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幸せな執事になるまでに episode 34

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善は急げと言うし、気分はもうルンルンだ。
気持ちスキップして仕事に臨んだ。

あまりのご機嫌さんに友人の環路くんや
八観さんの方が僕を見て困惑していた。
確かに、あれだけ喚いて号泣した次の日に
ケロッとしていたら誰でも驚くと思うので…
助けてくれた二人には丁寧にお礼を言った。
彼らの支えがなければ心が折れていたかも。
次は僕も二人のピンチを助ける約束もした。

府梶さんは逆にびっくりするくらい冷静で
シャンとして、いつも通りだった。
僕の精神状態には全く左右されない強い人。
改めて完璧な姿に憧れを感じた。
多分、劣情よりも尊敬の念が強い。

そうして一日を乗り越えた後は…
お楽しみの夜のきもちいい時間♡
いや、気持ちいいことをする時間、かな?
えっちをする時は空腹の方が都合いい。

なのでスケジュールを調整して僕の夕食は
夜勤の人と同じ、夜の十時頃にしてもらった。
お昼を多めに食べたから意外と元気はある。
夕方からずっとニヤニヤが止まらない。

欲求不満のおなにーするよりもえっちが好き。
男の人に抱いてもらうことが好き。
大好き、スケベなことが好き。

そのために努力する青年はこの上なく
「ド淫乱」の称号がぴたり当てはまる。
本人には自覚がないので子供のように
無邪気にはしゃいで、夜の奉仕へ赴いた。

歯みがきを済ませ、シャワーも済ませた。
もちろんお尻の洗浄もばっちり済ませた。

価値のある燕尾服でお世話に行けば
きっと服がくちゃくちゃになるので
昨日のうちからコクトー様と府梶さんに
シャツとパンツの無防備な姿で訪問する
許可を得ていた。

「ふんふふんふーん♪」

まだ日の明るい、時間は十七時ぴったりに
青年は上機嫌な鼻唄を歌って廊下を進む。
体が自然とリズムをとって左右にフリフリ
腰を振って楽しげに踊っている。
ピンと伸ばした両手は出来立ての夕食を
載せたカートを押している。

香りの甘い紅茶がお好きと聞いてるので
今日はピーチティーを選んだ。
きっとお気に召してくださるだろう。
そして情熱的に僕の体の隅々まで…。
妄想してポッと顔を赤らめた。

お部屋の前でもう一度腕時計を確認。
あまり時間ぴったりに固執すれば

十七時を少し過ぎたくらいが丁度良い。
喉の調子も確認。んっんー♪
すうっと滑らかに右手を上げて、
扉をノック…する前に自動で扉が開いた。

「あっ…。」

「きゃっ…。」

乱れたメイド服を抱きかかえるようにして
一人の女性が部屋から飛び出してきた。
助けを求める様子はなく、気恥ずかしそうに
顔をうつ向かせてそそくさと立ち去った。
ああ、コクトー様とえっちしてたのか。
あっさりその結論にたどり着いた。

そのまま開いた扉にカートごと侵入する。

「失礼します。」

「んー。」

ペコリと下げた頭を上げて、嘆息ついた。
ああまた全裸。
その人は野生そのものだな。
服を着てる時間の方が短いのではないかと
思ったりする。

この状況は女性とのえっちを見せつけられた
僕のトラウマシチュエーションなんだけど
幸い、今日は今の一人だけだったようだ。
ご主人様は満足そうに一人ベッドでタバコを
嗜んでいる。

ぷはっと紫煙をくゆらせると、気まずそうに
しかし自信たっぷりにニヤニヤして見せた。

「悪かったなぁ。お前が来ちまうから早く
済ませろって言ったんだけど中々あいつが
離れたがらなくてさ、長引いちまったよ。」

「そうですか。健康にはご注意ください。」

話を受け流しつつ、テキパキお夕食の準備。
使用人の僕にとっては嫉妬することよりも
こうしてお仕事することの方が重大だ。

だが、コクトー様は呆れたため息をつく。

「お前の言うことはあんま分かんねぇな。
性病の心配か?嫌味のつもりなのか?」

「いえ?それほど深い意味はありません。」

ばっさりと本音を打ち明けた。
目眩がするのかご主人様は顔に手を当てた。

「……本っ当に誰でもいいんだな。」

「ん?何かおっしゃいましたか?」

「いーや都合のいい子種袋でご苦労さん。」

「コダネブクロ…。」

僕より複雑な言葉を使う。
見た目は彼の方が異国の人なのに。
意味が分からないので眉をしかめといた。

不機嫌そうな彼は高級絨毯を踏み鳴らし、
やっぱりソファーに座る。

意外と見慣れた。
済ました顔で食器を並べ、そそそと紅茶を
注いでシャン、とカップを右手の横に添えた。

「甘味の強いピーチティーです。
冷めないうちにお召し上がりください。」

「………。」

完璧、に出来たと思ったけれどご主人様の
反感を買ったようだ。眉がつり上がる。
実害が被るまでは素知らぬ顔でフォークを
揃えていたが、その手首を掴まれた。
それから首の後ろをひっつかまれてぐい、と
引き寄せられた。

