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冒険者ギルドの情報統制編
第40話 ないアル
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それから、俺たちは先に宿屋へチェックインして、話していたゲンブ通りへやって来た。しかし、どこを探しても普通の病院しか見つからず、義手を取り扱っている店は無かった。
「そりゃそうだよ。あんた、そういうカラクリが欲しいならダウンタウンに行かんと」
「ダウンタウン?」
そう教えてくれたのは、路地裏でゴミ箱を漁っていた一人の老人だ。
「あぁ。アップタウンの病院は、ほとんどが研究機関だからな。ところで、頼み方次第では望みの場所まで案内しちゃるぞい」
隻腕を指さされると、シロウさんは彼に1万ゴールド紙幣を渡した。すると、彼は不気味に笑ってから、シロウさんのお腹辺りを叩いた。
「へへっ。太っ腹だねぇ。ついておいで」
そして、懐に仕舞うと、俺たちを先導して歩き始めた。
裏へ、裏へ。道はどんどん細くなっていく。シロウさんと男は、ヘラヘラと笑いながら何かを話しているが、あまりよくは聞こえなかった。この人、誰とでも仲良くなるなぁ。
そして、いつの間にか周りに時計塔に繋がる仕掛けが無くなったかと思うと、男は小さな入口にある狭い階段から、地下へ進んでいった。
「近くにあったダンジョンが、ここまで掘り進められててね。ダウンタウンは、その跡地にあるのじゃ」
広場に出ると人が増えてきて、ここには確かに生活があるのが分かった。市場には、どうやって使うのかも分からない謎のアイテムがずらりと並んでいて、その中には当然のように生身の肉体も売られている。所謂、闇市ってヤツだろうか。
後ろの二人は次第に口数を減らして、俺の背中にピッタリつくように歩いている。不気味な雰囲気に、吞まれてしまったのだろう。
「ここじゃ。おーい、メイメイ。お客さんじゃぞ~」
それは、ダンジョンの壁に木版と屋根を付けただけの、簡素な小屋だった。中は、結構広そうだ。
「あんたの家か?」
「そうじゃよ。娘が、義体のエンジニアでな」
「なるほど、俺は運がよかったってわけだ」
そして、指さされた椅子に座って待つと、奥から顔を黒い油で汚した、ふわふわとした薄紫の長髪の、目がまん丸な女性が姿を現した。繋ぎの作業着の上を腰で巻いていて、白のタンクトップが破れそうなくらいに張り詰めている。
「……あれ、ズルくないですか?」
「巨乳をすぐ目の敵にするのは止めようよ」
モモコちゃんは、自分の胸を撫でおろして少しだけ泣いた。
「あいや、腕無いね。オトサン、彼ダレ?」
「勇者のシロウと、そのお仲間じゃ」
ここに来るまでに、聞いていたのだろうか。彼、リーエンさんはメイメイさんに俺たちの事を話した。彼女は24歳だそうだ。
「そういう訳だ。だから、腕くっつけてくんねぇかな?」
「ヨロシよ。シロサン、体測るネ」
言って、彼女は紐のような定規をポケットから取り出すと、シロウさんの後ろから右手のサイズを測った。背中に押し当った胸が潰れたのを見て、アオヤ君が「すげえっすよ、あれ」と呟く。実際、俺も少し羨ましいと思った。
「大き過ぎるヨ。こんなサイズ、初めてネ。在庫ないアル」
「どっちだよ」
「ないアル」
多分、ないってことなんだろうけど。ちょっとややこしいアル。
「作れねえのか?」
「そなことナイけど、ちょと時間必要ダヨ。一週間くらいはかかるネ」
一週間。きっと、技術としては申し分ないんだろうけど、俺たちにとっては少し長い。何故なら、それだけの間、シロウさんがチーグァオ門の人だかりを放っておくわけがないからだ。
「まぁ、一生使う物作ってもらう訳だからな。仕方ねえさ」
シロウさんは、もう既に人を助けたくて仕方ない顔をしている。……ように見える。まぁ、言ってもフィジカルでこの人に勝てる冒険者はなかなか居ないだろうし、大丈夫か。
