う。

「無駄。ぁあ無駄ですわ。
いい加減目を覚ましたらどうですか?
所詮男同士は受け入れられも、繋ぎ
とめることもできない半端な関係。
気の迷いなんですよ?分かります?
正しい男女の関係を築きましょ?ね?」

急に諭すような口調になる。

聞き分けの悪い子供を
しつけるような言い方が腹立つ。

「…あら、こんな時間。夕方から友人と
パーティーがあるんですの。
学歴も教養もあって、正しい交際が
出来る、あなたと格が違う世界で。」

「…一生そこに、引きこもってろ…っ。」

「キャンキャン鳴く馬鹿犬ね。」

席を立ち、
背を向ける瞬間まで鼻で笑っていた。

姿が見えなくなって、
ようやく海さんのスーツを握る力が抜ける。

どっと崩れたようで、涙が零れてる。
振り返り、軽く頭を撫でる。
彼は両手で顔を覆って、嗚咽を漏らした。

「海さん、海さん、終わりましたよ。」

「ぐすっ…、ひ、ぐっ…、ご、ごめ…」

「海さん、謝らないで。お願い。」

「…っ、だ、だって…っ、私っ…、
私、なにも、いい、返せな、くて…っ!」

呼吸すら不安定だったくせに、
心配してくれる恋人を抱き締めたい。

我慢して、手を握る。

「ありがとう、でも俺負けてないですよ。
あんなやつに負けてたまるか。
…俺が側にいますから。」

安心させるように言葉を選ぶ。
笑顔を見せた次の瞬間…。

「………、」

「…っ!海さん!」

ガクン、と海さんの頭が壁に
打ち付けられ、動かなくなる。






ーーーーーーーーー
ご注意
(必読)

※新章はストーカー行為をするキャラが
登場します。
作者は犯罪行為の助長や促し、公認を
しているわけではありません。
一つのお話としてご覧下さい。

※また、性差別的な発言、同性愛の
否定のような表現もあります。
お話として表現しておりますが、
作者は愛の形や性別に差別はないです。
あくまでお話として、の表現になります。

※このお話はフィクションです。
実在する名前、団体とは全く
関係ありません。

気軽に読んで頂くことが最大の喜びです



つづきます→
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