「んむっ…。」

ぶつかった唇はぷにっと柔らかい。
それからタバコの苦味と煙の匂い。
ちょっぴり旦那様と似てる味がする…。

とろんと瞼を重くして接吻を甘受すると
唐突にキスタイムは終了した。
もっと深いのいっぱい、したかったな…。
惜しい気持ちがむずむずに変換される。
何事もなかったように体を起こし、
そっと唇の縁を指先でなぞる。

「デザートはフルーツ盛り合わせです。」

「ん。」

「ふぁい?」

おもむろにデザートのイチゴを指で摘まんだ
彼は、後ろに立つ僕の口にそれを突っ込む。

「咥えてろ。」

「………。」

赤色の鮮やかでぷりぷりと新鮮なイチゴの
先端を口先に咥えてジッとする。
拡大解釈すればこれは僕が
期待していいのだろうか。
使用人が果物を咥えた奇妙な晩餐が始まる。

イチゴは嫌いじゃないけど甘酸っぱい香りが
唾液に混じって喉奥に、じわり沁みる。
静かな夕食タイム、この上なくお預けタイム。

「………。」

ヨダレが垂れないよう気をつけて給仕する。 
汚してはいけないスリルがドキドキする。
いや、この人のお仕置きは未知数だ。
今は我慢、我慢。自分に言い聞かせた。
心の支えはコクトー様が大人しく食事を
進めてくれることだ。

「………。」

「………。」

「………。」

イチゴを咥えて何十分経ったかな?
単純に顎が…疲れて痛い。
眉をしかめ、口先に意識を集中させていると
コクトー様がフォークを机の上に置いた。

「イチゴ。」

「んぁい。」

「バカ、口から出そうとするな。
出したものを主人に食わせる気か?
ちゃんと口移しで食べさせるんだよ。」

「……。」

不満はあるが、最もな言い分でもある。
上げた手を下げると若い主人はこちらを向く。
全裸にぶらさがってるモノがよく見える。
勃起したらさぞ、立派だろう。
見てるだけでぞくぞく興奮してきた。

「足の間から顔を出して、口まで運べ。」

「んぃ…。」

逆らうことはできない。
強制されなくても興奮するご褒美的な
シチュエーションに体が勝手に動く。
三白眼の鋭い目つきで命令されると
腰砕けになってしまうんだ。

言われた通りソファーにふんぞり返る
彼の膝の高さまで屈み、間に顔を出す。

「こっちを見ろ。」

「んい…。」

わざわざ言われるとドキドキする。
恥ずかしい思いを堪えて、そろりと上を見た。
顔と体つきの良い青年が無表情で見下ろす。
させられてるのは僕なのに、なんでそんな
顔をするの?悪いことをしてるみたいで…
とってもイケナイ気分になる。

膝頭に手を置かせてもらい、
ゆっくりと体を伝って上昇させた。

イチゴの先端が彼の唇に触れそうな瞬間
ガブリ、犬歯にイチゴを奪われ咀嚼された。

「……。」

今のは、ちゅ…キスする雰囲気じゃないの?
欲求不満に僕は頬を膨らませた。

「ぬるい。」

口元を拭ったコクトー様はあっさり言う。
人肌のイチゴなんて美味しくないだろうに
もしかして、反応をからかわれている?

「完食されましたね。それでは食器を
お下げ致します、失礼します。」

遊ばれてると思うと口調が荒くなる。
背を向けて黙々と片付けを始めると
後ろを向けた隙だらけの桃尻を掴まれた。

「あひゃっ…!♡」

「でけぇ尻…エッロ。」

「お、お待ちください、まだ片付けを…。」

「そんなのお前の都合だろ?それにお前が
欲しがるエクスタシーを奉仕してやるんだ。
むしろ感謝して欲しいくらいだな。」

「あッ…ん…!」

モミモミ手つきがいやらしいと反応しちゃう。
すけべ、してもらえるんだ…!
胸がバクバクはしゃいで片付けのことを
すっかり頭から忘れてしまった。

「come on.」

「あうっ…。」

腰を引き寄せられ、とすんっとソファーの
上にお尻がついた。
コクトー様の体の間に身を置いて、
背中の辺りに熱いぐりっとしたものが当たる。
しつこいくらい首筋にキスを降らされた。

「ん、んっあ…♡」

その間もご主人様の手はせわしなく
体の線を縁取るようになぞる。
シャツの上からでもぞくぞくしてる。

「はぁん、んっ…あ…。」

性的な手つきが興奮を促す。
刺激の一挙一動にだらしなく口を開いて
喘いでいると…彼の指が胸元で止まる。

「あっ…ダメ…!♡」

胸はダメ…!
慌てて我に返るとコクトー様を引き留めた。
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