「あと、接合は凄く痛いヨ。死ぬかもしれないけど、ヨロシ?」
メイメイさんは、あどけない顔でとんでもなく恐い事を言った。
「いいよ。でも、なるべく死なないようにしてくれ」
「わかたヨ。それじゃ、シロサンは奥の部屋に来て。体重とか、体の調子とか、全部見るヨ」
この人、自分の命は軽く見てる節があるからなぁ。そのへんの矛盾は、何とかして欲しいよ。
「そう言う事みてえだ。待ってるか?それとも、先に帰っとくか?」
「はぁ?ここに居るに決まってるじゃないですか。だって、シロウさん取られちゃいますし」
「取られる?」
また訳の分からない事を。
「俺たちは戻ってますよ。ついでに、この街の事についても調べておきます」
「シャーッ!」
興奮し始めた猫の首根っこを掴むと、アオヤ君に預けて手を振る。
「おう。まぁ、今日は緩くやろうぜ。俺も、ダウンタウンで色々訊いてみるよ」
「わかりました」
「あ、シロウさん。夕飯は一緒に行きましょうよ。この街の料理、めちゃくちゃ美味しそうでしたよ~」
「そうだな。じゃあ、あとで連絡するよ」
そして、俺たちはその小屋を後にした。
「……ねぇ、モモコ」
アオヤ君が訊く。
「なによ」
「取られるってなに?」
「何でもない」
そう言うと、彼女は闇市に並んでいる謎のアイテムを手に取って、誤魔化すようにじっくりと眺めた。本当に謎だ、ナニアレ。
「まぁ、いいや。キータさん、折角時間出来たし、カジノ行きましょうよ」
「え?情報収集は?」
「そんなの、カジノですればいいじゃないですか。最近行ってなかったし、うずうずしてるんですよ~」
どうやら、彼は立派なギャンブルジャンキーなようだ。旅の途中も、みんなを巻き込んでポーカーをやっていたし、本当に好きなんだろう。
まあ、確かにカジノであれば若者も多いだろうから、騒ぎの理由も知ることが出来るかもしれない。絶対に遊ばないけど、行ってみるのは悪くない筈だ。
「分かったよ。それじゃあ、行こっか」
言って、謎のアイテムの購入を済ませたモモコちゃんを呼び、カジノで情報収集をすることとなった。
「そりゃそうだよ。あんた、そういうカラクリが欲しいならダウンタウンに行かんと」
「ダウンタウン?」
そう教えてくれたのは、路地裏でゴミ箱を漁っていた一人の老人だ。
「あぁ。アップタウンの病院は、ほとんどが研究機関だからな。ところで、頼み方次第では望みの場所まで案内しちゃるぞい」
隻腕を指さされると、シロウさんは彼に1万ゴールド紙幣を渡した。すると、彼は不気味に笑ってから、シロウさんのお腹辺りを叩いた。
「へへっ。太っ腹だねぇ。ついておいで」
そして、懐に仕舞うと、俺たちを先導して歩き始めた。
裏へ、裏へ。道はどんどん細くなっていく。シロウさんと男は、ヘラヘラと笑いながら何かを話しているが、あまりよくは聞こえなかった。この人、誰とでも仲良くなるなぁ。
そして、いつの間にか周りに時計塔に繋がる仕掛けが無くなったかと思うと、男は小さな入口にある狭い階段から、地下へ進んでいった。
「近くにあったダンジョンが、ここまで掘り進められててね。ダウンタウンは、その跡地にあるのじゃ」
広場に出ると人が増えてきて、ここには確かに生活があるのが分かった。市場には、どうやって使うのかも分からない謎のアイテムがずらりと並んでいて、その中には当然のように生身の肉体も売られている。所謂、闇市ってヤツだろうか。
後ろの二人は次第に口数を減らして、俺の背中にピッタリつくように歩いている。不気味な雰囲気に、吞まれてしまったのだろう。
「ここじゃ。おーい、メイメイ。お客さんじゃぞ~」
それは、ダンジョンの壁に木版と屋根を付けただけの、簡素な小屋だった。中は、結構広そうだ。
「あんたの家か?」
「そうじゃよ。娘が、義体のエンジニアでな」
「なるほど、俺は運がよかったってわけだ」
そして、指さされた椅子に座って待つと、奥から顔を黒い油で汚した、ふわふわとした薄紫の長髪の、目がまん丸な女性が姿を現した。繋ぎの作業着の上を腰で巻いていて、白のタンクトップが破れそうなくらいに張り詰めている。
「……あれ、ズルくないですか?」
「巨乳をすぐ目の敵にするのは止めようよ」
モモコちゃんは、自分の胸を撫でおろして少しだけ泣いた。
「あいや、腕無いね。オトサン、彼ダレ?」
「勇者のシロウと、そのお仲間じゃ」
ここに来るまでに、聞いていたのだろうか。彼、リーエンさんはメイメイさんに俺たちの事を話した。彼女は24歳だそうだ。
「そういう訳だ。だから、腕くっつけてくんねぇかな?」
「ヨロシよ。シロサン、体測るネ」
言って、彼女は紐のような定規をポケットから取り出すと、シロウさんの後ろから右手のサイズを測った。背中に押し当った胸が潰れたのを見て、アオヤ君が「すげえっすよ、あれ」と呟く。実際、俺も少し羨ましいと思った。
「大き過ぎるヨ。こんなサイズ、初めてネ。在庫ないアル」
「どっちだよ」
「ないアル」
多分、ないってことなんだろうけど。ちょっとややこしいアル。
「作れねえのか?」
「そなことナイけど、ちょと時間必要ダヨ。一週間くらいはかかるネ」
一週間。きっと、技術としては申し分ないんだろうけど、俺たちにとっては少し長い。何故なら、それだけの間、シロウさんがチーグァオ門の人だかりを放っておくわけがないからだ。
「まぁ、一生使う物作ってもらう訳だからな。仕方ねえさ」
シロウさんは、もう既に人を助けたくて仕方ない顔をしている。……ように見える。まぁ、言ってもフィジカルでこの人に勝てる冒険者はなかなか居ないだろうし、大丈夫か。
「あと、接合は凄く痛いヨ。死ぬかもしれないけど、ヨロシ?」
メイメイさんは、あどけない顔でとんでもなく恐い事を言った。
「いいよ。でも、なるべく死なないようにしてくれ」
「わかたヨ。それじゃ、シロサンは奥の部屋に来て。体重とか、体の調子とか、全部見るヨ」
この人、自分の命は軽く見てる節があるからなぁ。そのへんの矛盾は、何とかして欲しいよ。
「そう言う事みてえだ。待ってるか?それとも、先に帰っとくか?」
「はぁ?ここに居るに決まってるじゃないですか。だって、シロウさん取られちゃいますし」
「取られる?」
また訳の分からない事を。
「俺たちは戻ってますよ。ついでに、この街の事についても調べておきます」
「シャーッ!」
興奮し始めた猫の首根っこを掴むと、アオヤ君に預けて手を振る。
「おう。まぁ、今日は緩くやろうぜ。俺も、ダウンタウンで色々訊いてみるよ」
「わかりました」
「あ、シロウさん。夕飯は一緒に行きましょうよ。この街の料理、めちゃくちゃ美味しそうでしたよ~」
「そうだな。じゃあ、あとで連絡するよ」
そして、俺たちはその小屋を後にした。
「……ねぇ、モモコ」
アオヤ君が訊く。
「なによ」
「取られるってなに?」
「何でもない」
そう言うと、彼女は闇市に並んでいる謎のアイテムを手に取って、誤魔化すようにじっくりと眺めた。本当に謎だ、ナニアレ。
「まぁ、いいや。キータさん、折角時間出来たし、カジノ行きましょうよ」
「え?情報収集は?」
「そんなの、カジノですればいいじゃないですか。最近行ってなかったし、うずうずしてるんですよ~」
どうやら、彼は立派なギャンブルジャンキーなようだ。旅の途中も、みんなを巻き込んでポーカーをやっていたし、本当に好きなんだろう。
まあ、確かにカジノであれば若者も多いだろうから、騒ぎの理由も知ることが出来るかもしれない。絶対に遊ばないけど、行ってみるのは悪くない筈だ。
「分かったよ。それじゃあ、行こっか」
言って、謎のアイテムの購入を済ませたモモコちゃんを呼び、カジノで情報収集をすることとなった。
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